「心のリハビリには“自動車学校”がいいと思います」臨床心理士・東畑開人が語る「居る」だけのつらさとは?

「心のリハビリには“自動車学校”がいいと思います」臨床心理士・東畑開人が語る「居る」だけのつらさとは?

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2019年の著書「居るのはつらいよ」で、大佛次郎論壇賞受賞と紀伊国屋じんぶん大賞をW受賞した、臨床心理士の東畑開人さんが12月5日の大竹まことゴールデンラジオに登場。本に書かれた仕事について掘り下げた。

大竹「東畑さんは大学院を出たあと仕事を求めて沖縄にいらっしゃいます。そこでどんなお仕事をしていたんですか?」

東畑「精神の病を抱えた方が家にずっといると色々と難しいこと考えてしまうので、「どっかに行く」ことが大事なんですよ。どっかに行って帰ってくる。朝出かけて夕方帰ってくる。これは健康にいいんですよね。その行く先。彼らが日中どこかで過ごす場所としてある精神科デイケアというリハビリのための施設で働いていました。でも「居る」って居るだけなんで、何かするってわけじゃないんです。僕の方も、彼らが居るために仕事するんですよ。」

大竹「居るだけ?それってお仕事なんですよね。お金もらってる?」

東畑「仕事なんですよ。(笑)お金もらうんですよ。ただ居るだけだと患者さん達も辛いので帰りたくなっちゃうんです。ですので「じゃあちょっとゲームしようか」とか言って、オセロやったりとか将棋やったりとか。でも、いつもそんなことをやっていたら、やっぱり疲れて帰りたくなっちゃうので、こうボーっと座ってるわけですよ。僕もやることないんでボーっと座って、机の木目を数えてみたりとか、そういうことしてました。」

大竹「具体的な仕事は、それ以外に何かあるんですか?」

東畑「心理士でもあるのでカウンセリングの仕事もしてたんですけど、その他の時間は、ずっとデイケアに座ってるわけです。で何してたんですかね?とにかく時間を過ごしてたんですよね。」

大竹「今まで勉強をして役に立ちたいと思って、その職場に行ったのに、今までやってきたことが何にも役に立たないってことですか?」

東畑「そうですね。勉強してきたカウンセリングって会話して問題をなんとかするみたいな積極的な仕事なんですけど、あんまり積極的なことやっても患者さんが辛くなっちゃうんで、普通にただ座ってる。すると今まで俺って何をしてきたんだろうと。」

大竹「東畑さんの本にはこう書かれています。「誰にもいるなと言われているわけではないのに、僕はいるのが辛くてしょうがなかった。 デイケアという特別な場所だけでなく、居心地が悪くて辛い時、僕たちは大抵自滅しているんです。」この自滅しているっていうのはどういう状態ですか?」

東畑「みなさんも経験があるんじゃないですか。例えばバイトの初日とか、いるのが辛いっていうか、役立たずって声がずっと聞こえてくるような感じがしませんか?皿洗いとか任されるとその声を遮断できるんですけど、終わっちゃうとみんな働いているから「なんか自分が邪魔なんじゃないか」みたいに思うような感じです。だから本当は「自滅」って誰も言ってないですよ。誰も言ってないのに自分の中で、迷惑なんだとか、白蟻みたいに寄生してるんじゃないかとか、そういうことばっか考えちゃう。」

大竹「きつい仕事でもやることがあると自分が存在してる 意味も出てくる?」

東畑「そうだと思います。引きこもりになったりとか会社に行けなくなったりされた方のカウンセリングをした時、結構話題に登るのが自動車学校なんですよ。自動車学校ってリハビリには結構いいなって思ってて、まずそんなに難易度が高くないですよね。加えてコースも決まってて、やることも決まってるので、1日いると結構頑張った気持ちになれる。朝でかけて帰ってくると生活のリズムも整ってくる。ですので、なんかやることがあるっていうのは、やっぱり大事だなあという風に思うわけです。」

大竹「なるほど。」

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