2017/7/07

日欧EPA、19年発効 首脳、大枠合意を宣言

【ブリュッセル共同】安倍晋三首相は6日、欧州連合(EU)のトゥスク大統領らとブリュッセルで定期首脳協議を開き、経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意したと宣言した。2019年の早い段階の発効を目指す。日本は農林水産物の一部で市場開放に応じ、チーズは最終的に3万トンを超す低関税輸入枠を設定。EUは日本車の関税を発効後7年かけて下げ、8年目に撤廃する。世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な経済圏が誕生する。
 日本とEUは、トランプ米大統領に象徴される保護主義的な流れに対抗し、7日からドイツで始まるG20首脳会合で自由貿易を主導する姿勢を示す。

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マスターズインタビューにご出演いただいた北海道ナチュラルチーズ専門店「チーズのこえ」代表の今野徹さんからEPA交渉についてご意見を頂きました。


日EUのEPA交渉を受けて、「私、ヨーロッパのゴーダチーズ好きだから、安く入ってくるの嬉しい!」というこえを聞くと、チーズというものがいかに薄っぺらく、とらえられているか、愕然とします。


チーズは、ボタンを押したら、均一なものが取り出し口から出てくるような工業製品ではありません。作り手がいて、酪農という生産基盤があって、そしてチーズを醸し出す風土があって。その幾多の要素が重なり、たくさんの人の努力と、自然との調和のなかで生まれたものです。


また、「こだわりもつ国内のチーズ工房は生き残れるから大丈夫」という意見も、中期的な視点にたったときに、まったく的を射た意見ではありません。


確かに、こだわりもつ小さな工房は、短期間的には生き長らえるかもしれません。しかし、値段が下がった輸入チーズと競合する大手乳業メーカーでつくられ、チェーン展開する外食産業で使われるチーズは、価格だけで比較され、国産からEU産にシフトすることでしょう。そうすると、大手乳業は、ソフト系チーズの製造を縮小せざるを得なくなります。


このことは、チーズ等に生乳を出荷している北海道の酪農生産基盤の危機になる一方、行き場を失った北海道の生乳は、取引価格の高い飲用乳市場に本格参入することとなり、本州になだれ込めば、生産コストの低い北海道生乳に凌駕され、本州の酪農は駆逐されることになります。北海道の初妊牛が府県の酪農を支えるなど、持ちつ持たれつ共存していた状況は崩壊し、中期的な視点で見れば、日本の酪農は壊滅するでしょう。


国内の酪農生産基盤が崩壊すれば、いくらこだわりをもった小さな工房であっても、獣医もいない、集乳する車もない、機械壊れても業者はいない、そんななかでは牛を飼うこともできなくなり、チーズをつくることもままならなくなるわけです。


なくなる。全部なくなります。日本のチーズも酪農も。酪農がなくなれば、その糞尿たい肥など有機肥料を活用した循環型農業が成り立たなくなります。米も野菜も。「この合意は、みんなハッピーになるステップだ」とか、能天気なお花畑な話をしている場合ではありません。


EUは、農業政策をとても重要視していて、自分たちの地域の食料や農村文化を守った上で、輸出産業として考えています。農業や食は、国の礎だという意識を政策のなかにも強く持っています。一方で、日本は、農業も産業のひとつと割り切り、自動車産業の繁栄と引き換えに、国民の食料も、営みや文化としての農業、農村も、産業発展のために犠牲はやむを得ないと考えています。


TPPのときもそうですが、聞こえのよい「刺激ある方が競争力が磨かれる」なんていう言葉に惑わされてはならないと思います。10年後、100年後の、我が国の遠い未来を見据えて、本当に賛成していいものか、考えて欲しい。


『安く手に入れることの代償として、あなたは何を失うか。』よく考えて欲しい。


買い物とは、未来を創る投票行動。1つ1つの買い物が、どの生産者を、どの店を、どのフードシステムを支持するかという信任投票。外国産が安くなったかと言って購入するにあたり、どのような作り手があり、どのような酪農産業が営まれており、それを含めて、未来永劫続いて欲しいから信任しますという意思をもって買い物をしていますか?


もう一度言います。

『安く手に入れることの代償として、あなたは何を失っていくのか。』

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