2018.8.15

あなたは正論を言われたら「分かりました」と言えますか?在庫処分ビジネスshoichiの直球ビジネス論

nmt事務局
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文化放送・The News Masters TOKYO『マスターズインタビュー』。今回のインタビューのお相手は、企業の在庫品などを買い取り、販売する在庫処分サービスの会社・株式会社shoichiの代表取締役社長・山本昌一さん。山本さんは大学在学中にインターネットを使ったビジネスをスタートし、経営者としての才能を開花させます。それがいかにして現在のビジネスへとつながったのでしょうか?The News Masters TOKYO、パーソナリティのタケ小山が、聞いてみた。


◆ビジネスのキッカケとお金についての考え方


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タケ「ビジネスのきっかけは、何だったのですか?」


山本「元々、鳥取大学の学生だったんですけど、当時暇でですね。夜9時になると街は、ローソンかパチンコ店しか開いていない。しょうがないから麻雀をやったけど、それも飽きてきてですね。」


時間を持て余していたところ、そこでもっと面白いものは何かと考えた山本社長。それが「ビジネス・商売」だった。その中でも目についたのは、当時出来て間もないネットオークションサイト「ヤフーオークション」。


「写真で撮った服が8800円とかで売買されているのに衝撃を受けて。」


最初は本当に売ってもらえるのか分からないため、商品を買ってみたという。商品は偽物だったが、新品の3割以下の価格で新品が買えたことに、「どういうことやねん、おかしくないか!?」とまた驚いた。


次は本当に売れるのかと思い、ヤフーオークションに自分の服を売りに出したところ、落札のメールが届き、無事にお金を手にした。山本青年は、「お金が儲かるって、こういうことなのか」と肌で実感。


ヤフーオークションへの出品→落札を繰り返し、大学生にして貯金は1000万円にまで到達。当時の大学生であれば、お金を持ったら車を買ったり、キャバクラにハマったりするものであったが、それが嫌いだった山本社長は、ひたすら貯め続けた。


「このお金は、次の戦いのための軍資金というかエネルギーになるんちゃうかと思って貯め続けたんです。」と当時を振り返る。日本では儲けることについて色々言う人がいるが、安いものを買って、高く売って儲ける。その楽しさを早くして学んだのだ。


◆在庫処分ビジネスとの出会い


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服を仕入れては、ヤフオクで売っていた大学生時代の山本社長だったが、大学生が1000万円貯められるくらいなので、柳の下のどじょうを狙い、競合が一気に増加。ライバルがどんどん増え、パイがどんどん小さくなり、徐々に稼げなくなっていった。


そんなときにプラダの商品をかなり安く売っている男性と出会い衝撃を受ける。


「なんなん、このオッサン!?なんでそんなブランドが安いん?」


決算をはじめとした様々な理由で、赤字覚悟で、かつ見えないところで商品を売ることがあるという「在庫処分ビジネス」を初めて知った瞬間だった。その話を聞いたとき、「めっちゃ面白いな」と思い、即座に参入の決心をした。


初めは営業をしてみようと考え、電話をかけたが、取り合ってもらえず。だが、断られるにはそれなりの理由があると思い、1社に対して、10回電話をかけるようにした。普通なら尻込みするところだが、当時はこう考えていた。


「毎週かけたら"オモロイやつがいる"と思われるかもしれないと思って。」


猛烈な回数の電話をかけ続けた山本社長。根負けした相手から「会ってあげるよ」と言われアポを取り付けることに成功した。変化球が苦手な山本社長は、ヤフーオークションから在庫品取り扱いビジネスに行きついた理由もその場で包み隠さず喋った。


そうしているうちに、3人目くらいで買い付けにまで到達し、その場で倉庫に連れていかれて、100万円分の在庫品を購入。それを1か月で完売させた。


「売れたんですけど、おかわりってありですか?と言うと、"ホンマに売ったん!?"となってですね。」


その頑張りが認められ、さらにこれまで以上の金額の買い付けができるようになった。話は、それだけに留まらない。業界は狭いので、アパレル販売業者の間でクチコミがドンドン拡散。いろんな人が他の会社の人に「面白いやつがいる」と話して、広がっていき、様々な会社を紹介してもらえるようになったのだ。


