ロバート キャンベルが読み解く、アメリカ議会でのチャールズ国王スピーチの「一滴の毒」

ロバート キャンベルが読み解く、アメリカ議会でのチャールズ国王スピーチの「一滴の毒」

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フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄ラジオマガジン」(文化放送)。4月30日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの日本文学者・ロバート キャンベルが、昨日アメリカ議会で行われたイギリス・チャールズ国王のスピーチを読み解いた。

ロバート キャンベル「僕はアメリカ生まれアメリカ育ちで、王制とか、国王とか女王には興味がないっていうか、興味がないわけじゃないんだけど、やっぱりこう、政治としては民主主義・共和主義っていう前提で育っているわけですけれども。
昨日、アメリカの議会で、イギリスのチャールズ3世国王がスピーチをしたんですよね。それを聞いて僕がつくづく思ったのが、やっぱり共和政治というか、民主主義的な手続きで政治家を決めるということは、その政治家は当然投票によって選ばれたり落ちたりするわけで、勝ち負けを常に考えながら言動をしていくわけです。
それとは別のベクトルで、王様であるとか、あるいは日本で言えば天皇ですよね、皇族であるとか、その国の歴史や伝統ということを、勝ち負けとは関係なく、権力じゃなくて権威という立場から俯瞰できる存在があるということが、やっぱり大事だなっていうことをつくづく思いました。
特に今、トランプ体制の中で、政治的な暴力のその渦の中に、どんどん飲み込まれていくような状況の中で、非常に高所から、そもそも民主主義って何なのか、あなたたちの国、我々の国、つまりイギリスとの関係はどうなのかということを述べる、あの時間があって、とっても僕は聞いててスーッとしたんですね」

武田砂鉄「はい」

キャンベル「『チャールズ3世が王室外交でトランプに王手をかける』と題して、昨日のそのスピーチを、私が、自分なりにですね、ちょっと翻訳したんですね。で、翻訳したので、それをちょっと参照しながら、考えたことを説明をしていこうかなって思うんですね。
で、一つ、性格付けっていうか、このスピーチはもちろんイギリスの貴族、王室の方が語るわけですから、皮肉たっぷりで、すごくおしゃれないろんなジョークを交えながらではあるけれども、一方では物凄く意味深な内容を持っていたわけですね。
つまり陰に陽に褒め称えながら、歴史的にも議会民主主義を主導してきた国のリーダーとして、これまでにはないほど、しかもトランプ大統領が目の前にいるわけですね。もう近距離でトランプ流のポピュリズムを牽制をしているわけですね。
そもそも、この前提といいますか、基本設定としては、イギリスとアメリカは今すごくやっぱり深い亀裂が、走ってるわけですね」

武田「はい」

キャンベル「イギリスでは一般市民は、首相のスターマー氏が、先月あるいは先々月から、アメリカがまあ勝手に選んだ戦争に、まあ巻き込まれるまいぞっていうことを誓っていて、トランプ大統領がそれに対してイギリスの空母を『おもちゃにすぎない』とか『ダメだ、弱腰だ』とか、完全にバカにしてるっていうことに憤慨してるわけですね。
その中で、ある意味では最悪のタイミングで、国王と女王、まあ女王がアメリカを歴訪に来ているわけですけれども、それはもう決まってるわけですから、スピーチをそこで作ったわけですね。
で、その国王であるチャールズ3世が、一つ反駁をするというのかな、こう批判的に捉えたのが『アメリカ例外主義』。
『アメリカはやっぱりエクセプショナル、唯一の、光る丘の上の国だ』っていうことは、これは特に戦後からずっと言われていまして、先進国としては基本的に、道徳的に自分たちは正しいという、まあ唯我独尊的なそういう姿勢、思想ということを、『もうちょっとそこは考え直した方がいいんじゃないか』っていうことを言おうとするわけですね。
で、あの、最初からジョークをかますんですね。『私たちの国としての運命は、互いに結びついています。(19 世紀の詩人・作家の)オスカー・ワイルドが言ったように、私たちは今やアメリカと本当にすべてを共通していると言えます。ただし、もちろん言語を除いてですが……」

武田「……(てんてんてんてん)(笑)」

キャンベル「そう。これちょっと、通じにくいかもしれないですけど」

武田「通じにくいですよね(笑)」

キャンベル「つまり、イギリス英語とアメリカ英語で言えば、イギリス英語の方がずっと上だと。で、オスカー・ワイルドが100年前にそれを言ってる、ということ。私たちはほとんど一緒だ、でも言葉は違いますよね、っていう、凄い強烈な皮肉を言ったんですけど。
考えてみると、冒頭、両議会の冒頭で、アイルランド出身のクィア(性的マイノリティ)な詩人オスカー・ワイルドは、同性愛者であり、そのためイギリス政府に逮捕され、牢獄に入れられ、そのこともあって40代で亡くなっていくわけですけれども、よりによってっていうんでしょうか、冒頭でオスカー・ワイルドというアイルランドのクィアな詩人のアメリカをちょっと揶揄する言葉を入れるっていうこと、僕は聞いた時に『おやおや』っと」

武田「それはまあ、ジョークというよりも皮肉、批判とか」

キャンベル「皮肉であり、でもそれは目の前にいる人たちが、そわそわするというか、すぐに反応するようなものではなく、で、やっぱり上手っていうか、後で文字として考えて、あるいは動画を見ていくとじんわり効く。
『あれは一滴の毒だよね?』っていうことを感じるわけですね。
そしてそこから『私たち両国は、悠久の歴史によって結びついている』ということで持ち上げて、しかし実はそこで強烈なフックをかけてくるわけですね」

この後も、イギリス国王チャールズ3世によるスピーチの内容や真意を、ロバート キャンベルさんが詳しく解説しています。気になる方はradikoのタイムフリーでご確認ください。

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