「私たちは取り返しがつかない状態にいる」原発処理水の海洋放出について作家・高村薫が言いたいこと

「私たちは取り返しがつかない状態にいる」原発処理水の海洋放出について作家・高村薫が言いたいこと

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「サンデー毎日」で連載中の人気コラムを、およそ2年分をまとめた本「銃を置け、戦争を終わらせよう」が発売中の作家・高村薫さんが8月28日の大竹まことゴールデンラジオに出演。本にも書かれている原発についての思いを伺った。

大竹「今回のご本は、サンデー毎日で連載されたものがまとめられていて、終始原発について触れられております。ここでおっしゃりたいことはどんなことですか?」

高村「私たちは今、核を持つことに対するアレルギーを失いかけている、というところに差し掛かっていて、もう一度想像力を働かせるしかないんです。これは実際に経験してみるわけにいかないので、想像するしかないんです。」

大竹「あれだけの原発の事故があって今、海洋放出が始まっております。11年前に被害を受けておきながら原発行政は続いていて、政府は今度 原発に回帰すると、原発を動かしていこうじゃないかという風に舵を切ってます。どんな風にお思いですか?」

高村「長期的に「これ」を続けたらどうなるか、あるいはもし大地震が起きた時どうなるか、あるいは合理的にいろんなことを想像するという発想がないんですよね。今さえ良ければいい、今さえなんとかなっておればいい、それでずっとやってきた結果が今のこれでしょう。原発は、長期的に何が起こるか、どんなことが起こり得るか、その時に私たちに何ができるか、ということを全部考慮した上で進めなければならないと思います。一旦何かあると取り返しがつかないわけで、その取り返しがつかない状態の中に今私たちはいるんですよ。その取り返しがつかないことを、この悲惨な身動きができない状態の中で、私たちはなおも原発を動かすのか、という自問自答を一人一人がしなきゃいけないんですね。」

大竹「ご本の中では、再生可能エネルギーに比べて、原発のコストは著しく高くつくとお書きになっています。」

高村「そうですね、決して安くはない。今回の処理水の海洋放出について政府は、これが一番コストが安かった、安いからそうしたんだ、と言いますけども、実はこれから中国とか韓国などの全面禁輸に対する保証とか、あるいは日本の漁業がこれから経験するであろう漁業の停滞。漁業の壊滅と言ってもいいかもしれない。それに対するコスト…」

大竹「漁業の壊滅?」

高村「福島県沖はもう続けられませんでしょう。私は続けるべきだと思いますけれども、市場が決めることですからね。みんなが福島のお魚を食べないと漁は続けられません。実際問題、震災前のまだ2割しか水揚げ量はないんですよ。8割が消えてしまったんですよね。そういう状態の中で、処理水が放出されるわけですから、これからもっと福島県沖の漁業が大変なことになる。そういうコストなどいろんなことを考えますと、今回の処理水はものすごい高くつくと思うんですね。」

大竹「政府は、30年から50年、将来にわたって責任を持つと言っているんですけども、官僚の方も2年で変わっていくし、今の政府が50年続くとも思えませ。」

高村「責任の取りようがないですよ。それに30年40年、海洋放出が続くと言いますけど、それは廃炉がきちんとできての話であって、廃炉が進まなかったら処理水の問題は終わらないんですよね。だから実際問題は40年よりもっと続くかもしれない。そういうことを考えますと、どんなに高くつくのか。私たちは、よほど冷静に政府の今やってることを見極める、本当に正しい判断だったのかということをしつこく見極めていく必要があると思います。」

「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午後1時~3時30分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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