2017/11/08

ナイキ、オランダで税逃れ 回避地使い7千億円蓄積

 米スポーツ用品大手ナイキが2005年からオランダ当局と合意を結び、同国外の子会社などに利益を流し法人税を回避していたことが7日、分かった。税のかからない英領バミューダ諸島の子会社に一時約66億ドル(約7520億円)を蓄積していた。米IT大手アップルも租税回避を批判された後、節税目的とみられる新子会社を設立した。露骨な節税策に企業のモラルが問われそうだ。
 南ドイツ新聞が入手し、共同通信が参加する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が共有した「パラダイス文書」から判明した。(共同)

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東北大学特任准教授・弁理士
稲穂健市
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いわゆる「パラダイス文書」が流出し、米スポーツ用品大手ナイキが、税のかからない英領バミューダ諸島の子会社に利益を移転させることで税逃れをしていたという疑惑が浮上しました。ナイキはバミューダの子会社にロゴマークの米国外における商標権を移転し、欧州本社のあるオランダから商標使用料がバミューダに流れる仕組みを作り上げたのです。その結果、同社は本来支払うべき法人税を回避し、一時約66億ドルも蓄積したそうです。


英領バミューダ諸島のような税の掛からない場所を「タックスヘイブン」(「タックスヘブン」ではありません)といいますが、グローバル企業による知的財産権を活用した露骨な節税策が注目されたのは、今回が初めてではありません。各国の税制の差異を活用した様々な節税スキームは以前から組まれてきました。


その中でも、特に有名となったのが、1980年代にアップルが完成させたと言われる「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」です。これはふたつのアイルランド法人の間にオランダ法人を挟んで知的財産権のライセンスを行わせることで税逃れをする手法で、2013年に米議会で問題視され、その翌年、欧州委員会も調査を開始しました。「パラダイス文書」によると、その直後、アップルは税のかからないイギリス王室属領のジャージーに子会社を移したそうですから、「いたちごっこ」はまだ続いているようです。


商標権などの知的財産権は、本来、自分自身で使ったり、売却やライセンスにより他人に使わせたりするかたちで活用すべきものです。しかしながら、このように、知的財産権はグローバル企業による「節税ツール」としても使われています。知的財産権の活用が新たなステージに入っていることだけは間違いないでしょう。

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