◆shoichi流・銀行マンとの接し方


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事業が軌道に乗るまで資金面で苦労された山本社長。当然、銀行からの融資を受けたいわけだが、「アパレルは不況業種だ」「決算書の数字が悪い」など、何かと理由をつけて銀行マンはお金を貸したがらなかった。


しかし、商売を続けていくと、「相手は言い訳で言っている」「なんかの理由で貸したくないんだな」「この役職では回答が出せないんだな」というのが直観的にわかるようになる。断られたら、そこで引き下がることなく「上の人って誰なんですか?」と聞いてみると、本社の部長だとわかった。会わせてほしいと言うも、当然拒否。


山本「"何で、会わせなアカンのですか!?"となって」


タケ「それは、嫌がるでしょ!?自分の所で話がうまくいかないんだもん。」


それだけでは、引き下がらない山本社長。「明日の朝、本社に行きます!これまでお世話になった分、ありがとうくらい言わせてくれ!」と頼んだら、最終的には逆に本社の部長が会社に来てくれた。そこで、これまでの商売の顛末を包み隠さず話した。


本社の部長は「わかった!」と言って帰っていった。「何が分かったんだ!金を貸してくれよ」と腑に落ちなかったが、翌日に1本の電話が鳴った。曰く「1億円貸すことが決まりました」と言うのだ。


タケ「借りたかったお金は1億円だったんですか?」


山本「5000万円で」


タケ「倍も貸してくれたんですか!?」


今まで、借りていた金額はここまでではなかったし、1億は大きすぎる。むしろ、銀行に縛り付けられるのではとの懸念もあったが、本社の部長の判断は「君はお金を持ってた方が儲けられるから、お金は持っておいた方がいい」というものだった。


「断られ続けて、上の人にも会わせないと言われたのに、1億...」この大どんでん返しに、タケも舌を巻く。


その本社の部長の判断は正しく、実際に1億円の融資が入ったことによって、もっとチャレンジしようと考えるようになったそうだ。最初は申し訳なさから3か月おきに、資金の細かな使い道を報告。それも、銀行的には良かったらしく、「君みたいなやつはおらん」とさらに銀行内での評価が上がった。


加えて、税金の面でも意識を変えた。自分が銀行マンだったら、どこを見るか、どこで相手が誤魔化そうとするかが分かるようになり、心配な面、例えば在庫処分ビジネスなら在庫をきれいにできるかどうか、説明できることを心掛けた。山本社長は、「在庫が1年半でさばけるかどうか」について徹底した意識をしており、「いつ来ていただいても結構です」ともアピールしているのだ。


◆ショーイチのこだわり


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一般消費者の私たちにとって、あまり身近ではない在庫処分ビジネス。仕事としてこだわっていることも、斜め上をいくものなのだろうかと思い、タケが聞いてみると、こんなシンプルな答えが返ってきた。


山本「約束を守ることですね」。


タケ「どういうことですか?」


在庫処分の仕事は約束を守らない人も多く、例えばナイキからナイキの在庫商品を買い、ナイキストアの横でナイキの正規価格の半分で売ったら儲かるがそれはカッコ悪いし、約束を守っていない。


だが、そういうことをする人がたまにいて、その人たちが在庫処分業界のイメージを著しく下げているのも事実。そのため、「在庫処分屋はどこに売るか分からないからやめてくれ」と言われることもあるというのだ。


shoichiも20年やってきて不義理をしたことがないとは言えないが、ほとんどない。約束を守るのは当たり前のことであり、長くやればそれがブランディングになる。


タケ「良いうわさは広まるのが遅いけど、悪いうわさはすぐに広まります。」


山本「信用を無くすことがもったいないと強く思った方がいいですね。」


タケ「社員に常に言っていることは?」


山本「在庫処分の会社というのは、人様が赤字を切って売ってもらう所なので、『仕入れる時も、売るときも頭を下げろ』と言っています。」


決して『買ってあげる』ではなく、『買わせてください』なのだ。一見、優位な立場にあり『買ってあげる』のイメージがあるかもしれないが、『買わせていただく』と敢えて言う。そこにはどんな思いがあるのか?


