第99回箱根駅伝 みどころ

第99回箱根駅伝 みどころ

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駒澤大学の三冠か、青山学院大学の連覇か、はたまた國學院大學の初優勝か…
史上稀に見る「戦国駅伝」の様相を呈する第99回箱根駅伝。みどころを紹介します。

目次

  1. 駒澤大学、悲願の三冠なるか!?
  2. 優勝争い
  3. シード権争い
  4. エース
  5. 個性派ランナー

みどころ1 駒澤大学、悲願の三冠なるか!?

今シーズンは駒澤大学が圧倒的な強さを見せ、10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝を制しここまで二冠。箱根で三冠に挑みます。
過去達成したのは4校(2016年青山学院大学、2010年早稲田大学、2000年順天堂大学、1990年大東文化大学)で、達成なら5校目、チーム初の三冠です。

振り返れば、出雲駅伝は6区間のうち区間賞が3つ、区間2位が3つと完璧なレース運びで大会新記録を樹立し優勝。全日本大学駅伝も近年のように終盤までもつれる展開にはならず、3区で抜け出しそのまま独走。1秒を争う陸上の世界で、大会記録を4分21秒も更新し、史上最多15度目の優勝を三連覇で手にしました。

チームの中心は田澤廉(4)。昨年10000m日本歴代2位の27分23秒44をたたき出し、ワールドランキングで世界選手権への出場権を手にした田澤は、日の丸を背負い世界の舞台を経験しました。「世界との差を感じた」と話した田澤ですが、オレゴンでの経験を糧にその成長は止まることを知りません。箱根ではさらに進化した姿を見せてくれるはずです。

その田澤からキャプテンの座を引き継いだ山野力(4)は2月の実業団ハーフでハーフマラソン日本人学生記録を樹立。1500m/3000m/5000m高校記録保持者(当時)の世代最強ルーキー・佐藤圭汰(1)は「大学での生活に慣れるのが大変だった」と話しながらも、駅伝デビュー戦となった出雲で挨拶代わりに区間賞を獲得し区間記録を樹立。前回の箱根でレース中に左大腿骨を疲労骨折した鈴木芽吹(3)は出雲駅伝アンカー6区で区間賞を獲得、涙の復帰を果たしました。
さらに、駅伝で抜群の安定感を発揮する花尾恭輔(3)、11月の上尾ハーフ日本人学生トップを獲得しながらも大学限りでの競技引退を決めている円健介(4)、初のハーフで学生歴代5位の1時間01分01をマークした篠原倖太朗(2)、駅伝の経験豊富な安原太陽(3)、一関ハーフ優勝&上尾ハーフ日本人学生2位の赤星雄斗(3)、世田谷ハーフ3位の吉本真啓(2)、全日本4区区間賞の山川拓馬(1)、11月の日体大長距離競技会10000mで28分28秒15をたたき出した伊藤蒼唯(1)など、挙げるときりがないほどに選手もそろっています。また、この層の厚さがチーム内競争を生み、さらなる強化につながっています。

「三冠を達成して監督の喜ぶ姿を見たい」と口々に話す駒澤の選手たち。大八木弘明監督も選手の言葉に顔をほころばせますが、箱根路が簡単なものではないことも熟知しています。強さと層の厚さで他を圧倒してきた藤色の襷・駒澤大学が新春の箱根路で悲願達成となるのか、目が離せません。

 

みどころ2 優勝争い

駒澤大学が圧倒的な強さを見せている2022年シーズン。優勝争いの中心に駒澤大学がいるのは間違いありませんが、一つのミスで大きく順位が変わることもあるのが箱根駅伝。最後まで優勝争いの行方はわかりません。

打倒駒澤の一番手は箱根駅伝前回王者・青山学院大学。今季、出雲駅伝は4位、全日本大学駅伝は3位と駒澤大学の後塵を拝しています。原晋監督はベストメンバーで挑んだ全日本のレース後に「勝ったと思えたところが全くなかった。駒澤さんの走りが質・量ともにレベルが高い」と完敗を認め、「令和の新駅伝が始まった」と淡々と話しました。しかし、箱根駅伝だけは譲れません。虎視眈々と箱根連覇に向け準備をします。
チームの中心は近藤幸太郎(4)。5000m、10000mともに青山学院大学記録を持つエースは、今季も好調を維持。日本インカレ5000mで連覇を果たすと、駅伝シーズンに入っても出雲は田澤に1秒差に迫る区間3位、全日本も田澤から遅れること14秒の区間2位で区間新記録と食らいつく姿を見せました。チームの絶対的な柱として、任された区間を担います。
前回箱根9区で区間記録を樹立した中村唯翔、10区で区間記録を樹立した中倉啓敦、2区の1年生日本人記録を持つ岸本大紀、全日本は1区で飛び出しチームに勇気を与えた目片将大、今季安定した成績を残している横田俊吾、関東インカレ2部ハーフで2年連続表彰台の西久保遼、山上り候補の脇田幸太朗ら、4年生の層が厚いのも今季のチームの特徴です。逆襲には欠かせない4年生が、最後の箱根でフレッシュグリーンのプライドを見せてくれるでしょう。

