2018.11.12

CEOは元バンドマン!?ウミーベ・カズワタベさんが福岡で起業した理由

nmt事務局
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文化放送・The News Masters TOKYO「マスターズインタビュー」今回のお相手は、国内最大級の釣りの総合情報サイト「ツリホウ」や、釣った魚を共有して釣り人同士で交流できるスマートフォンアプリ「ツリバカメラ」などの開発・運営をしているウミーベ株式会社 CEO・カズワタベさんです。

音楽大学を卒業し、バンドマンを経て現在のウミーベを創業。今年に入り、日本最大の料理レシピサービス「クックパッド」に買収され話題に。元バンドマン、オフィスは敢えて福岡、釣り情報を扱うのにクックパッドが買収などなど、気になることだらけの男に、The News Masters TOKYOパーソナリティのタケ小山とご対面。その正体とは!?

◆音大出身でなぜ起業?

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本名は渡部一紀。元々は、バンド活動をしていて、そのころに「カズワタベ」と名乗っていたことの名残もあり、現在もこの名前を名乗っている。大学は洗足学園音楽大学でジャズの専攻。パートはギターだった。昔から、自分で事業をしたいという願望はあったのに...タケが食いつく。

タケ「なぜ音大に進んだのですか?」
カズ「自分が好きな経営者はクリエイター系の人たちが多く、彼らは経済学部・経営学部卒ではなかったのです」

この事実を知り、経済学部や経営学部でなくてもいいと思い、中学からや音楽をやっていたことから、音大への道に進む。その後、2010年くらいに、在学中にやっていたバンドが解散することになる。その時、デザインやインターネットが好きだったため、以前からやりたいと思っていたウェブサービスを作る事業をやってみようと思いTwitterで知り合った人たちと起業。

「Grow」というサービスで、Facebookの「いいね!」ボタンのように、「Grow」というボタンがサイトに埋め込まれていて、そのボタンをクリックすると、クリエイターにチップが送れるというもの。(※現在はサービス閉鎖)その後、フリーランスを経てできたのが「ウミーベ」という会社である。

◆ウミーベの立ち上げと福岡への移住

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カズワタベさんは、フリーランスになった時点で福岡に移住。なぜ、福岡を選んだのか?

カズ「福岡はバランスが良い街で、家賃は安い、空港に近い、食べ物が美味しい、街がコンパクトなので自然も近いんです。中心街から車で20~30分行けば、綺麗な海もあります」

将来は漁師を志すタケも「福岡は、釣り人には最高の環境ですからね」と前のめりに答える。さらにタケが畳みかける。

タケ「ウミーベは福岡だから生まれたということですか?」
カズ「自分の興味関心と場所が上手いことマッチしたんです。元々は色々な事業のアイデアがあり、どれも東京でやった方が成功率は高いと思ったのですが、釣りに関しては東京よりも西日本の方が盛んで(総務省発表のデータより)、『これなら福岡でやる意味がある』と思って立ち上げました」

創業した時点で構想していたのは、釣り人の交流サイトの「ツリバカメラ」 これを開発している最中に「ツリホウ」という釣りの情報サイトを先に立ち上げた。

特に「ツリホウ」は、初心者に向けた釣り情報サイトで、カズワタベさんもその時、まだ釣り歴1年半。道具、釣り場、糸の結び方など、分からないことがたくさんあったが、これがヒントになり「同じように困っている人がいるのでは?」と思ってサービスを立ち上げた。

立ち上げた後は1年後に月間30万PVあればいいと思っていたが、半年で月間100万PVを超え、ピーク時は200万PVあった。釣りは、アウトドアレジャーでは随一の人口であり、雑誌などはあったものの、会社が運営しているウェブサイトは少なく、それが見事にヒットした。

◆新しいサービスや商品はどこから?

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ウミーベではWebサイトやアプリを開発・運営しているだけでなく、釣りをしたときに手についた魚の「臭い」や「ぬめり」を消すハンドソープ「フィッシュソープ」を販売している。去年の9月に発売し、現在では釣具屋店を中心に300店舗くらいで取り扱っている。

タケ「これ一見、誰にでも思いつきそうだけど...」
カズ「意外となかったんですよね」

これまでは台所用洗剤の原液やあら塩など、色々な方法が試されていたが、どれも手がゴワゴワになるものが多かった。コアな釣り人は気にならなくなっているが、周りの人はひとたまりもない。

ウミーベは「釣りをやさしく」をコーポレートビジョンに掲げているが、「釣りをした後に手が臭い」ことは圧倒的に優しくない。初心者にとっては、釣りの後に手が臭いことは高い壁となっていた。実際釣りをやっていない人、一回やったきりの人に話を聞いたら、継続してやらない理由に「手が臭い」が真っ先に出てくる。