例えば、「1000円で売れる!」と意気込んで作った商品が、泣く泣く在庫になり、それを「300円で買ってやる」それは態度としてあり得ない。仕入先へのリスペクトが込められているのだ。


◆目利きのプロは、人の何を見るのか


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タケ「営業マンはどの辺を見ますか?」


山本「営業マンは商品が好きかどうかを見ます。」


商品が好きじゃなかったら営業は難しいとも語る山本社長。お客さんが「土曜日がいい」と言って「土曜日に行かなければならない」と思えるためには、商品に対する愛情が必要不可欠。山本さんは在庫・商品が大好きだから、いつでも「行きまーーす!」というノリで行けるのだそうだ。


タケ「社員はどんなところを見ますか?」


山本「正論を言ったときに"はい、わかりました"と言えるかどうかですね。」


山本社長もできていないこともあると言うが、年齢が上に行けばいくほど、反論はしたくなるもの。しかし、それについて「正論なの?」って聞いたら、正論じゃないことが多い。


例えば、「新宿から渋谷まで(特別な理由もなく、電車を使わずに)タクシーに乗った?」と言われたときに、「え!それは...」ってなる。そういうときにグチャグチャ言わず、「すみません」「乗っちゃったんです」と過ちを認めるのが一番正しい答え。そこに「もうやめろ」で済む。


山本「そこでグチャグチャ言うと『コイツ、カスやな』ってなります。」


山本さんも社長故に思いつきで話をして、部下から以前に言っていたことと違うと指摘される。その時に「すみません」というが、それが言えなくなったらもう終わりであり、「単なる老害。」とも断言する。


正論に対して、「はい」と言えないのは、自分の中にわだかまりがあって、自分のやり方で仕事をしたい人。自分のやり方で仕事したい人は、会社にそぐわない。その人のやり方が、効率がいいなら、その人のやり方になっていくが、注意してもそのやり方を貫かれたら、効率が悪いし、社員が「あれ、通るんだ」ってなる。加えて従業員から「あ、社長、ゆるいな。」って思われる。そんな、山本社長は今後、なにを見据えているのだろうか?


タケ「今後、目標は?」


山本「日本一の在庫屋になり、在庫を買いつくして、毎日メーカーの人に『山本君、ありがとう』って言われることです。売上高は現在11億、これが20~30億になったら、だいぶ買わせてもらってる。そこは多分行くと思います。」


このビジネスを始めた時に、これまでの経緯を話して「在庫を買わせてください」と包み隠さず話してスタートした山本社長。銀行へは、融資資金の使い道を細かく報告し、不義理をせず、約束を守ってブランディングして信用を勝ち取り、過ちを犯したら、言い訳をせず素直に謝る。どのエピソードにも一貫して小細工せず、直球勝負で勝ち進んできたことがうかがえる。これまでのインタビューでは、変化球で勝ち進んだ経営者も多くいて、正直真似するにも難しい人もいたかもしれない。小細工で行き詰まりを感じたら、このくらい真っすぐに思考を切り替えるのもアリなのかもしれない。


文化放送『The News Masters TOKYO』のタケ小山がインタビュアーとなり、社長・経営者・リーダー・マネージャー・監督など、いわゆる「リーダー」や「キーマン」を紹介するマスターズインタビュー。

音声で聞くには podcastで。

The News Masters TOKYO Podcast 文化放送「The News Masters TOKYO」
http://www.joqr.co.jp/nmt/ (月~金 AM7:00~9:00生放送)

こちらから聴けます!→http://radiko.jp/#QRR

パーソナリティ:タケ小山
アシスタント:文化放送アナウンサー 西川文野(月~木)/長麻未(金)
「マスターズインタビュー」コーナー(月~金 8:40頃~)

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