日本代表の熱戦を振り返る~了戒美子 現地カタールよりレポート

日本代表の熱戦を振り返る~了戒美子 現地カタールよりレポート

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FIFAワールドカップカタール大会。

 

決勝トーナメント1回戦でクロアチアと対戦した日本代表は、延長前後半でも決着をつけられずPK戦で敗れてしまいました。4度目の挑戦で「新しい景色」ベスト8進出を目指した日本代表でしたが、やはりベスト16の壁は高かったと言わざるを得ません。

文化放送では大会期間中、現地カタールで取材するドイツ在住のサッカージャーナリスト了戒美子さんが随時レポート。

今回は現地カタールで日本戦4試合を見て、取材した了戒美子さんが日本代表を総括しました。

 



 

 

 日本代表の戦いが終わりました。すでに代表チームは解散し、一部の選手は日本に帰国。成田空港に降り立った様子を各種報道でご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 

 

 決勝トーナメント1回戦クロアチア戦は、延長前後半でも決着がつかずPK戦で敗れてしまいました。

 

 

 涙にくれる選手たちを見ているとこれまでの苦労がこのPKで終わってしまう無念さを感じると同時に、やはりベスト16の壁は高かったと言わざるを得ません。

 

 

 12年前の南アフリカW杯も同じく決勝トーナメント1回戦でPKで敗れましたが、その時とは悲壮感が違いますし、前回のベルギーに敗れて同じステージで終わったロシア大会とも違います。南ア、ロシアの2大会は敗戦後どこか「よくやった」というような空気感が漂っていました。例えばロシア大会後は長谷部誠選手や酒井高徳選手が代表引退を発表しました。今大会は本当にここを突破し、一歩先に進めると信じていたからこその落胆と涙でした。

 チームは上をめざしているものの、報道のトーンは「よくやった」「感動をありがとう」というべた褒めトーンのものが多い気がします。もしくは対極にある、SNS投稿に近いような批評性を欠いた批判記事です。でも、ここでは、冷静にかつ愛を持ってどのような反省点があったのか考えてみたいと思います。

 

 

 まず、今大会で採用した3バックについて、森保一監督はいつから具体的に考えていたのでしょうか。

 確かに9月のデュッセルドルフ遠征のアメリカ戦では試合終盤に試していました。ですが最終予選では4-3-3、最終予選が終わってからは4-2-3-1が基本布陣でした。

 ところが、ドイツ戦で苦肉の策として変更した3バック(5バックとも言います)がハマったことから、その後も使い続けることになりました。本来は1列前で攻撃的にプレーしたい伊東純也選手も三笘薫選手も最終ラインに吸収される形でウイングバックでのプレーを余儀なくされました。

 伊東選手は「こんなに急遽の3バックでなければウイングバックでももっと攻撃に関われる」と言いました。9月の時点で3バックを試合で採用していたのに、なぜこんなにも急ごしらえ感が出ているのか。11月10日から始めた現地での練習では何をしていたのか。やはり検証しなくてはなりません。

 

 

 また、やはり選手選考に立ち返らなくてはならないでしょう。

 というのは、クロアチア戦、交代枠を1枚余らせて終了しました。ベンチには伊藤洋輝、山根視来、柴崎岳、町野修斗、相馬勇紀、上田綺世の各選手がいました。ただ余らせると言うことは、交代にはふさわしくないと森保監督が感じたと言うことです。特に、1点取りに行きたい状況だったのに町野、相馬、上田の攻撃的選手はなぜつかわれなかったのでしょうか。もちろんクロアチア戦に関しては久保建英選手が発熱のためベンチ入りしなかったという不運もあります。時間が進むにつれて、久保が居ればと思った人も多いでしょう。また、大迫勇也選手がいればロングボールも入れられたのにと思った時間帯もありました。

 もちろんたらればは言い出したらきりがないものです。ですが、上記6選手のうち町野、柴崎の2選手は1試合も出場してないのです。それなら別に他の選手を呼んでいてもよかったのではと思ってしまいます。

 

 

 素晴らしい点もたくさんありました。

 急造3バックに見事に対応した選手たちの経験値、対応力は間違いなく過去の日本代表と比べてもナンバーワンでしょう。海外組が増え、ドイツやスペインにビビることもなくなったのは何よりもこのチームのストロングポイントになりました。

 また、森保一監督の愛される人柄は、チームをまとめるのに一役買いました。クロアチア戦に宿舎から出かけるときには39度の発熱の久保選手の部屋を訪れ「行ってくるよ」とのわざわざ伝えたそうです。久保選手は「移したくないから来なくて良いって思ったのですが……。ああいう人のもとに勝利は転がってくるんだろうな」と思ったそうです。勝利こそできませんでしたが、チームはそんな指揮官の人柄に救われて、彼のために頑張ろうと思うことできたようです。

 

 

 4年後、ベスト8の景色を見るために。鉄は熱いうちに叩けではないですが、早期の検証と反省とが必要になってくると思います。

 

 

 

Text&Photo

了戒美子 Yoshiko Ryokai

映像制作会社勤務からサッカー取材を開始。五輪は2008年北京五輪、W杯は2010南ア大会から現地で取材。2011年からドイツに拠点を移し、ブンデスリーグ、ヨーロッパで活躍する日本人選手を精力的に取材し、雑誌、新聞、WEB、ラジオなど媒体を問わず活躍中。

 

 

 

「ニュースパレード」では大会期間中、了戒美子さんから現地レポートを交えながら大会結果をお伝えしていきます。「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」内、平日午後5時~5時15分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

また「ニュースパレード」はPodcastでも配信しています。

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