2018.2.25

仕事への情熱を失ったら社会とのつながりを考えよ。 NPO法人・クロスフィールズが提案する「留職プログラム」とは?

nmt事務局
0

『マスターズインタビュー』今回のお相手は、NPO法人クロスフィールズ代表理事・小沼大地さん。小沼さんは、2011年にビジネスパーソンが、新興国のNPOや企業とともに、本業を生かして課題解決に挑むプログラムを展開する、NPO法人クロスフィールズを創業。このプログラムは、留学の「留」に、職業の「職」で、「留職」と呼ばれ、これまで、多くの留職者を新興国に派遣してきた。文化放送『The News Masters TOKYO』のパーソナリティ・タケ小山が迫った。


◆起業のきっかけ


CIMG3680.JPG


タケ「起業しようと思ったきっかけは何でしょうか?」


小沼「青年海外協力隊から日本に帰って来たら、先に就職していた大学時代の友人たちが、昔持っていた目の輝きを失っていました。むしろ途上国の人たちは幸せに働いているなと思い、そこにギャップを感じました。そこで日本のビジネスパーソンに対して、仕事に対する想いを持ち直してほしいと思ったのが起業のきっかけです。」


そんな小沼さんの青年海外協力隊での舞台は中東・シリア。最初に携わったのは、人口2000人ほどの貧しい村で「牛を買ってミルクを絞って売る」、「ミシンを買って裁縫の仕事をする」といった小さな事業を始めようとする人にお金を貸す小口の融資のプロジェクトであった。


そうした事業に精を出すも、志半ばにして事業を変えないといけない状況に直面。次は、自分で仕事を探して、小学校向けの環境教育のプロジェクトを現地で立ち上げた。ゼロからのアラビア語、さらに全く見ず知らずの場所、全く知らない人たちに囲まれた中で、仕事を自分で作るという過酷な体験をした。このときなんと齢23歳。この経験から小沼さんは「どんな状況でも、なんとかなる」という自信を得たという。


タケ「クロスフィールズの起業当初は、苦戦したと聞きます。どう苦戦しました?」


小沼「留職は、大企業としては前例がないから、『他で実績を積んでから...』と断られること100社以上。1年以上、箸にも棒にもかからないという状況が続きました。」


そうした苦戦を強いられた中で、初めて賛同してくれたのが、日本が世界に誇る企業『パナソニック』。営業をするときには、パナソニック含めて数社「絶対にやってもらう!」という気持ちで意気込んでいた小沼さん。当時をこう振り返る。


小沼「パナソニックがやるといえば、ニュースになる。そうでないと、留職が波及しないと考えていました。」


◆留職について


CIMG3651.JPG


100社以上断られた末に、大企業パナソニックの成約へと至った小沼さん。記念すべき1件目の留職体験者は、パナソニックのデザイナーであった。そもそも、留職は、どのような手順で進められたのだろうか?


小沼「どういう仕事をして、どこに行きたいのか、会社としてはどんなリーダーを育てたいのか、等のお話を聞いて適切な団体をアレンジします。」


その時の留職先はベトナムのダナン。電気も通っていない場所で、「太陽光で加熱ができる調理器具」を作る団体、その団体の製造コスト削減プロジェクトに参加してもらったのだ。結果として、理論上はコストを15%下げられる試作機を製作し帰国、現地から感謝されたのはもちろんのこと、留職したデザイナーはその後、2017年に新規事業を成功させ、自分が作った製品を発表。イノベーションを起こせる人材へと成長したのであった。


タケ「留職することで全員がハッピーになると?」


小沼「現地の団体と日本の企業にWIN-WINが届けられる。これが我々の留職プログラムだと思っています。」


つまりそのWIN-WINとは・・・
現地→日本企業が持っている固有のスキル、経験が活かせる。すなわち国際協力。
企業→イノベーションを起こせる人材、グローバルに活躍できる人材をつくれる。すなわちリーダーの育成。


ということ。これまでに、約35社・135人ほどがアジア10カ国の留職プログラムに参加したという。他には、どんな事例があるのかというと・・・


留職例1:自動車メーカーの研究者inインド→、ソーラーエネルギーを使った新しい機織り機の新製品の設計。
留職例2:製薬メーカーのMR inインドネシア→薬局の立ち上げプロジェクト。
留職例3:人事担当inカンボジア→とある小さな工場の人事制度をゼロから作る。


エンジニア、営業、人事などそれぞれの専門性をいかして現地に貢献し、そしてさらに一皮むけた人へと変貌を遂げていくという。


◆仕事は『志事』だ


CIMG3669.JPG


タケ「小沼さんは、『仕事は志事だ』と仰っているそうですが、どういうことですか?」


小沼「通常であれば、『仕える事』と書いて仕事。やらなければいけないことのためにやるということですが、個人的には、働く事を通じて、『自分の想いや情熱を実現できている』(志事)と感じている人が増えてほしいと思っています。」


