2018.6.25

「"99対100で勝てばいい"カクヤス佐藤順一社長の『たい、べき、できる』論」

nmt事務局
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文化放送The News Masters TOKYO「マスターズインタビュー」。


今回のインタビューのお相手は、お酒の販売・配達でおなじみ「なんでも酒やカクヤス」を運営する株式会社カクヤス代表取締役社長・佐藤順一さん。佐藤さんの社長就任は34歳、バブル絶頂期だったそう。当時の会社の年商は30億円ほど。しかし、バブル崩壊を受けてお酒関連市場は右肩下がりに。そんな中、どうやって現在の年商1000億円に持っていったのでしょうか・・・


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<会社の大きな転機について>


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お酒が大好きで酒屋さんの「優良顧客」というタケ小山は、まずは「どうやってここまで会社を大きくしたのか?ほかの酒屋と何が違ったのか?」という素朴な疑問をぶつけた。


佐藤さんは、当時の状況の説明から丁寧に話し始めた。「実は、お酒のマーケットは1996頃をピークにして縮小に転じてしまう。そんな中、酒類販売免許の規制緩和が決まることに。市場が縮小しているにも関わらず、自由化をするということを国が決めてしまった。従来は、既存の免許のある酒屋さんと戦うだけでよかったが2003年の9月以降は、どこも参入できるようになり、誰が入ってくるのかわからなくなった」


「今までは、いくらでも金を使ってシェアを取れというシェア争いの時代。取引相手との販促費を目当てにして経営を成り立たせていた。その販促費がいずれ出なくなる。今までずっとやってきた安売り商法がダメと言われ、なおかつ、とてつもなく強い相手と戦いなさい、ということ。そこで、価格以外で選ばれるものはないのか?と考えた結果が...『お届け』を磨く!ということ」と、佐藤さんの自信満々な回答にタケは戸惑った。


「お届けを磨くとは、具体的にどういうこと?」というタケの質問に佐藤さんは明快に答えた


「当時のお届けは翌日が一番早かった。しかし、頑張れば2時間以内に届けられるのでは?また、お届けのモデルには必ずロットがある。いくら以上買わないと無料にならないというもの。しかし、それは売り手の都合。そこで、売り手の都合を全て排除し、明確に宣言をした。『1本から行きます』と。更に、エリアのしばりを設けない。どうしても手に入れたかったキーワード、それが『どこでも行く』。
実際には、日本全国どこでも...は、さすがに無理。しかし、東京23区全部をこのモデルでくくってしまえば、『23区どこでも』と言える。『どこでも』というキーワードが手に入る。そこで、23区全部に店を出しにいこうとなった。逆に、何店舗出せば全部埋まるのか。『どこでも』が実現するのか。はじき出した答えは137店舗!住宅のないところなどを除けば必要なのは110店舗だった」と、佐藤さんは細かく説明してくれた。


店舗を増やすといっても簡単にできることではない。2000年に28店舗程だった「カクヤス」が、2003年9月の自由化までに80店舗以上の出店を目指し、「23区どこでも、1本から無料で、2時間でお届けします」というお届けモデルが、出来上がるか出来上がらないかが勝負の分かれ目だと、佐藤さんは考えたのだ。結果、2003年9月までに120店舗弱を達成し、なんとかこのサービスを提供したという。




<「なんでも酒やカクヤス」の名前に込められた願いについて>


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タケ小山は、「なんでも酒やカクヤス」の「なんでも」の名前に込められた意味を尋ねた。


「『なんでも酒や』の『なんでも』とは、『お客様の要望、期待になんでも応えたい』という意味。常に社員皆が、客の要望に何かあと1つ応えたい。もちろん何でも応えられるわけではない。


例えば、お店は朝10時にスタートなので、朝6時の要望に応えていない。かといって、朝6時にお酒が欲しいお客様がおかしいということではなくて、『大変申し訳ない、まだ力及ばず朝6時にはお店を開けられないが、いつかそういう要望にも応えられるように頑張っていきたいと思っている』、というような出来ないことに対する姿勢というものを形作りたかった。実現させた1つとして、当時2時間だったお届け時間を現在は1時間枠でお客様が指定できるようにした。その、なんでも応えたいという願いを『なんでも』という名称に込めた」と、佐藤さんはおしえてくれた。


