可愛い一人娘。お金を遺すベストな方法を、金融の専門家が考えます(おとなライフ・アカデミーWEB)

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今を楽しく生きるおとな世代のための情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」。
残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、暮らしにまつわる様々な事柄を語り合います。

この連載では、人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2021」で話した内容をもとに大垣さんが執筆した、ここだけのエッセイを掲載中。
ラジオと合わせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。

2021年5月29日の放送は、子供に遺すお金について質問が届きました。生前贈与をするべきか、それとも自分が亡くなってから相続をしてもらうか。一人娘にどうやってお金を遺せばいいのか、悩める「ばばちゃん」さんですが・・・。

娘に遺すお金、生前贈与をするか、相続税を支払ってもらうか・・・悩みます

今回の放送は、子供に遺すお金についてリスナーメールが届きました。

大して財産があるわけでもなく、ごく普通のサラリーマンの妻です。
娘が一人おり、すでに独立しています。
生前贈与と、亡くなってから相続税を支払うのとでは、どちらを選んだら良いのだろうと考えるような年になりました。同じ歳の大垣さん、教えてください。

(千葉県市川市 ばばちゃんさん)

結論から言いますと、遺されるお金によっても変わってくるとは思いますが、基本的にはどちらを選んでも、支払う税金に大きな変化は出ないと思います。

ばばちゃんさんの場合、相続税は3600万円まで基礎控除があります

ともあれ、まずは、ばばちゃんさんがどれぐらいの財産を残される予定があるのかを把握しておくと良さそうですね。

というのも、相続でお金を遺す場合、3,000万円+600万円×(相続人の人数分)は基礎控除として、税金がかからないのです。
ばばちゃんさんの場合はお子さんがお一人なので、3,600万円までは基礎控除として、非課税になるわけですね。

ばばちゃんさんが遺される財産は、現金や有価証券、不動産、宝石、車などさまざまな種類がありますね。全ての財産を足し合わせた額が3600万円を超えない場合は、そのまま相続をしてしまっても良いかもしれません。

家と土地の価格だけは事前にチェック?!

ただし、持ち家に住まれている場合、お持ちの家と土地の価格は把握しておいたほうが良さそうです。

たとえば、お金は1円も残せなかったけれど、土地だけは遺した方がいらしたとしましょう。

この土地にかなりの価値があって、5000万円程度の査定額が出た場合、この方のお子さんが一人っ子だった場合、非課税の額を引いた1400万円に対して税金がかかることになります。

税金が払えず、かなり困った状況に置かれる方もそれなりの数いらっしゃいますので、事前の備えが必要かもしれませんね。

生前贈与の額と相続税の額を同程度にできる制度があります

さて、ばばちゃんさんがもしも「自分が元気なうちに、相続をすませておきたい」と思われる場合は、それをサポートするための制度「相続時精算課税」があります。

この制度を適用して生前贈与を行うと、最大2500万円までの額は非課税となり、2500万円を超えた分については一律で20パーセントの税金を支払うことになります。現金だけでなく、有価証券や不動産、宝石、車など、あらゆる財産が贈与できます。

ばばちゃんさんが亡くなられた際には、事前に贈与した額と、亡くなられた際にばばちゃんさんが持っていた財産を全て足し合わせた額に対して課税が行われます。こちらも、3600万円までであれば非課税になります。

節税にはならないかもしれませんが、自分が元気なうちに相続をすませられるので、自分の死後に娘さんがトラブルに見舞われる心配がなく、安心して老後が過ごせそうです。

生前贈与を一括で行うと、かなり高くつくかも

ちなみに、この特例を使わずに、一括で生前贈与をするのはあまりお勧めできないかもしれません。
というのも、贈与で非課税になるのは年間で110万円まで。それを超えると、非常に高い税金がかかってしまうのです。

具体的にいうと、200万円以下の贈与で10パーセント、3000万円以上は55パーセントの税金がかかります。

ですから、たとえば310万円を生前贈与した場合、税金は非課税の110万を引いた200万円に対して10パーセント、つまり20万円かかるわけですね。

一方の相続税は、相続財産から非課税枠を引いた額が1000万円以下のときに10パーセントの課税がなされます。最大税率の55パーセントがかかるのは、相続の額が6億円を超える場合。。生前贈与に比べて、かなり緩やかな税のかかりかたですよね。

さらに、最初に書いたとおり、相続税の非課税枠は3,000万円+600万円×(相続人の人数分)。
つまり、相続で、生前贈与と同じように310万円を遺した場合、税金は一銭もかからないことになります。

一括の生前贈与と相続なら、だんぜん相続のほうが「お得」なのですね。

一括での生前贈与、税金が高くなる理由とは

なぜ生前贈与を一括で行った場合の税金が高いのか。それは、税務署はどちらかといえば、相続でお金を遺してほしいからです。

税金が一番徴収しやすいのは、その人が亡くなった時です。戸籍が動いたりで、必ず税務署に連絡がいきますからね。

一方、生前贈与は捕捉がしづらく、「取りこぼす」可能性も増える。
そういうわけで、生前贈与を思いとどまらせるために、税額が上がるようにしているのです。

遺すお金を考えるよりも、お金が残るか考える時代に?!

さて、色々お話したのですが・・・。

ばばちゃんさんに是非お伝えしたいのは、今の時代、相続するはずだったお金を、亡くなるまでに使い切ってしまう可能性もあること。

日本の女性は現在、二人に一人は90歳以上まで生きる統計が出ています。
もしかしたら生活する中で、遺そうと思っていたお金をご自分の生活費として使わざるを得ない場面も出てくるかもしれません。

残間さんがラジオ内で「いきいきと、楽しく使い切りましょう」とおっしゃっていましたが、私も、そういう時代になってきていると感じます。
それに、子供としても、親が楽しく老後を過ごしているほうが、むしろ嬉しいかもしれませんよ。

そんなわけで今回は、子供に遺すお金について考えてみました。
「ばばちゃん」さん、メールありがとうございました。

■お知らせ

「移住・住みかえ支援機構(JTI)」では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった家をJTIが借り上げ、入居者がいない空室時も毎月賃料をお支払い。
また、皆さまの大切な我が家をケアするパートナーとして、入居者トラブルにも責任を持って対応しています。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
カウンセリングやご相談は無料。資格を持ったスタッフが、皆さまの家についてしっかりとお話をうかがいます。
制度についての詳しい情報は、「移住・住みかえ支援機構(JTI)」のサイトをご覧ください。

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