したたかに下剋上を狙うのは古代紫の襷・國學院大學。「三大駅伝表彰台」を掲げて挑んだ駅伝シーズンは出雲2位、全日本2位とチームに地力がついたところを見せ、順調に目標を達成してきました。しかし「これで悔しいと思えるチームになった」(出雲後の中西大翔キャプテン)と、今大会は優勝を視野に入れて挑みます。
チームの中心は「4本柱」と言われる選手たち。学生ハーフ2位の中西大翔(4)、関東インカレ2部ハーフ優勝の伊地知賢造(3)、学生ハーフ優勝の平林清澄(2)、日本人学生ハーフ歴代2位の1時間00分43秒のタイムを持つ山本歩夢(2)です。しかし、それだけではありません。5年目のシーズンに挑む経験豊富な島﨑慎愛(4)を加えて「5本柱」、全日本5区で区間賞を獲得した青木瑠郁(1)を加えて「6本柱」とも形容されます。
さらに、今季好調の藤本竜(4)、札幌マラソン(ハーフ)優勝でロードに強い鶴元太(2)、さらには駅伝未出走ながら力のある上原琉翔(1)、嘉数純平(1)と、各学年に力のある選手が揃います。
そしてもうひとつ。國學院の注目は区間配置です。前田康弘監督は過去、エースの浦野雄平(現富士通)を5区に配置したり、今季も出雲では一般的に「つなぎの区間」と言われる4区に中西大翔を配置しレースの流れをガラッと変えました。レース読み巧者・前田監督がどの区間を勝負と考え、どのように‘師匠’大八木監督に挑むのか、駅伝ファンならずとも注目です。

他にも、前回箱根1区で衝撃の独走を見せ区間記録を樹立した吉居大和(3)を擁する真紅の中央大学や、前回箱根2位で東京オリンピック3000m障害日本人史上初の7位入賞を果たした三浦龍司(3)擁する茄子紺・順天堂大学、97回大会で10区の途中まで首位を走りお茶の間に衝撃を与えた赤と青のストライプ・創価大学、花田勝彦監督新監督の下チームを作り直した臙脂の早稲田大学、紺青・東京国際大学には史上最強の留学生の呼び声高いイェゴン・ヴィンセント(4)に加え、丹所健(4)、山谷昌也(4)の日本人コンビもいます。

217.1キロのフィニッシュ・大手町に最初に飛び込むのはどのチームになるのか。今回も最後まで分からないレースになりそうです。

 

みどころ3 シード権争い

箱根駅伝は上位10校にシード権が与えられます。シードを落としたチームは予選会からの再出発となりますが、その予選会が過酷なレースになることは言うまでもありません。今年の予選会では10校の狭き枠を43校で争いました。立教大学が55年ぶりに、また大東文化大学、城西大学が本戦復帰を果たした一方、12年連続で出場を続けていた神奈川大学や、全日本大学駅伝の選考会を通過していた中央学院大学、日本大学が本戦出場の切符を逃す結果となりました。
また、箱根駅伝のシード校がそのまま出雲駅伝への出場権を得ることになります。シード権を獲るか否かは、翌年度のチームの明暗を握ると言っても過言ではありません。

前回大会は最終10区で逆転劇が起き10位に滑り込んだ法政大学がシードを獲得。東海大学が11位でシードを逃しました。95回大会の覇者が99回大会では予選会からの挑戦を余儀なくされたわけです。また、有力校に名前が挙げられていた早稲田大学や明治大学もシードを逃す結果となりました。有力校であっても(時に優勝候補に名前が上がりながらも)、一つのミスでシード権争いとなるのが箱根駅伝の怖いところです。

予選会からの出場校では早稲田大学、明治大学のほかに、山に自信を持つ城西大学、予選会トップ通過の大東文化大学がシード争いに絡んでくることが十分考えられます。

命運を分ける10位と11位の差。シード権争いにも注目です。

 

みどころ4 エース

エースの走りは、単にタイムを稼ぐだけではなく、チームに勢い、勇気をもたらします。そのエースをどこに配置するかは戦略上のキーポイントになるので、この点もみどころの一つです。

エースが多く投入されるのは「花の2区」。1区が出遅れた場合に挽回する必要がある区間であり、また距離が23.1kmと9区に並んで長く、さらに終盤には権太坂や「戸塚の壁」と言われる上り坂が待っています。走力、精神力ともにタフな選手でなければ攻略できないのが2区なのです。

その2区で前回区間賞を獲得したのが田澤廉(駒澤大4)。学生長距離界の枠を越え、日本長距離界のエースへと成長しつつあります。駅伝シーズンに入ってからも格の違いを見せる田澤は、万全でなかった出雲駅伝で3区区間2位、全日本は7区区間賞、区間新記録の快走でチームの二冠に貢献。例年、全日本後にトラックでタイムを出し(2020年には日本選手権10000m27分46秒09で8位入賞、2021年には日体大長距離競技会で27分23秒44=日本歴代2位)、箱根駅伝に向かう流れでしたが、今回はトラックレースには出場せず箱根一本に絞り調整を続けます。

