「日芽香セレクション」『ケーキの切れない非行少年たち』中元「非常に学びになった作品でした」

「日芽香セレクション」『ケーキの切れない非行少年たち』中元「非常に学びになった作品でした」

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『中元日芽香の「な」』が、3月20日(月)午前7時に更新され、「日芽香セレクション」のコーナーで中元が触れた映画や本、漫画から生き方や考え方、カウンセリングのヒントになるかもという作品について紹介した。

今回、中元が紹介したのは、新潮社から第1巻が2020年12月9日に出版された『ケーキの切れない非行少年たち』。原作が宮口幸治氏。漫画が鈴木マサカズ氏。元々は児童精神科医として精神科病院や医療少年院で勤務された経験を持つ宮口氏が2019年7月に出版し話題となった書籍の漫画化作品。この本について中元は次のように語る。

中元「この作品の舞台である要鹿乃原少年院は、第1種支援教育課程1というところに相当して、「知的障害またはその疑いのあるもの、およびこれに準じたもので、処遇上の配慮を要する非行少年が収容されている」と説明されています。作中の要鹿乃原少年院に入院する少年達は、自身も親や学校の担任の先生も、知的障害とか境界知能であるということを知らずに少年院に入ってテストを受けて初めて判明しているケースが多いようでした。なんでか理由がわからないんだけれど、人間関係がうまくいかないなとか、授業についていけないなーって言った悔しい経験をしてきた少年が多いっていうことなんですね。この作品のテーマの一つである知的障害は、IQ70未満の人のことと、WHOによって定義されています。そして、IQ71から84の人を境界知能と呼ぶそうで。これ、なかなか聞きなじみがない言葉ですよね。境界知能というのは、知的障害とはいかないけれども、やはり社会で苦労しているのではないかなっていうふうにされる人たち。この2人を合わせるとクラスで5人に1人いるんじゃないかっていうふうに書かれていました」

作品中で印象に残ったエピソードとして、非行少年と教官の信頼関係に関するエピソードがあると中元は語る。

中元「感想から言うと、人を許すのって難しいなっていう気持ちになりましたね。物語についてちょっと説明しますね。泉君っていう少年と担当指導教官である布川教官のエピソードです。泉君は事前の検査の結果、知的なハンディがあって配慮が必要っていうふうに判断されて、この要鹿乃原医療少年院に入院しました。そこで構成プログラムっていうのを受けて少しずつ自身の過去の傷とか、自分のやってしまったことと向き合うことができて、出院する頃には布川教官に対して「やっと信頼できる大人に出会ったもう同じことはしないって約束します」っていうふうにお話していたんですね。教官も君がここに戻ってくることはないって信じているよっていう言葉をかけていました。しかし、泉君は数カ月して再び同じ罪状で医療少年院に入院してきてしまったんですね。その時の教官の切なそうな表情とか言葉っていうのが読んでいて私もつられてもどかしい気持ちになりましたね」

この教官の葛藤に首肯しつつ、中元は自分たちにも似たような経験があるんじゃないかと話す。

「こういう人を許す許せないって、非行少年と教官に限らず日常生活の中で一度二度経験がありませんかね?職業的な立場ということだけではなくて、父や母として先輩として、対等な友人としても信じていた、その人に裏切られた。それでも、相手のことを許して向き合っていかなければならないっていう。で、裏切ってしまった側にも複雑な事情があったりとかしますよね。ここで自分が見捨ててしまうと相手はますます社会とか、コミュニティから孤立してしまうかもしれない。だから自分は許すべき立場の人間であるっていうのは頭では分かっているんだけれども、それでもやっぱり自分の人間的な感情の部分で折り合いをつけて再び向き合うって簡単なことじゃないし、時間がかかるだろうなっていうふうに読んだ後私は苦い顔をして、眉間にシワを寄せて考えていたような気がしますね。他にも医療少年院の中で起こる出来事とか、出院して外に出て社会が持っている不条理さとか、彼ら彼女らの環境などでさまざまなことが知れる非常に学びになった作品でした」

『中元日芽香の「な」』は毎週月曜日午前7時に、Podcastにて更新中。
「過去の配信分もこちらから聴けます」

 

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中元日芽香の「な」

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