【西武春季キャンプレポ】何故西武投手陣の防御率は劇的に良くなったのか

昨シーズン（2022年シーズン）の埼玉西武ライオンズのチーム防御率は、
2.75でパリーグNo.1である。
しかしその前のシーズン（2021年）のそれは3.94でこれは12球団ワーストだ。
わずか1年でこれほど数字が変わるものか。
3.94だった防御率がわずか1年で2.75である。

個人別の成績をみると以下の通りだ。
左が2021年の数字　右が2022年の数字である。

今井達也　3.30→2.41
髙橋光成　3.78→2.20
増田達至　4.99→2.45
宮川　哲 6.57→2.59
松本　航 3.79→3.19
浜屋将太 6.63→5.38
平井克典 4.22→2.89
森脇亮介 4.02→1.72
與座海人 2.79→2.88
本田圭佑 4.21→1.97
平良海馬 0.90→1.56
水上由伸 2.33→1.77

先発もリリーフも軒並み数字が、劇的に良くなっている。
特にリリーフ陣の防御率は、チーム防御率を上回る2.31で、
いったい何があったのか知りたくなる。
2022年はコロナ禍でなかなか取材ができなかったのだが、
ようやく今年のキャンプは大幅に制限が緩和され、特にリリーフ投手にこの件、
どう感じているか話を聞いた。

宮川　哲
力まなくなった。力を抜いて投げることに集中した。
マウンドで天井見上げて、鳥の巣があるのかなあ…などと（笑）。
すこし視点をかえて、マウンド上で力が入りすぎてコントロールが乱れるのを改善した。
全体の数字が良くなった理由？　それは…どうしてでしょうねえ。特に大きく練習のやり方が変わったわけではないのですが…。

森脇亮介
肩の痛みが昨年はほとんどなかったのが大きいです。一昨年は、投げられるが状態が完全ではないという状態が続き、自分のボールが投げられなかった。
昨年はキャンプから自分の中でしっくりいく投げ方ができたのが大きかったですね。
全体の数字が上がった理由は、そうですね。ブルペン陣のみんなが調子が良かったので、
自分が失敗したらすぐ次のチャンスがなくなるという危機感がありました。
一昨年は調子が悪くても外されるまでにはならなかったが、昨年はそうではなかったので、
全員に「失敗したらすぐ使ってもらえなくなる」…という危機感があってそれが結果的に良かったのだと思います。

平井克典
それはずばり競争意識でしょう。
我々アスリートは味方でも競争相手です。枠は限られてますからね。いい数字を残さないとすぐ居場所はなくなるという危機感とプレッシャーがありました。
自身としては怪我無く本来の投球ができたのが大きかったですね。
今季はウェートトレーニングを増やして、パワーを上げることに取り組んでいます。
ボールの力が落ちていることは自覚していますから。
いい若手がどんどん出てきますからね。大変ですよ、オジサンは…（笑）。

水上由伸
自分はただ平良と増田さんにつなぐことだけ、無失点でつなぐことだけを考えてました。一昨年と去年とで変わったことはありません。
ブルペンの雰囲気はよかったですね。ONとOFFの切り替えというか。
和気あいあいじゃないけど、そういう時間と、試合に入っていく、出番に向けてスイッチを入れていく時間とのメリハリ。青木コーチの作ってくれる雰囲気の良さはありました。
皆に負けられないという気持ち？　それはありますが、自分はそれよりも、自分がそこで何ができるか。周りはあまり関係ありません。周りはどうあれ自分が最高の力を出すだけを考えてます。

青木勇人投手コーチ
登板に向けての準備をしっかりやることを意識づけましたね。
朝起きて何をするかから、対戦相手の情報を覚えることとか、マウンドに上がるまでのすべての準備をしっかりやることを習慣にするということです。
試合に入ってもブルペンでは世間話もするしプライベートな話もしていたりする。自由にしてていいんです。
でもタイミングで、さあ行くぞっていうスイッチを入れるタイミング、そのために声のトーンを変えたりということは意識しました。
ブルペンなので一人ひとりスイッチを入れるタイミングは違うので気は遣うが、
ここからONだ！というメリハリをつけることは考えました。

でも、去年のようにうまくいくとは限りません。去年は去年。
今年はどういうことになるのか、まったくまだわかりません。私たちの仕事はその繰り返しですね。

たったの一年でこれほど防御率が良くなった要因は一つではない。
しかし「負けられない競争意識」がブルペンにあったことは間違いない。
そしてその意識に火をつけたのは新人王を獲得した水上投手ではなかったか。
これは私のここまでの取材で得た仮説である。

取材：長谷川太