2017.6.03

マスターズインタビュー(『麵屋武蔵』社長・矢都木二郎)2017年5月29日~6月2日OA

nmt事務局
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文化放送『The News Masters TOKYO』「マスターズインタビュー」今回は、ラーメン業界の先端を走り続けている『麵屋武蔵』の2代目社長・矢都木二郎(やとぎ・じろう)さん。1996年東京の青山に、それまでのラーメン店のイメージを一新させたおしゃれな店が現れた。


『麺屋武蔵』創業者・山田雄(やまだ・たけし)さんが創り上げた"革新的で上質"なラーメン店作りを継承しながら、新しい取り組みでラーメン界に新風を巻き起こしている矢都木社長。剣豪・宮本武蔵の兵法書『五輪書』になぞらえたビジネス哲学にタケ小山が斬り込む。

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「麺屋武蔵は何が違うのか」

アパレル出身の創業者の山田雄さんは、今までにないラーメン店を作りたいとの思いから1996年、『麺屋武蔵』を東京青山にオープン。おしゃれな白いのれんをくぐると、間接照明を使ったインテリア、ジャズのBGMといったラーメン店とは思えない空間が当時話題となった。


「ラーメンの基本的概念と言うか、在り方を変えたのが麺屋武蔵」


かつお節、煮干し、サンマ干しといった魚の乾物を使ったスープも珍しく衝撃的だった。運も味方につけた。世間はインターネットブームで、『麺屋武蔵』の評判は一気に広まることとなった。


それから20年間、常にラーメン界を牽引してきた『麺屋武蔵』だが、日本で展開しているチェーン店は東京都内の14店舗のみ。しかも全店舗で味が違うそうだ。


「確かに大手さんのようなスケールメリットは全くない。だけど逆に僕らはスモールメリットと言っている」ちいさいからこそできる、お客様の細かいニーズに応えられるサービスを提供していくのが武蔵流だ。ラーメンを食べて、お店を出た後に『麺屋武蔵』に来た!という空気感を持ってもらうことが"武蔵ブランド"だと矢都木社長は言う。



「なぜラーメン屋を志したのか」


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2代目社長・矢都木二郎は、とにかくラーメンが好きな子どもだった。「大学時代にハマったのが、当時はまだ馴染みの無かった"つけ麺"。年に100回位通った」と言う。夢中になって食べ続けているうちに「つけ麺の将来性を考えるようになった」そうだ。そんなところが矢都木社長の嗅覚だろう。


大学を卒業して一旦はサラリーマンとなるが、つけ麺への思いが捨てきれず『麺屋武蔵』へ再就職。「転職に対する不安はあったが、勇気をもって一歩踏み出すことはとても大事なことだと思う」


選んだ理由は「大人気行列店のヒットの仕方を知りたい」。そして「将来は独立してつけ麺店を開業したい」であった。結果的には独立はせず、2代目社長に収まった。


矢都木社長が独立や転職するスタッフによく言うのは「独立は手段であって結果論ではない。独立したから上手くいく訳ではない。こういうことがしたい!だから独立や転職するのであればいいと思う。独立はスタートであって、そこからが長いんだよ」と。独立することがゴールになってしまっている人に警鐘を鳴らす。



座右の銘は「念ずれば花開く」。こうなりたい!という思いがあれば夢は叶うし、逆にあきらめるという判断も自分で決めている。だから、自ら判断したことが今につながっている。「そういう意味で、人生は全て自分の思い通りになっている」と矢都木社長は言う。


「ラーメンを売らない麺屋武蔵のブランド戦略」


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ラーメンを売らないラーメン店『麺屋武蔵』。そのコンセプトに武蔵ブランドの独自性をみることができる。

「ラーメンを通じて食事の時間を楽しんでいただく。暖簾をくぐってから店を出るまでがラーメン一杯のお値段なんです」味の体験だけではなく、時の体験を楽しんでいただく『麺屋武蔵』には、"1杯にして、1杯にあらず"という言葉がある。つまり、ラーメンという"モノ"を売るのではなく、ラーメンにまつわる"コト"を楽しんでもらおうというもの。そこにストーリーを組み立てることでお客様に満足していただくという考え方だ。


