第21回 2010.03.11 ON AIR
2010/03/11
『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」。
 
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田
“法律”の観点から解説します。
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 ○注目のニュース
   
  児童虐待
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  去年11月、兵庫・三田市で
  当時5歳の寺本夏美ちゃんが自宅絵で意識不明となり
  搬送先の病院で死亡した事件で、
  警察は、逮捕した母親が
  日常的に暴力をふるっていたとみて調べています。
  
  警察は、先月11日、夏美ちゃんの顔をたたいたとして
  母親の浩子容疑者(27歳)を、傷害の疑いで逮捕しましたが
  警察の調べによりますと、浩子容疑者は、なつみちゃんに対し、
  日常的に暴力をふるっていた疑いが強いということです。
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  ◆ポイント1 2000年に“児童虐待防止法”制定
 
   2008年度、児童相談所が対応した虐待の件数は…42,662件。
中田 「虐待事件は最近、後を絶たなくて、過去最悪です」
●児童虐待の特徴と問題点
・加害者が親(親権・監護権を持つもの)
・家庭内で虐待が行われ、表面化しにくい
・親の養育力が問題視される
・監護・親権者へのケアや支援が必要
  かつては『地域社会』があり、人間関係が濃厚でしたが、
  現代社会では『地域社会』の機能は失われている(失われつつある)。
  児童虐待の問題に対処するには
  それらにかわる『社会システム』の構築が必要・・・
    このような背景をもとに、
    2000年、通称“児童虐待防止法”が制定・施行されました。
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  ◆ポイント2 虐待の定義
 
  (児童福祉法の定義から)
●児童とは:保護者が監護する児童=18歳未満
●『虐待』の定義(以下の要件を禁止しています)
   ◆身体的虐待
   ◆性的虐待
   ◆ネグレクト(育児放棄)
   ◆心理的虐待(いじめ)
    ※情緒不安定にさせる・自尊心を傷つける など
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  ◆ポイント3 虐待を早期に発見するために
 
  子供に接する機会の多い職種、
  医師、弁護士などに対して、虐待を早期に発見する努力を促し、
  広く国民一般に対しては、
  虐待を発見した場合、通告する義務が科されています。
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  ◆ポイント4 国際評価の低い日本の取り組み
  国連児童憲章の流れの中に制定された“児童虐待防止法”ですが
  日本に対する国際的評価は、残念ながら低いようです。
  2004年には、日本の児童虐待への取り組みについて
  国連・子どもの権利委員会から懸念が表明され、
  勧告を受けています。
■…訴追された事件数が極めて少ない=発見例が少ない
■…被害者の回復及び、カウンセリングのためのサービスが不十分
  “児童虐待防止法”は04年、07年に大きな改正が行われましたが
  まだ、十分なものではない――といわれています。
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  ◆ポイント5 “児童虐待防止法”の問題点
◆“児童虐待防止法”の特徴◆
●国、地方公共団体に制度の構築義務を負わせている。
  ●地方公共団体は、福祉事務所、児童相談所を中心に
   児童虐待の防止に関する措置を講ずる権限を与えている。
  ●児童虐待は、『家庭問題』(民事)ではなく
   『犯罪』であることを明確にし、
   “虐待が疑われた段階”から強制介入ができ(親権の一時停止)
   また、警察の支援も受けられる。
  ●虐待の発見について、
   広く一般市民に対して通報の義務を認めている。
  
  ●未熟・身勝手な保護者の指導のために
   虐待をした親に対して、カウンセリングの受講を義務付けている。
  これらの特徴は、一見、正しいようですが
  “児童虐待防止法”が目的として掲げる
  “将来の世代の育成”――という点からみれば、
  “児童虐待防止”は地域の問題ではなく、
  国・全市民をあげて取り組むべき問題。
 
  中田 「地域の問題に止まるような対応は良くないです。
       虐待の発見が遅れた場合、
       児童相談所の職員のせい――というわけにもいかない…
       やっぱり“制度”の問題と言わざるを得ないんです。
       福祉・捜査・医療の現場における連携への目配りが
       あるかというと、ないんじゃないかと考えざるを得ないんです」
◆二重の分断◆
  ■福祉・捜査・医療の各機関で権限が分断されている
  ■地域で分断されている
  中田 「法律を広めていくには
       『新しい制度を構築するんだ』という姿勢で臨まないと
       児童虐待の実態は、ますますひどくなるんじゃないか――と
       懸念されるんです」
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  ◆ポイント6 アメリカの制度
 
  虐待の通報が入るセンターが作られ
  福祉・捜査・医療の専門家が招集され、チームが形成されます。
  チームには、専門職の『司法面接師』がいて
  必要な情報が集められ、
  包括的・分野横断的戦略を立て、対策が図られます。
  中田 「“包括的”かつ“分野横断的な戦略の構築”
       という意味では、アメリカの制度は大きな参考になるんです」
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(吉田)
「『児童虐待かな?』と発見したら、
 通告したり(通告する)義務があるんだ――ということを、
 まず、ひとりひとりが、思うことが大切ですね」
次回もお楽しみに!
投稿者 senpatsu : 2010年03月11日 21:00






