2017/5/01

全米デモ、根強いトランプ氏批判 業績自賛、就任100日

【ハリスバーグ共同】トランプ米大統領が就任100日目を迎えた29日、全米でトランプ氏の政策に抗議するデモが起き、政権への批判の根強さが浮き彫りになった。トランプ氏は東部ペンシルベニア州ハリスバーグで数千人の支持者集会を開き、大きな業績を上げたと自賛した上で政権に厳しい評価をするメディアを非難し、政権批判に反発。米国の国益を最優先する「米国第一」などの基本路線を堅持する方針を示した。
 トランプ氏は29日、米国の雇用や製造業を守るためホワイトハウスに専門部署を新設するよう命じるなど2本の大統領令に署名した。

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みずほ証券チーフクレジットストラテジスト
大橋英敏
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この記事については2つの誤解が背景にあると思います。


一つ目は、金融市場はトランプ氏の主義主張や政策に関心を持っているという誤解です。
金融市場が今もトランプ氏の政策に関心を持っているなら、これほど米国株価が堅調なはずがありません。金融市場の関心は、米大統領選挙直後からほぼ一貫して、上下院とも過半数を握る共和党の政策にあります。共和党の政策は、簡潔に言えば「減税」と「規制緩和」です。前者は共和党内の不協和音が根強く、当初想定された内容が実現する可能性は極めて低くなっており、金融市場は既にそれを織り込んでいます。
一方、規制緩和メニューは、これから議論されます。特に、金融規制緩和の実現可能性が、今後の金融市場を占ううえで重要と考えています。


二つ目の誤解は、トランプ政権への批判の大半は、反資本主義(≒社会主義)の勢力と思われることです。
今年1月のトランプ氏の米大統領就任当日に、トランプ氏の街頭パレードの傍でトランプ批判を展開していた集団も社会主義的主張を持つグループであり、彼らはトランプ氏でもクリントン氏でもない勢力、具体的には、サンダース氏への支持者が該当します。このような社会主義勢力の台頭は、先のフランス大統領選にも表れていました(メランション候補が19%の得票率となったこと)。


日本を除く世界各地で社会主義勢力が拡大している背景は、世界的な潜在成長率の低下を背景にした経済成長の長期低迷にあると思います。経済成長が低迷すると、どうしても低所得層(高齢者および若年者を含む)にしわ寄せが来ます。そして、彼らは既得権益層(その最たるものが既存政権・政党です)に批判的になります。一方、当該既得権益層も経済の低成長化に伴い、既得権益を守るべく保守的になります。保護主義的主張はこの辺りから出ています。実は、トランプ政権の主張と社会主義勢力の主張は、似た部分もあるわけです(フランス大統領選でも、極右のルペン氏と極左のメランション氏は共に反EUです)。
こういった背景を理解しながら、このようなヘッドラインを見たいものです。

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