2018/8/29

北朝鮮追放男性、帰国 政府、拘束経緯を調査

【北京共同】北朝鮮に観光客として入国し今月上旬に拘束され、国外追放となった杉本倫孝氏が28日午後、経由地の北京を空路出発し、同日夜、羽田空港に帰国した。日本政府は杉本氏から聞き取るなどして拘束当時の詳しい状況を調査。早期解放に応じた北朝鮮側に対日姿勢の変化があるかどうか慎重に見極める方針だ。
 杉本氏は28日午前、平壌発の高麗航空便で北京国際空港に到着。空港内で北京の日本大使館幹部らが待ち受け、帰国便への乗り継ぎを案内した。
 北朝鮮関係筋は「罪が軽微だったために刑事手続きを取らなかっただけだろう」と語り、対日姿勢の軟化とは言えないとの認識を示した。

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東北大学特任准教授・弁理士
稲穂健市
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北朝鮮で拘束されていた日本人男性が国外追放となった事件。日本政府が北朝鮮への渡航自粛を呼び掛けている中、北朝鮮に観光客として訪れたこの男性に対しては批判の声も上がっています。


私も1999年に北朝鮮を旅行で訪れたことがあります。そのことを最新作『こうして知財は炎上する』(NHK出版新書)に記載したところ、昨日、それを批判するメールを受け取りました。(きちんと本を読んでくださってありがとうございます。)


じつは、現在とは異なり、当時は「十分注意してください(レベル1)」という危険情報が出てはいましたが、日本国民に渡航自粛を要請するほど両国の関係は悪化していませんでした。日本政府の意向を無視して渡航したわけではありません。


旅行期間は一週間でしたが、平壌国際空港に到着後、パスポートを現地ガイドに強制的に預けさせられるだけではなく、観光コースは完全に時間管理されており、また、ホテルから外出する自由もありませんでした。


そういった緊迫した状況ですから、少しでも怪しい行動を取るだけで北朝鮮当局に拘束されるリスクがあることは容易に想像することができます。自らの行動が日本の国益を損ねる可能性があることを常に意識して行動すべきであることは言うまでもないでしょう。


なお、『こうして知財は炎上する』(NHK出版新書)では、1999年当時、平壌の高級ホテルの部屋に置かれていた北朝鮮ブランドの家電製品を見たときの知的財産権に関する素朴な疑問や、「北朝鮮のテレビ番組や映画の映像の利用にあたって許可は取っているの?」といった一般的な疑問に対する回答についても取り上げています。ご興味を持たれた方はぜひご一読ください。


(ご参考)
『こうして知財は炎上する』(NHK出版新書) 
https://www.amazon.co.jp/dp/4140885580/

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