佐藤さんは、「今ある強みは必ずマネされる。ただ1つだけ、絶対にマネされないものがある。それは、これから生み出すサービスや仕組み。常に何をやるかわからないからマネできない。常に何かを生み出していくと、ちょっとずつ差を付けていける。この差が、選ばれるか選ばれないかの99対100の1点差で勝つということ」と語った。佐藤さんの貫く信念が見えた。




<成功と失敗の関係性について>


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商売をやるうえで順風満帆ということはあまりない。何事にも通じるであろう「苦境に立たされた時の解決方法とは?」というタケの質問に対して佐藤さんははっきりと自信をもって回答した。


「『最大リスクを確保する』ということ。もしかしたら10億位の損が出るかもしれない。その場合、まず10億円を確保する。それが6億で済めば、4億円儲かったではないか!と。最大リスクを確保して、取り戻した分はおまけという発想に持っていく」


何故うまくいったのか?その答えは「たまたまついていただけ」だという佐藤さん。更に佐藤さんは、「ハイボールが流行り、ハイボールが売れるとどうなるか?ビールが売れなくなる。ビールが売れないでハイボールが売れるということは、氷の消費量が圧倒的に増える。製氷機にはスペックがあり、それをオーバーすると氷が絶対に足りなくなる。
居酒屋に聞き込みをしたら、店員さんも夏場のピークはコンビニに走るという。これは絶対にビジネスチャンスだと考え、全店舗にアイスストッカーを入れ、保冷バッグも装備した。しかし、全く売れず。


その理由は...氷が足りなくなるのは夜の10時過ぎ。『カクヤス』は10時に閉店だった!」という失敗談まで笑いながら語ってくれた。「たまたまついていただけ」とは言うものの、何かを仕掛けているからこそ、結果がついてくる。タケは佐藤さんの言葉の裏にある確かな自信を感じ取った。


<ビジネスにすぐ使える社長語録について>


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佐藤さんの「座右の銘」とは。


「『中華料理の円卓』。
8人位で円卓を囲んでいたとする。社長がいて部長がいて、普通は『社長からどうぞ』と言われる。いやいや俺はいいから先に取って、と言って、ぐるっとひと回りしてくると、だいたい最後に2人分が残っている。2人分取っても誰にも文句は言われない。ところが、最初に2人分を取ると、『社長はがめつい』になる。


つまり、様々な制約を取りのぞいて、まず相手の要望に応える。最後にそろばんを合わせるのはこちらの知恵。物事は全てそういうこと」と、佐藤さんは語った。これには「なるほど、今日から使える!」と、タケも妙に納得した様子を見せた。




<「カクヤス」という会社に根付いた風土について>


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「『カクヤス』という会社を一言で言うと?」と、タケ小山が質問すると、「仲間がいっぱいいる会社」と、即答した佐藤さん。


別の会社からカクヤスに入社してきたIT責任者の経験談。
「ある時、メインシステムがダウンしてしまった。受注の入力もできず、非常に困った。前の会社だったら叱責されていたところ。しかし、カクヤスでは、コンピューターが止まった途端に、コールセンターに皆が勝手に集まってきて電話を取り出す。お客様に迷惑はかけられない、電話でメモすることはできる、と。」その様子にIT責任者は大変驚いたという。


また、過去に人事部長をやっていた人がセミナーで体験した話も。
「『一番嬉しかったことは何か?』と問われ、元人事部長は『同期より先に出世したことが一番嬉しかった』と書いた。ところが、『カクヤス』の社員は、『こんなサービスをしたらお客様に喜んでもらえた』『こんなことをしたら上司に評価された』など、仕事のことばかり」だという。皆で率先してやる。そういう集団であり続けたい、と佐藤さんは話した。


「物事がうまくいく時は3つの要素がある。1つは、自分が本当にやりたいという気持ちがあるかどうか。もう1つは、その能力や資源が、自分ないし自分の会社にあるかどうか。あと1つは、マーケットがそのニーズにあるかどうか。やりたい気持ちと、やるべきかと、やることができるだけの資源があるか。
「たい、べき、できる」の3つの要素があって、物事はうまくいく。その中でも、3つの要素に順番をつけるならば、「たい」である。大きな「たい」の会社になりたい。客の要望、期待にはなんでも応え「たい」。全てはここ」そう熱く語ってくれた佐藤さん。


ブレない芯の強さを持っている、成功者ならではの話だった。

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