自分の仕事が、社会にどんな影響を与えているのか、ここに実感が持てていると、特に35歳以下の社会貢献実感に関して渇望感を持っているミレニアル世代にとって大きいのだという。


小沼「大きな組織の中で働いていると、自分の仕事が社会とのつながりを感じにくく、お客様と会ったことがないという人が結構います。これではやっぱり、モチベーションが持てなくなってしまいます。」


お客とのつながりについて、小沼さんはさらに続ける。
小沼「一方で、留職で途上国のニーズだらけの現場に行って、自分の仕事がどう生きるかパッとわかって『おお、ありがとう!君は魔法使いか!?』と言われると、自分の仕事がこんな風に役に立つのかと確認できて、小さな組織の中で、社会と自分の仕事のつながりを感じることができます。そうすると、日本に帰ってからも、社会とのつながりを想像することができるのです。」


◆リーダーシップについて


CIMG3659.JPG


タケ「小沼さんが考えるリーダーシップとは何でしょう?」


小沼「クロスフィールズとしてのリーダーの定義、つまり『どういう力が留職プログラムで身につくか』について紹介します。」


その力とは、「ゴールを描く力」・「対話をする力」・「巻き込む力」・「挑戦する力」・「やりきる力」の5つの力のことである。


小沼「例えば、巻き込む力とは、組織における権威や肩書に頼らずに、目の前の人や遠くの人を自分が進めたい方向性に向かって自然と巻き込んでいくことができる力と定義しています。」


日本で、何かを組織でやろうとすると「俺は部長だ」と肩書を盾にしており、いわば下駄をはいた状態。しかし、名刺をはく奪され、海外の奥地の村に行き、何者かもわからない状態で、人を巻き込めるか、ここでのスキルがリーダーに必要なスキルなのだと小沼さんは信じている。


タケ「リーダーシップは、どうやって育てるのがいいですか?」


小沼「世の中で、リーダーに必要なものはこの5つのスキルの他に、想いや情熱が必要です。先に、想いや情熱など、『軸』をしっかり形作ってから、スキルを育てていく、こういうアプローチをすると特に若い世代は、飛躍的に生産性が上がるのではないでしょうか。」


例えば、日立製作所では「組織を変革するリーダーを作りたい!」という想いで、留職を体験してもらっている。留職でラオスでの現地リーダーに感化されたエンジニアは、「このパラメーターが0.01おかしいんじゃないか?」と今まで言っていたのが、「この仕事は誰のために役立っているのか?ユーザーはどう喜ぶのか?」とユーザーオリエンテッド、社会にどういう価値を出すのかということで、チームを引っ張るようになったそうだ。

◆これからの社会


CIMG3672.JPG


タケ「今後の社会、どう変わっていくのが良いと思いますか?」


小沼「具体的には分かりませんが、大きなパラダイムチェンジがあるといえます。そこで、新しい価値を提示できる人が必要になり、企業の中でもそういったことを発信していく企業が必要になると思ってます。例えば、ミレニアル世代が、お金に興味がなく、違うところに価値を見出しています。これは我々世代がもがいていることの証であって、今までの価値観では幸せになれないと思っているからなんです。」


タケ「今やっていることが、これからの日本の新しい価値の在り方ということですか?」


小沼「その自負でやっています。自分たちは未来を切り拓いていると思っていますし、新しい常識や価値観を生み出す原動力になりうるとも思っています。新しいうねりが絶対に来るので、そこで留職を使ってもらいたいと思っています。」


日本は、アメリカや中国に比べて、時価総額ランキングがあまり入れ替わらない。すなわち既存の組織には、「社会性があって素晴らしい」とも言える。


小沼「既存の組織が残りながら変革していく道がいいのではという仮説を持っています。さらにこれからは一人がリーダーシップを発揮するよりは、創発的にリーダーシップが発揮されている社会の方が日本には合っているのではとも考えています。起業家のように自立した人間が、どれだけ組織の中にいるか、これが負けないために重要なのではないでしょうか。」


あなたは今、社会人になりたての頃の情熱を持ち続けていますか?そして今、行っている仕事は、社会に対してどのような繋がりがあるか考えていますか?仕事に情熱を注げなくなっている場合、『想い』を軸に今一度仕事を見直してみてはいかがでしょうか?


CIMG3677.JPG


文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。音声で聞くには podcastで。The News Masters TOKYO Podcast
文化放送「The News Masters TOKYO」http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)
こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR
パーソナリティ:タケ小山 アシスタント:小尾渚沙(文化放送アナウンサー)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)

  • URLを
    コピー
特集一覧
タイムテーブル