日本の平和は誰が守ったのか。ロバート キャンベルが語る国家理念と歴史認識

日本の平和は誰が守ったのか。ロバート キャンベルが語る国家理念と歴史認識

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フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄ラジオマガジン」(文化放送)。6月11日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、ウクライナでの取材を終えて帰国した日本文学者・ロバート キャンベルが、「国のイメージと歴史教育が生む分断」について語った。

ロバート キャンベル「先週、ウクライナから帰って来て翌朝、ここで報告させてもらったんです。リスナーからメールがあって、それに対して僕が“戦後日本の平和が、平和憲法と日米同盟によって守られてきた”と言ったと思うんです。
その直後にX(旧Twitter)の投稿でこういう言葉が寄せられていました。
“戦後の日本の平和が米国に守られてきたみたいな言い方は違和感あり。ロバート キャンベルともあろう人が”とあるわけです。
僕は気づかされることが多いから、批判的な内容であってもコメントをもらえることはすごく嬉しいことですけど。想像するにこの方は“歴史の中で日本は、平和を自律的に保ってきた。世界平和の貢献に寄与してきた国家”というイメージ。経済発展を実現することによって、豊かな生活の中で平和を実現した、という歴史的な認識を持っているかもしれない。
私はそれを完全に否定するわけじゃないけど、日本の安全保障の基本は専守防衛であって、他国を圧倒する攻撃的な軍備は持たないわけで。その部分はアメリカの軍事力に依存してきたことが、歴史的な事実なんです。
色んな問題や課題はあるにせよ、歴史的な事実に対して“違和感あり”というのは、どこから来てるのか? そこから国のイメージと歴史。歴史の中から国のビジョンみたいなものが生まれるもので、面白いなと感じたわけです」

武田「はい」

キャンベル「日本がどういう国なのか、というイメージ作りは色々あって。僕が専門にしている江戸時代は鎖国時代で、他国が目の前にいるわけではないので、自ずから日本がある。だから自己定義をしなくても良かったわけですよ。
国語学者の本居宣長などが“もののあはれ”など和の精神を、日本の骨格だと言うわけですけど。幕府の政策にそれが反映されることはないわけです。
近年だともちろん全然違っていて、20年前の第1次安倍内閣で安倍さんが提唱した“美しい国、日本”。これが一つの国家の信念というかビジョンと言えると思うんですけど、その中に“伝統と自然の重視”とか“規律と自律の精神を持つ国”ということが中心にあって、そこから教育基本法の改正とか、防衛庁を防衛省に昇格するとか、実際に政策の基盤になっていたということがあるわけですよね」

武田「ええ」

キャンベル「英語で、こういう国家理念のことを『creed』と言うんです。信念とかビジョンとして訳しますけど、このcreedの在り方についてアメリカではすごく議論されているわけです。
アメリカ人は、自分の国がなぜ建国されたか完全に一致したことは一度もなくて。その議論のなかで、家族を分断させたり、19世紀には血みどろの内戦に発展することもあったし。しかし19世紀から20世紀にかけて、一つの国のビジョンに結集するわけです」

武田「はい」

キャンベル「先日、明治維新の時代の直後のアメリカで使われた教科書を読んで、こういうことが書かれていたんです。“天の摂理によってこの大陸には民主主義政府の模範が見られるように定められた”と書かれていて、それは“人民の、人民による、人民のための政府”を意味するということです。
つまり神様の思し召しで民主主義国家を作って世界に模範として拡張していく、歴史学の用語でいうと『マニフェスト・デスティニー』。自分たちの民主主義を世界に広めるということが、アメリカの一番の根本にあるビジョンなんです。
じゃあ実際、実現しているのか? その民主主義が誰の目線から民主主義か? ということは、1970年代くらいから問われていまして。まずは奴隷制度を前提にした民主主義であり、参政権は土地を持った白人男性しか投票ができないし政治家になれない。その中での平等とか機会の均等化は誰目線によるものか? ということになるわけで、歴史が書き換えられるんです」

武田「はい」

キャンベル「ここから歴史の話なんですけど、アメリカでは90年代から“誰が歴史を書くか?”ということがすごく問われていて。ブッシュ大統領の時代に、その委員会を作ってガイドラインを作らせようとしました。しかし、あまりにもアメリカの歴史を否定するようなものになって、保守層から反対があり、結局ガイドラインは導入されなかったんです。
結果どうなったかというと、小学校から高等学校のなかでは、この20年の間に歴史が教えられなくなってしまった。“誰も触れたくない危険な分野”ということで時間数が減っているわけです。
その国のイメージを人々が共有する基盤が歴史教育だと考えると、今のトランプ政権のなかでの分断は、けっこう長い経緯があると分かるような気がするんです」

ロバート キャンベルさんの「国のビジョンと歴史教育」の話、まだまだ続きます。気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください。

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