2018.10.04

「お客さんに喜んでもらいたい、幸せになってもらいたい」 キリンビール元副社長が、負け犬集団を蘇らせたマネジメント術

nmt事務局
0
  • Podcastで聴く
  • Voicyで聴く
  • Podcastで聴く
  • ラジオクラウドで聴く
  • Voicyで聴く

文化放送「The News Masters TOKYO」マスターズインタビュー。今回のお相手は、キリンビール株式会社・元副社長の田村潤さん。田村さんは、1950年、東京生まれ。キリンビール入社後、岡山工場労務課に配属。その後、本社人事、労務部門を経て、営業部門に転出します。1995年に、東京本社で部長代理だった田村さんは、値引きをしてでも商談を成立させたい上司と意見が対立した結果、全国有数の苦戦地域のひとつの高知支店に、支店長として異動になります。

その後、高知支店の業績は反転し、田村さんやその部下の奮闘もあり、県内トップシェアをアサヒビールから奪回。その悪戦苦闘の一部始終をThe News Masters TOKYO・パーソナリティで、プロゴルファーのタケ小山が迫った。

◆左遷人事で高知支店長に

CIMG5470.JPG

東京本社時代、「売り上げが思わしくないので、商品の値下げをする」という上司と「ブランドの価値を上げていくのがメーカーの使命。一旦安くすると、そういった価値だと思われてしまう。それはお客さんのためにならない。」と主張していた田村さん。本社内で対立が勃発していた。

社内は次第に"田村がいるからキリンの売り上げが悪い"という雰囲気にシフト。その結果、全国有数の苦戦地域・高知県の支店長に。左遷人事だった。社内からは「田村終わりだ」とささやく声も。

タケ「モチベーションは下がりませんでしたか?」

田村「下がりませんでした。若い時に人事の経験がありまして、会社の人事というのは、理不尽なものだと分かっていましたので」

自分の持っている能力以上の人のことは理解できないし、人事担当者には好き嫌いもある上に、タイミングもある。むしろ理不尽や不本意な結果になりやすいのが人事であり、それで腐るのがいかにバカバカしいかを分かっていた。これを踏まえてタケにこう切り返した。

田村「人事で腐るのは一番損です!」

左遷人事で高知支店の支店長に就任した田村さん。腐ることもなく、最初に手を付けたのは、組織で一番大切な力『一度やると決めたことは、徹底してやりきる力』への着手だった。

当時の高知支店はやることが多く、すべて中途半端。どれにも手を出すが、一つのことをやりきる文化がなかった。だから営業力も売る力もなくなった。そこで、やることを絞った。

例えば、「よく得意先を回る!」など何をやるかをセールスの方から自分で言ってもらった。(ひと月に200件、飲み屋さんを回る等)

これまで、高知支店では飲み屋さんを回る営業はあまりやっていなかった。基本的に、メーカー→問屋→酒屋→飲み屋さんに売るという順番で、飲み屋さんはいわば末端。それに、数も多いし、ひとつひとつの飲み屋さんにたくさん売上があるわけではないため、それは今までほとんどやっていないかった営業のスタイルであった。

◆高知支店の勝機はどこにあったのか?

CIMG5469.JPG

そんな状況の中で、着任早々から田村さんは、ひたすら宴会をまわって、お客の声に耳を傾けた。高知県と言えば皿鉢料理が名物なように、毎日どこかで宴会が開催されている土地でもあったのだ。

あらゆる宴会に出ては、「キリンはどうしらたいいですか?」「どういう理由でアサヒビールに変わったのですか?」と聞き続けた田村さん。1日に20人、年間5000人、さらに高知支店は従業員が10人いるため年間5万人の話を聞いたことになる。

タケ「何かわかりましたか?」

田村「ビールは"人気"!"人気"があるのが売れるんです!」

その"人気"というのはどこでキャッチするかと言うと、大部分は"口コミ"。さらに呑み屋さんにキリンがたくさん並んでいる地域は、一般の家庭でもキリンが強いということ。加えて「舌に味が慣れる」=「一般の家庭にもキリンが売れるようになる」ということも分かった。

人気の判断材料は他にもあった。そのカギは、小売店。

「スーパーマーケットや、酒屋さんの店頭にたくさん商品が並んでいると、たくさん売れます」と語る田村さん。

これも"人気"と判断される材料。もちろん、ただキリンビールのお願いをするだけではなく、相手の立場に立って、魅力的な売り場にするにはどうしたらいいかを一緒に考え、お店全体の売り上げも上がるように協力した。これを1年続けた結果、これまでとは違う手ごたえを感じ始めた。

