2027年1月3日放送 「小松左京クロニクル 『虚無回廊』特番」のお知らせ
来年の新春早々の番組へのお誘いです。未知の宇宙回廊を一緒に歩いてみませんか?
文化放送は今まで「戦争はなかった」「日本沈没」「くだんのはは」など、SF界の巨人と呼ばれた作家小松左京氏の作品をモチーフにしたドキュメンタリーを制作してきました。リスナーの皆様からの反響は我々の想像を超えるもので、さらに各番組で放送文化基金賞、ギャラクシー賞、民間放送連盟賞などを頂くこともできました。
小松左京作品には、彼自身の学生時代の戦争体験、社会に出てからの不条理、そして未来への不安から希望まで、様々な思いが込められています。SFの名を借りた社会派小説ともいえる作品たちは、国内外の多くの作家に影響を与えてきました。左京作品の最大の特徴は、細かい真実を積みあげたうえで、大きな嘘をつくということ。その代表格が今までに約500万部売れ、映画化、ドラマ化もされた「日本沈没」です。日本を沈めるという大きな嘘をつくために、日本列島の質量計算にまで挑んだ彼の学究的情熱は、阪神淡路大震災で阪神高速道路が倒壊した際、小説の中で同様のシーンが描かれていたことに気づいた専門家たちを驚愕させたエピソードでも知られています。
真実を積み上げ導き出した嘘が、真実以上に真実を語る。ディザスター小説の「首都消失」、パンデミックを予見したともいわれる「復活の日」、スケールの大きなSF作品「果しなき流れの果に」、ホラーで戦争の不条理を描いた「くだんのはは」に至るまで、我々が今を生きるヒントが与えてくれるのが小松左京の作品たちです。
前置きが長くなりましたが、AIへの期待や脅威で世界が混とんとする中迎える2027年新春の1月3日に文化放送がお届けする特別番組は、左京作品の金字塔としてSFファンたちに愛され、一方で完成を見なかった悲劇の遺作としても語り継がれる「虚無回廊」です(番組の正式タイトルはまだ決まっていません)。
作品が意味する「虚無」とは、そして「回廊」とは何なのか?左京が暗示したAIを超える存在、自我を持つ人工実存「AE」はどのような存在なのか?
文化放送はシリーズ小松左京クロニクルとして、この「虚無回廊」という作品に向き合うこととしました。深く難解な作品をベースに、我々が今直面しているAIの急速な進歩に伴う期待や恐怖を重ね合わせ、汗をかきながら読み解いていきます。
とは言っても、お正月番組です。誰もが楽しんでお聴きいただき、左京作品に少しでも興味を持って頂ける番組にしたいと思います。まだ番組制作も端緒についたばかりですので、取材や制作の過程も随時ご紹介していければと考えております。
実は今日10月15日に第1報をお送りしたのには理由があります。ハルキ文庫(角川春樹事務所)から『虚無回廊』I・II・IIIを一冊にまとめた合本版文庫が、まさに今日発売されたのです。これは2000年に刊行されたものの再刊で、SF作家、瀬名秀明さんや堀晃さんの後書きも充実した作品で、四半世紀の時を経て再び陽の目を見ることとなりました。この再刊は、当番組を企画した時点では我々は全く知らなかったことでしたので、今回のご縁を大事にし、イラストレーターみっちぇさんがお描きになった合本版の表紙を番組の「表紙」としても採用させていただきます。こちらの画像に、今後「正式な」タイトルを重ねる予定です。

©みっちぇ(亡霊工房)
謎の空間にたたずむ一人の人間。そのまなざしの先にあるものは何なのでしょうか?今、我々もこの巨大空間で戸惑う主人公の一人になって、左京探訪、未来探訪、そしてAI探訪の旅に出ましょう。
お待たせしました。この小説『虚無空間』のご紹介をさせて下さい。
地球から5.8光年も離れた宇宙に、ある日、謎の物体が出現する。人類はその正体を解明したいが、辿りつくまで何十年もかかる。そこで日本人の科学者・遠藤秀夫が10年かけて自分の分身として開発したAE(人工実存、自我を持ったAI)を代わりに派遣することになった。そのAEの名前はHE2。しかしHE2は、自分の宿主である遠藤が死んだことを知り、地球との契約を破棄して独自にSS探査を開始するのであった。
この下りはまだ序章です。その後、宇宙で様々な物語が展開されますが、さまざまな理由で雑誌連載は打ち切りとなりました。SF界の巨人は東日本大震災後の2011年に亡くなり、そして「虚無回廊」の結末は後世の人たちに託されることになりました。
もし、この小説が完成していたらどのような結末を迎えたのでしょうか?番組ではその答えを求めるのではなく、ひたすら探すことで少しでも左京の心の中に入っていければと思います。そのために様々な方々のお話を伺いたいと考えております。

撮影=佐々木隆二
作家、瀬名秀明さんです。「パラサイト・イブ」など様々なSF作品、ホラー作品で知られていますが、薬学博士でもあり、幅広い分野で活躍を続けています。小松左京への敬愛で知られ、『虚無回廊』へのオマージュ的作品「新生」も執筆。左京作品の魅力、「虚無回廊」という作品への思いを語って頂く予定です。
そして小松左京ライブラリ代表、小松実盛さん。小松左京の次男にして、左京作品の管理者であり、左京作品の研究者でもあります。毎回、文化放送の番組に制作協力を頂いています。今回は、「虚無回廊」執筆中の父左京の様子や、なぜ絶筆となったのかなどについて肉親の立場からの貴重な解説を伺います。
もうひとつ番組の欠かせない視点は「AI」です。「虚無回廊」の大きなテーマであり、今年の国連総会で主議題にもなりました。驚異的な進歩を遂げている「AI」の功と罪についても、有識者の皆様にお話を伺っていく予定です。
ご出演予定者
・栗原聡さん 慶應義塾大学理工学部教授でAI研究の第一人者
・川邉健太郎さん AIソロプレナー(AIを部下にした1人起業者)でLINEヤフー前会長
今回は「虚無回廊」の朗読役としてテレビ朝日「サタデーステーション」のナレーションなどを担当しているナレーターで声優の仮屋昌伸さんが、左京作品の世界を声で描いていきます。

仮屋昌伸さん
このほか、決定した出演者につきましては随時ご紹介していきますので、引き続き宜しくお願いします。
小松左京プロフィール
1931(昭和6)年、大阪生まれ。京都大学文学部卒。『日本沈没』『首都消失』『果しなき流れの果に』『日本アパッチ族』『さよならジュピター』『虚無回廊』など、数多くの作品を発表。日本を代表するSF作家として、SFの枠を超えて幅広い読者を獲得した。活躍は小説にとどまらず、1970年大阪万博ではテーマ館サブプロデューサーとして、岡本太郎とともにテーマ展示を手がけ、1990年の国際花と緑の博覧会など、さまざまなプロジェクトに参加した。
2011年没(享年80)