2017/4/20

不動産下落で地銀4割赤字の試算 日銀、九州で過熱と警鐘

日銀は19日に発表した金融システムリポートで、不動産価格がリーマン・ショック直後の水準まで下落した場合、地方銀行や信用金庫の約4割で本業のもうけが赤字になるとの試算を示した。不動産向け融資が増加している現状を踏まえた分析で、特に九州・沖縄で融資に過熱感があると警鐘を鳴らしている。
 地銀や信金は、日銀の大規模な金融緩和政策で収益が悪化し、不動産向け融資に依存する傾向を強めている。不動産の市況が悪化すれば、貸し倒れが発生し大きな損失を出しやすい状況にある。
 商業用不動産の価格が全国平均で約2割下落した場合の影響を分析した。

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みずほ証券チーフクレジットストラテジスト
大橋英敏
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不動産向け融資の融資基準が過度に緩和されているのではないかとの懸念は、既に数年前くらいから指摘されてきました。


ローン・トゥ・バリュー・レシオ(融資総額÷不動産価格)が1倍を超える融資も散見されてきました(つまり不動産を取得する際の諸費用(税金等)も融資により負担するというもの)。
当然、不動産価格が2割も下落するようなシミュレーションを実施すれば、相応の不良債権費用が発生し、利益を圧迫することになるとの試算になります。


さて、積極的な不動産向け融資を地域金融機関が継続している背景は、日銀によるマイナス金利政策が金融機関の収益を圧迫していることに加え、我が国経済が構造的低成長に苦しんでいることもあります。

もとよりオーバーバンキング(間接金融部門の肥大化と過当競争)により銀行の収益性が低い我が国において、低成長経済の長期化は、本業である国内融資からの収益が見込めなくなることに繋がります。このため、大手銀行は活路を海外融資に向けており、既に国内融資からの利益はグループ利益の半分以下になっています。
しかし、同じようなことをすべての地域金融機関に要求するのは現実的ではありません。


マイナス金利政策の長期化が予想されるなか、地域金融機関はビジネスモデルを大きく変化させる必要性が益々高まっていると言えるでしょう。
それは、合従連衡の強化による規模の利益(経営資源の国外への配分)等だけではなく、有価証券運用の更なる高度化や、融資審査における担保主義からの脱却など、複数にわたるメニューが期待されています。今年から来年にかけての地域金融機関の動きには注目しておきたいです。

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