カズ「そこを改善しないことには、インターネット上の情報をどんなに整備しようと、実体験の方にネガティブなポイントがあると意味がない。ハンドソープであれば、単価も安いしとれる範囲のリスクだと思い立ち上げました」

元々、ユーザーとしてインターネットが好きなので、他のジャンルでの同じようなサービスを色々見ているカズワタベさん。「それを釣りに活かすにはどうすればいいだろう?」と考えているという。

それが形になるのは、会話の中だったり、風呂に入ってたりしてるときだそうだ。特に、福岡に住んでいると、九州の温泉へのアクセスも良い。普段は目先、短期的なことに頭を使いがちだが、風呂に浸かりリセットしたタイミングで長期的なプランが思いつくことが多いのだ。

◆起業を目指す人へのアドバイス

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これまで、意欲むき出しで攻めの姿勢を貫く経営者が多く出てきたこのマスターズインタビュー。しかし、今回は将来的なビジョンや方向性は持ちつつも、どこか緩さも醸し出す異色のタイプとしてタケをはじめ、我々スタッフの目には映った。そんな彼の持つ「起業論」はどのようなものなのか?タケがぶつける。

タケ「起業したい人へのアドバイスは?」
カズ「起業した後も色々あるので、自分の中での成功のイメージを持っているか。例えば、ウミーベはクックパッドに買収されたが、他にももっと大きい会社を目指すという選択肢もありました」

こういった基準がないとずっと苦しくなる。「自分のペースや考え方をはっきりさせた方がいい」というのがカズワタベさんの「起業論」だ。

その中で業務内容も、好きなことをやるか、儲かることをやるのか。それも含めてスタンスを決めないと成功しても不幸になるかもしれない。ウミーベもまだまだ成長させないといけないフェーズではあるが、やっていて楽しいのは間違いないという。自分で決められるからこそ、スタンスが明確になっていないと逆に何も決められない。そこが一番大事。

タケ「成功には失敗はつきもの。失敗についてはどう思う?」
カズ「スタートアップはほとんど失敗。ウミーベが成功かと言われたら、諸手を挙げて成功とは言いづらいです」

起業はもちろん、楽ではない。カズワタベさんの周りのコミュニティでは、ひっそりと退場する人、1~2年でなくなる会社もある。成功した人はメディアで話す機会がたくさんあるものの、失敗する人はあまり話さないので、みんな感覚的に成功側だけを見ていることになる。

起業家のコミュニティにいると、失敗している人はいくらでもいて、今成功している人も過去に何回も失敗していることが多く、カズワタベさんの仲の良い起業家には現在5社目と言う人も...。「必要なのは体力と図太さ」

◆クックパッドの買収が意味するもの

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ウミーベは8月末にクックパッド株式会社に買収され、子会社となった。カズワタベさんにとって、これはゴールなのか?それとも道半ばのことなのか?

タケ「これは、望んでいた買収ですか?」
カズ「単独で上場まで行けたら、それはそれでいいだろうし、かといって『絶対上場するぞ!』みたいな起業家でもないので」

「絶対上場するぞ!」という強い意気込みは全然なく、むしろ世間的には上場しない会社がほとんどで、さらに言うと中小企業のままやっていたり、ウミーベのように買収されるという形を選ぶ企業もある。アメリカのシリコンバレーだと9割近くイグジットの形が買収になるという。

タケ「買収は嬉しかったですか?」
カズ「はい。特にクックパッドというのが嬉しかったです。インターネット黎明期からウェブサービスの中では圧倒的にユーザーに対して価値を提供できていて、ウミーベが将来実現したいようなサービスの形態が近く、企業のイメージもすごく良い。いろんな企業さんとお話をしましたが、文化として一番マインドが近い会社だと思いました」

同じITという共通点があるとはいえ、扱うものは釣りから料理へと変化する。クックパッドは何を彼に望むのだろうか?

カズ「買収されて、ウミーベの代表をやりつつ、クックパッドの新規事業立ち上げもやることになりました。既存事業はもちろんですが、自分のサービス立ち上げの能力を買われた部分もあったと思います」

経営者の中でも、メディアでよくみるIT系の起業家と言えば、野心に溢れ、時としてギラついた印象を与える。カズワタベさんは常に落ち着いた語り口のお兄さんという、これまで見てきたIT系の起業家とは一線を画すイメージであった。音楽大学出身の異色の経営者は今、新たな海で、新規事業という名の魚を釣り上げようしている。

【番組情報】
文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。音声で聞くには podcastで。
The News Masters TOKYO Podcast
文化放送「The News Masters TOKYO」http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:西川文野(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)

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