いつも清潔な店内のあちこちには宮本武蔵にまつわる備品があり、スタッフには活気があって、待っている時間も湯切りのパフォーマンスなどが楽しめる。そして豪快なチャーシューが乗ったラーメンは美味しい。最後はスタッフからの感謝の挨拶で気持ちよく店を出る。とても印象的だとタケ小山は絶賛する。


そんなブランド構築のヒントとして矢都木社長は「ブレずにやり切る。やり続ける。そのイメージをどれだけ植え付けられるかだ」と言う。そしてお客様の信頼を裏切らないことが大切だとも。『麺屋武蔵』では、期間限定麺を除いて"売切れ御免"はしないことを鉄則にしている。


もうひとつの鉄則は"値下げはしない"。「お客様に喜んでもらえないから、自分達に自信がないから値下げをするんです」価格競争に陥るのは自らの身を滅ぼす道である。『麺屋武蔵』は"価格"ではなく"価値"で勝負しているという。


「サービスの極意"五輪書"」


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2代目社長・矢都木二郎さんの著書『麺屋武蔵 ビジネス 五輪書』には、ラーメンの作り方は一切書いていない。剣豪・宮本武蔵の兵法書がラーメンビジネスとどうつながるのか?とタケ小山が斬り込むと、「僕らの仕事ってラーメンを作ることと思われがちですが、お客様に喜んでいただくことなんです。喜んでいただくことのツールがラーメンなんです」


五輪書になぞらえたビジネス哲学。『麺屋武蔵』が20年間蓄えた極意は、ラーメンビジネス以外でも通じるところがおおいにある。

"お客様に喜んでいただく"これこそが矢都木社長が目指すサービスだが「接客に関しては千差万別、ひとりひとり違うので、愛想良く話しかけられるのが好きなお客様もいれば、いや黙って食べさせてよと言うお客様もいらっしゃる。その辺をちゃんとカスタマイズできることがサービスの神髄なんじゃないかと思う」

そういうスキルを持つスタッフを育てることが矢都木社長の仕事でもあり、『麺屋武蔵』にとっても、そのスタッフにとってもいいことなのだと矢都木社長は言う。


"仕事に上も下もない"というのが武蔵流。あるのは"ポジションの違い"。チームプレーでの上下関係は弊害があるとのことから、フラットな組織構造にしている。上下関係がないので叱ることはいっさいなく、ミスが発生したら指摘するのだそうだ。

武蔵流のビジネスの極意には、"新人にはスープから教えろ"とか"店長は店にいなくてもいい"など一見すると独特なものも多いが、五輪書から導かれたビジネス兵法として理に適った戦術と言えよう。


「麺屋武蔵が描く未来」



矢都木社長ご自身も大学卒業後にサラリーマンを経てからラーメン業界に飛び込んだこともあって"ラーメン店の地位向上"や"職種としてのラーメン業をもっと魅力的にしたい"というのが描く夢だ。


嬉しいことに最近の傾向は職種としてラーメン業を選ぶ新人が増えてきたそうだ。独立志望から職種としての選択肢へと変化の兆しがでてきたラーメン業界。将来的には"入りたい会社ランキング"に顔を出せるような業界になっていけたらと矢都木社長は考えている。


『麺屋武蔵』の今後の展開は?


「門外不出作戦。東京と海外でしか食べられない。店舗が東京にしかなくても全国の人が『麺屋武蔵』を知っている。それが理想です」

魅力的なラーメン業界にするために矢都木社長が考えている改革とは?

「労働環境の整備が急務。休みを増やしたり、福利厚生を充実させたり、スタッフが働きやすく魅力的な職場にすること」


「そうすることによって、もっと様々な人材がラーメン業界に集まってくるようになるんです。それで想像性が豊かになり、ラーメンの向上にもつながる。そんないい循環をつくりあげていきたい」


チョコレートやイチゴなど意外な食材とラーメンとのコラボを仕掛けてきた矢都木社長。彼の描くラーメン業界の未来像は、近い将来現実のものになりそうだ。

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