『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』「正しい介護」は目指さない。太田差惠子さんに聞く、遠距離介護の秘訣

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』「正しい介護」は目指さない。太田差惠子さんに聞く、遠距離介護の秘訣

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

2022年の4月2日放送では、ゲストに介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんをお招きしました。放送の内容を記事に編集しなおし、前後編でお届けします。

後編はこちら:女性の半数が90歳まで生きる?! 太田差惠子さん、人生100年時代の介護について教えてください(大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ)

太田差惠子さんプロフィール
京都市生まれ。
介護保険が制度化される以前、1990年代から「介護は親のお金を使う」「介護離職はなるべく避ける」など、人生100年時代に無理なく介護を続けるための情報発信を行う。
著書多数。最新刊は、お笑いコンビ「メイプル超合金」安藤なつさんとの共著『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』(カドカワ、2022年)

 

遠距離介護のスペシャリストをゲストにお迎え

鈴木 きょうは、ゲストに介護のスペシャリスト、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんをお迎えしています。

太田さんはファイナンシャル・プランナーで、また、遠距離介護の情報交換の場・「NPO法人パオッコ」の理事長でもいらっしゃいます。

太田さん、よろしくお願いします。

太田 よろしくお願いします。

介護離職、実は大垣さんも経験者です

鈴木 「介護離職」という言葉が一般的になってきていますが・・・。
大垣さん、残間さんの身近に、介護のために人生が大きく変わったという方はいらっしゃいますか?

残間 とても多いです。親兄弟だけではなくて、最近私の周辺では、配偶者の介護も始まってきていて。
やっぱり、介護をしていると、自分の思ったように人生の舵を取れる方は少ないですよね。

大垣 私の場合は「介護転職」かな。
実際に介護を担うというよりは、お金がきつかったので。
私は長男なので「介護に関するお金は長男が持つものだ」という意識がありましたから。

残間 大垣さんの世代でも、そういう価値観はありましたか。

大垣 強くありました。

介護が始まる40代・50代は、自分のことだけでも精一杯な人が多い時期

太田 大垣さんのように「介護は子供がすること」と思っている人は非常に多いです。お金の面でも、実際のケアでも。
でも、実際問題、介護が始まるのは40代、50代でしょう。

残間 一番大変な時期ですよね、育児や仕事で。

太田 そうなんです。それに、今は親の介護にお金を使えたとしても、いざ自分が介護を受ける段になったら、お金が足りなくなってしまうかもしれません。

介護について何も知らないまま介護に直面する人の多さ

太田 私は1990年代から30年以上、介護についての取材を続けているんです。

そこで実感したのが、多くの人は、介護が始まった時点では、介護についての知識がほとんどゼロということ。
たとえば、介護にまつわる最初の相談窓口は「地域包括支援センター」ですが、それを知らない人も多い。

大垣 どこに相談に行けばいいかすら分からないんだ。

太田 はい。ですから、たとえば親が急に倒れて入院したとしますよね。
めでたく退院になったはいいけれど、どうやら一人で生活することは難しいらしい、とお医者さんから聞かされる。
じゃあ、どうすればいいんだろう・・・ということで、そこで初めて、バタバタと介護が始まっていく。

残間 「誰も親の面倒を看る人がいないから、仕事を辞めざるを得ない」と、退職を決意される方も多いですよね。

介護離職は、経済・精神・肉体へのトリプルパンチ

太田 私は、仕事と介護の両立を目指すことが大事だと思っています。

というのも、介護離職は、経済的なダメージもそうですが、実は「精神的」「肉体的」にもダメージがあるんです。

厚労省のデータでは、介護離職を経験した方のうち、精神面では約64パーセント、肉体面では約56パーセントの人が、負担が増したと回答しています。

太田さんは遠距離介護の提唱者

大垣 仕事と介護の両立を目指すというお話でいうと、太田さんのご専門は「遠距離介護」ですよね。
介護を必要とする親とその子供が、別々の地域で暮らす状態ということですが・・・・。

