2017/9/29

「君の名は。」米で実写化へ 昨年大ヒットのアニメ映画

 東宝は28日、昨年大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」の実写映画化に米ハリウッドで着手したと発表した。パラマウント・ピクチャーズとバッド・ロボットと共に開発を進めるという。プロデュースは映画「スター・ウォーズ フォースの覚醒」などを監督したJ・J・エイブラムス氏らが担当する。
 東宝によると、公開時期は未定。脚本はSF映画「メッセージ」の脚色を担当したエリック・ハイセラー氏が執筆する。
 アニメ映画を手掛けた新海誠監督は「ハリウッドと交わることで、新しい可能性のようなものを見せてもらえるのかも、と楽しみに待っています」などとするコメントを発表した。

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デジタルハリウッド大学 学長/工学博士
杉山知之
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ここ数年、世界的に知られている日本のアニメが、ハリウッドで実写映画化するという話題が多くなってきた。その背景には、ハリウッド映画における原作不足ということがある。世界的に大きな観客動員数を期待すると、日本のアニメの原作力と、世界的にコアなファンたちが居るというメリットが見えてくるのである。


コアファンを持つという点では、アメリカのMARVELとDCという二大コミックスが原作となってきた歴史がある。それぞれのストーリーで活躍してきたヒーローたちの映画化が終わると、次には時代や設定を超えてストーリーをつなげていき、ヒーローたち総出演の大きなシリーズが展開している。もちろん、これはファンとしては楽しいが、原作の枯渇と観ることもできるのである。
原作を世界に求める時代になったとき一番に目がつくのが日本のアニメというわけだ。しかし、日本の制作者側には、辛い経験もある。ハリウッド映画ビジネスの仕組みで、まるで契約消化のためにおざなりに制作された作品もあったのだ。もちろん結果も惨憺たるものだった。大事な原作に傷がついてしまったのだ。
ということで、ハリウッドでの映画化に両手をあげてウェルカムというわけでもないのだ。さらにアニメは製作委員会方式で作られるものがほとんどなので、元となったマンガの原作者だけでなく、たくさんの権利関係者が存在し、その調整がたいへんなのである。ついに調整がついて映画化が決まっても、そこからシナリオの開発に3~5年ぐらいかけることはハリウッドでは普通のこと。例えば、今年公開されたGhost in the Shell(攻殻機動隊)では、公開まで十年の時間がかかっているのである。


今年はすでに「ワンピース」のハリウッド版実写ドラマ化も発表されている。日本独特のアニメ表現で作られた世界を実写で忠実に再現だけでは面白くないだろう、されど全く違えばファンたちからそっぽを向かれてしまう。「君の名は。」のハリウッドでの実写映画化、新海誠ワールドが、どのように表現されるのであろうか? 関係者でもないのに心配してしまうのである。

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