◆組織の立て直し

CIMG5492.JPG

そうした取り組みが実を結び、高知支店の業績をV字回復させた田村さん。個々人の取り組みについては、このように語っている。

田村「『仕事は基本が大事』なんです。単純なことを愚直に地道に徹底的に!そうすると、ある時に突き抜ける瞬間があるんです」

基本を徹底的に繰り返す→成長する→さらに徹底的に突き詰める...というサイクル。覚えのある人もいるのではないだろうか?さらにタケが続ける。

タケ「『変われる組織と変われない組織』があると思います。違いはなんでしょうか?」

田村「変われる人間に共通しているのは、"まず自分でやってみよう!"という姿勢です。」

キリンビール、高知支店の例で言うと、女性の方が「まず、やってみよう」の傾向が強く、例えば内勤の女性の方が、パッと提案書を作って、店舗用のPOPを作って、呑み屋さんのメニューも作ってセールスに持たせたりしていた。変われる組織は、腹を括る人がいっぱいいた方がいいのだ。

タケ「そうは言っても、ウチの組織は変われないよ...という人はどうしたらいいでしょう?」

田村「まず情報をオープンにすること。リーダーとメンバーが持っている情報量が違うと本気になれません。自分たちで考えて自分たちで行動する!そうすることで勇気が出てくるんです」

これだけではとどまらない。田村さんは、東海地区本部長のときには、会議廃止をも打ち出す。

「(本社への報告が必要になるため)成績の悪いところは会議が増えるんです。みんな言い訳がうまいんですよ」と語る田村さん。曰く「会社のお金=お客さんからのお金です。これを使って、従業員に言い訳する能力を開発しているようなもの」とも。しかし、大事なのは、現在と将来であり、それに関する会議は行ったとのこと。

◆本社と現場のギャップ

CIMG5458.JPG

本社・本部以外の場所にいるとそこからの指示に対して「これは本当に正しいのだろうか?」と思う人も多いだろう。地方の支社にいた田村さんはそのギャップについてどのように考えていたのだろうか?

田村「上司の指示は正しいことも、間違っていることもあります。その指示に従う基準は、"お客様にとって価値があるかどうか"です」

田村さんの場合、ひとつひとつ、高知のお客さんにとって有益かを吟味。「これは徹底してやろう!」「ほっとけ!(無視しろ)」「流しとけ!(軽くやれ)」の3つに区分けして、さらに部下に指示を出した。その仕分け能力は、現場をよく回っていることでその感覚を養うことができるそうだ。

どんな会社も世の中に必要とされている理由がある。「世の中にもっと必要としてもらいたい。お客さんにもっと喜んでもらいたい」といった"心の置き場"をそこに移すと、いろんな指示が相対的に見られるようになる。そして、お客さんに喜んでもらうためにやると、やる気が出てくるのだ。

「どうしてこのようなことが生じるのだろうか?」この問いに、田村さんは「役割が違うからです。この役割を乗り越えるのは、自分たちの会社の使命がどこにあるか。あるべき姿と現実は、猛烈なギャップがあります」

本社の大切な役割は、このギャップを埋めていくエネルギーをいかにキープするか。現場は、現場で学んだことを全社の政策につなげることが大切なのである。

◆部下を輝かせるリーダーになるために

CIMG5483.JPG

商品が売れなくなった時は、何をしていいか分からなかったため、部下にやる気を出させることについては考えていなかったという田村さん。そこにタケが食いつく。

タケ「しかしなぜ、部下のやる気が出たのでしょう?」

この問いに見解は以下の3つであった。

1.情報がオープンになっていた。
2.自分たちで考えて行動ができた。
3.リーダーがブレなかった。

中でも、リーダーはブレやすいものだが、なぜブレなかったのか。そこには「"お客さんに幸せになってもらう"」ということに、視線が常にいっていたからだ。本社からの指示に従うか否かの基準についてと同じ答えで、まさにブレがない。タケがさらに深堀りする。

タケ「では、部下が自分で考えるようになるには?」

田村「自由度を与えることです。得意先にも現場にも何のためにやるか、という軸さえあれば、あと他はなんでもいいです」

ただし、その環境を整えるには、トップも末端も今は大変。中間管理職が立ち上がらないと日本の企業は難しい。その際、「この会社の使命は何かを頭のどこかにおいておくと良い」とも付け加えた。

「お客さんにとって価値があるかどうか」この問題で左遷されるも、一貫してこの信念を貫き通し、結果を出して田村さんは返り咲いた。ビジネスをする上で、誰もが選択を迫られたり、悩んだりすることもあるだろう。そんなときは、一度「お客さんにとってどうか」を基準にしてみてはどうだろうか。

文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。

音声で聞くには podcastで。
The News Masters TOKYO Podcast 文化放送「The News Masters TOKYO」
http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山
アシスタント:文化放送アナウンサー 西川文野(月~木)/長麻未(金)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)

  • Podcastで聴く
  • Voicyで聴く
  • Podcastで聴く
  • ラジオクラウドで聴く
  • Voicyで聴く
  • URLを
    コピー
特集一覧
タイムテーブル