太田 はい。実は、遠距離介護という言葉は私が作ったんですよ。

大垣 そうなんですね! 遠距離介護って、同居での介護と比べて何か違いがあるのでしょうか。

子供の家に親を呼び寄せての介護は、うまくいかないケースが多い

太田 そもそも私が「遠距離介護」を提唱し始めたきっかけの一つに、親世代と子世代の意識のギャップに気づいたことがあります。

親の介護が始まったとき、多くの子供がまず最初に考えることは「Uターン介護をするか、親を自分の家に呼び寄せるか」なんですね。
で、仕事や育児の都合上、どちらかといえば親が自分たちの住まいに引っ越してきてほしい、と考える方がそれなりの数でいらっしゃる。
その一方で、親側は・・・。

大垣 子供の住んでいる地域に引っ越すなんて、無理ですよね。

残間 自分で築き上げてきたコミュニティもありますし、そもそも生活のスタイルが違いすぎます。

太田 そうなんです。

私が取材をしてきた中では、親を子供側に呼び寄せた場合は、うまくいかなかったり、不満が残るケースのほうが多いと感じています。
もちろん、うまくいくケースもあることは確かですが・・・。

親子ともにハッピーでいられるための選択肢

太田 そこで考えたのが遠距離介護です。
一緒に住んでうまくいかないなら、いっそ、お互い今の生活を維持したままでもいいじゃないかと。

もちろん、入浴や排泄、食事の介助については、誰かがサポートをしなければいけませんが、そこは、プロにお任せできます。
もちろん自分たちでできる範囲であれば、負担してもいいわけですし。
もしくは、施設への入居も視野に入れることがあるかもしれません。

大垣 一緒に住めないことを、後ろめたく思う必要はない、と。
同居介護を重視しすぎるあまり親子どちらもが不幸になるより、むしろ生活の質が上がる家庭も多そうです。

介護は、暮らしのマネジメント

太田 私は介護をマネジメントと捉えることを提案しています。

介護はいつ終わるか分かりません。だからこそ息切れせずに続けられるよう、状況を観察して、環境を整えることが必要だと思うのです。

たとえば、遠距離でい続けるという選択も一つの「マネジメント」ですよね。

それから、

親に何ができて、何ができないのか。
どんな資産を持っているのか。
どんな制度を受けられるのか。

そういったことを観察し、それにまつわる知識を身につけていけば、お金と体力を注ぎ込んだり、介護離職をしたりせずとも、案外うまくいくケースも多いのです。

家を所有している親世代なら、マイホーム借上げ制度を検討することも

大垣 ちなみに、太田さんは著作の中で、私が代表理事を務める「一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)」「マイホーム借上げ制度」をご紹介くださっています。

太田 はい。親の施設入居等が決まった方のために、自宅を現金化することで、介護資金を捻出するための一方法として紹介しました。

今の親世代は、預貯金はなくても、自宅は所有している方が多いですから。

大垣 施設入居が決まってマイホーム借上げ制度を利用される方は、それなりの数でいらっしゃいます。

制度を利用してご自宅を賃貸に出された場合、一人目の入居者が決まって以降は、空室が発生してもJTIから賃料が支払われます。

家の条件によっては、家賃で施設の料金をほぼ払えるケースもあったりしますから、施設入所を考えていらっしゃるご家庭にはぜひご検討いただきたいですね。手前味噌ですが・・・。

***

記事の後編では、太田さんの最新刊『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』についてお話をうかがいます。

後編はこちら:女性の半数が90歳まで生きる?! 太田差惠子さん、人生100年時代の介護について教えてください(大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ)

太田さんの最新刊、発売中です

太田差惠子さんと安藤なつさんの共著『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門』は、カドカワより税込1650円で発売中です。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ

パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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