その田澤がライバルに挙げるのがイェゴン・ヴィンセント(東京国際大4)。2区、3区の区間記録保持者です。今年は、3月のパリ・ハーフマラソンでは1時間01分18秒の自己ベストで2位に入ると、4月の金栗記念5000mで13分21秒02の今季学生1位のタイムをマーク。しかしその後は、4月末にドイツで行われたロード5キロ、初出場を果たした6月のケニア選手権10000mともに途中棄権、駅伝も出雲・全日本ともに回避と不本意なシーズンが続いています。秋以降は9月の日体大長距離競技会5000mに出たのみのヴィンセントですが、不安だった左ふくらはぎの故障から復帰。順調に練習をこなしています。箱根駅伝では新たな区間での区間記録樹立もありそうです。

さらに、青山学院大学のエース・近藤幸太郎(4)は「みんなで勝ちたい」と連覇への強い意欲をのぞかせます。同学年の駒澤大・田澤には、走力では「敵わないですよ」と話しながらも、エースとしてチームの支柱となり続ける姿に「そこは意識している。彼はずっと勝ち続けていて、そういうところは尊敬できる。青山学院のああいう存在になりたい」と表情を引き締めて話します。一貫して「走りたい区間は特にない」と答えるのは、エースとして任された仕事を全うする覚悟の表れ。最後の箱根も青山学院大学のエースらしく、笑顔で襷をつなぎます。

近年ではエースを1区や3区に投入するチームも増えています。出遅れが許されないと考えるチームは1区に、また1・2区に準エース級を投入できるチームは3区にエースを配置することで逃げ切りを図ることができるからです。

前回の箱根、中央大学は吉居大和を1区に配置。これが的中し、不滅の区間記録・佐藤悠基(東海大)を15年ぶりに更新する区間新記録でチームに勢いを与え、シード権獲得に貢献しました。順天堂大学のエース、オリンピアンの三浦龍司はこれまで1区、2区を経験していますが、今回はどこに配置されるでしょうか。

1年生から三大駅伝すべてに出走してきた國學院大・中西大翔(4)、27分台の記録を持つ早稲田大・井川龍人(4)、前エース・鎌田航生の背中を追う法政大・内田隼太(4)、箱根予選会日本人トップの専修大・木村暁仁(3)、55年ぶり箱根路復帰への力になった立教大・中山凛斗(3)、全日本で復活を果たし区間賞を獲得した東海大・石原翔太郎(3)、葛西潤(4)・嶋津雄大(4)、フィリップ・ムルワ(4)のトリオエースで箱根に挑む創価大学。今季苦しむ帝京大学は小野隆一朗(3)と西脇翔太(3)のコンビがチームを引っ張ります。日体大のエース・藤本珠輝(4)は今季は故障に苦しみましたが、最後の箱根路はどうなるのか。1年生から2区に挑み続ける東洋大・松山和希(3)の復帰はあるのか……各校のエースに注目です。

 

みどころ5 個性派ランナー

箱根駅伝を走るのは、当然ながら学生です。メディアに取り上げられる機会は多くなりますが、普段、一般の学生と同じように授業を受け、さらに競技に打ち込んでいます。そんな学生たちの中には個性的な経歴や趣味を持つ方もちらほら。

関東学生連合チームに「東京大学大学院から」選出されたのは古川大晃。前回に続き、2度目の学生連合チーム選出です。博士課程2年に在籍する27歳ですが、出走となれば東大院からは初の箱根ランナーになります。

昨シーズンまでの取材だと、法政大の松本康汰(4)はドラマを自主制作していたり、嶋津雄大(創価大4)は小説を執筆していたり、国士舘大・綱島辰也(4)はピアノが得意でドビュッシーの「月の光」が弾けたりします。東京国際大・白井勇佑(2)は自慢の前髪を切りそろえぱっつんランナーとして箱根を走ります。
また、中央大学には吉居大和・駿恭兄弟がいますが、そのほかにも國學院大學には双子の中西大翔・唯翔がいます。兄・唯翔は故障の影響もあり1年生の全日本以来駅伝出場がありませんが、箱根では襷をつなげるでしょうか。帝京大・新井大貴と城西大・新井颯人兄弟創価大・溝口泰良(3)と東海大・溝口仁(3)のいとこように、違うチームで箱根に出場しているケースもあります。

文化放送は毎年、出場する21チーム(20校+関東学生連合チーム)の監督とエントリー16名全員に、直接お話を伺うかたちで取材しています。コロナ禍の影響でリモート取材も増えていますが、この取材をもとにした選手の横顔を、中継の中でもお届けしていく予定です。


◆文化放送 箱根駅伝実況中継◆
1月2日(月)・3日(火) 7:30~14:30

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2024年1月2日(月)・3日(火) 7時30分~14時30分

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