【アナコラム】長谷川太「小澤征爾さんと文化放送のつながり」

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文化放送メールマガジン(毎週金曜日配信)にて連載中の「アナウンサーコラム」。週替わりで文化放送アナウンサーがコラムを担当しています。この記事では全文をご紹介!

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▼2月16日配信号 担当
長谷川太アナウンサー

世界的な指揮者、小澤征爾さんが亡くなられた。
私はクラシック音楽マニアなのでどうしてもこのことを書きたいのだが、
芸術、スポーツの分野でイチローや大谷翔平や中田英寿のはるかに前に、
世界の頂点に立った日本人だ。
音楽の都ウィーンの国立歌劇場の音楽監督を日本人が務めることになるとは、
世界一のオーケストラ、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートの指揮を日本人が務める時代が来るとは、30年前に誰が想像しただろう。

実は小澤征爾さんと文化放送は、かつて深いつながりと縁があったことを知っている人は少ないかもしれない。

1959年、若き日の小澤さんが音楽武者修行のため単身ヨーロッパに旅立った。
その時に小澤さんを文化放送は援助した。小澤さんの手記(日本経済新聞 私の履歴書)
によると、小澤さんの当時の同級生の父が文化放送の社長水野成夫さんで、
ヨーロッパ行きの資金繰りに苦労していた小澤さんに相談された水野社長は、
「本気なんだな」と念を押して、小澤さんの援助をして背中を押した。
後に世界的な指揮者となった小澤さんはその縁もあったのだろう。
日本に帰国すると一貫して日本フィルハーモニー交響楽団を指揮した。
日本フィルはかつては文化放送の専属オーケストラで、小澤さんは首席指揮者を務めた。いわゆる「N響事件」の後、小澤さんが日本フィル(後は新日本フィル)以外の日本の常設オーケストラを指揮したことはほとんどないと思う。
1970年代 文化放送には「東急ゴールデンコンサート」という番組があり、
公開録音という形で、日本フィルの演奏が毎週放送されていた。
1972年3月の番組最終回の公開録音で指揮を担当したのが小澤さん。曲はベートーヴェンの交響曲第5番。この音源が文化放送に残っており、ずいぶん前に記録保存所でDATの形で残っていたこの演奏を聴いた私は大げさではなく腰を抜かした。
こんなに瑞々しいベートーヴェンは聴いたことがないし、特に第3楽章以降のリズムの取り方が独特で、他では聴けないものになっており、何より小澤さんのパッションにオーケストラが食らいつき、逆に指揮者をも煽り立てるような盛り上げ方がたまらない。
さらに当時は当然AMラジオはモノラル放送だが、この音源はステレオで残されており、
この時代の文化放送技術の誇りと志の高さも感じる素晴らしい音質だ。

この音源がこれから先、日の目を見る可能性がほとんどないのは残念だが、
長い歴史を持つ文化放送には実はこのような貴重な音源が多数残っている。

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