菊池桃子インタビュー「10年歩くと見えてくる世界。」

菊池桃子インタビュー「10年歩くと見えてくる世界。」

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『菊池桃子のライオンミュージックサタデー』が、7月で放送10 周年を迎えます。

番組パーソナリティの菊池桃子さんが10 年間番組を続けてきたことで感じるラジオとの向き合い方のほか、ご自身の10 年間の歩みなどについてもお話をうかがいました。

※こちらは文化放送の月刊フリーマガジン「フクミミ」2021年7月号に掲載されたインタビューです

目次

  1. 10年で変わったこと、変わらないこと
  2. 声を「音」として届ける
  3. 未熟であるからこそ学び続ける
  4. この記事の番組情報

10年で変わったこと、変わらないこと

─ 菊池さんにとって『ライオンミュージックサタデー』は、どんな場所なのでしょうか?

菊池 ラジオには10 代の頃から出演してきましたが、当時から私はラジオ局が好きでした。私にとってリラックスできる場所です。番組を10年も続けてくると、スタッフの皆さんそれぞれがご結婚なさったり、お子さんが生まれたりと、いろいろなライフイベントを迎えてきました。番組の打ち合わせでもそういった身のまわりのことを交えながら話すので、スタッフの皆さんとの心の距離が近くなって、チームワークも良くなります。そういったチームワークの良さが、リスナーの皆さんにも番組の雰囲気の良さとして伝わっているといいなと思っています。

─ ラジオという「声」で伝える媒体に出演する際に意識していることを教えてください。

菊池 まずは喉の調子を整えることです。花粉症の時期もあれば、風邪が流行る時期もあるので難しいのですが、その部分では自分でもかなり高いハードルを課して予防に努めています。
この番組を始めるまでは、年齢なりの声を出していきたいと思っていました。例えば40 代からは、少し落ち着いた大人びた声で話したいとか。でも、10 年間この番組を続けてきて思うのは、リスナーの皆さんがいつも同じ曜日、同じ時間に聴いてくださるのだから、私の声もあまり変わらないほうがいいのかなと。自分の声というものを無理して変える必要もないのかなと思うようになりました。
若い頃から幼い声だとか、舌足らず気味の喋り方だとか言われてきたことに関して、ちょっとコンプレックスを抱いていました。大人になったら年齢なりの大人びた声になりたいと思っていました。でも、持って生まれた声帯や声質というものはなかなか変えようがありませんから。人生経験が長くなってきて、心のほうが変わってきているぶん、小手先のテクニックで声をどうにか変化させようとは思わなくなりました。

声を「音」として届ける

─ 番組タイトルにもあるように「音楽」を中心とした番組ですが、菊池さんご自身の音楽的なルーツはどういったところにあるのでしょうか?

菊池 私自身は5 歳でピアノを始めたこともあって、実はチャイコフスキーなどのクラシックに興味を持ったところが音楽的なスタート地点です。オーケストラではそれぞれの楽器が音を出しますが、デビューしてから歌うようになったポップスでも同じように考えていて、曲に溶け込む一つの楽器として私の声を重ねる感じで歌っていました。ラジオのときも「声」というよりも、番組の中の一つの「音」として喋っている感覚があります。例えば、外国のラジオが聴こえてきたとき、知らない言語で意味はわからなくても、聴こえてくるパーソナリティの声や音楽でなんとなく伝えたいことが想像できると思うんです。そういった意味で、ラジオから出てくる「色」のようなものは、まさに音楽に近いものだと思っています。

─ 声も音の一つ、ということですね。

菊池 ですので、深夜の番組を担当させていただくのであれば、もっと違う「音」を出していると思います。この番組は土曜日の朝の放送ですので、その時間帯に適した声とテンポでお届けするように心がけています。

未熟であるからこそ学び続ける

─ この10 年間を振り返ると、ご自身の人生の歩みという部分では大学院を修了されましたし、その学びを生かして母校( 戸板女子短期大学)の教壇に立つようにもなりました。

菊池 私はいつも自分に足りない穴を見つけると、そこを補完しようと努力するタイプなんです。仕事でも日常生活でも、自分に足りないところにふと気づいてしまったときに勉強の意欲が湧いてきます。たぶんそれは、自分が未完であるというか、未熟であることを意識している証でもあるのかなと思うのですが。私は幼い頃から性格的に自信がないところがあるんです。ただ、自信がないことって、もしかしたら人を伸ばすためには、すごく良い要素なのかなとも思います。大学の教員は9 年目になりましたが、社会学系の分野ということもあって学生に伝えるデータなども毎年少しずつ違ってくるので、自身の学びを止めるわけにはいかないですし。

─ 最近では、YouTubeラジオも開設するなど、新たな分野にもチャレンジしています。

菊池 コロナ禍が深刻になりはじめた頃に、連続ドラマの撮影が完全にストップしたんです。この先どうなってしまうんだろうという状況の中で、人々が憂鬱になっているとき、ほんの少しでも優しい時間を作りたいと思ってYouTubeを始めました。企画意図としては「ミドルエイジの癒し」なんですけど(笑)、実際に始めてからは子供にいろいろ教わりながら、若い人たちの歌をカバーしてみたり、ボーカロイドの曲を歌ってみたりしていることもあって、20 代前後の若い方も多く聴いてくれているようで、自分でも驚いています。
この1 年間のコロナ禍に関して言えば、ラジオでもリスナーの皆さんに寄り添いたいと思って番組を続けてきました。それは、あえて元気にふるまったり、逆に深刻になりすぎたりということではなく、いつもと同じものがそこにあると人は安心するのではないかということです。「土曜日の朝の文化放送に行くと、いつもあの人たちがいるぞ」と。変わらないことを意識することが、皆さんに寄り添えることなのかなと。あまりにも周りの世界が変わりすぎているので。この1 年間、そんな思いがありました。

─ それでは最後に、10 周年という節目を迎えて、今後に向けたメッセージをお願いします。

菊池 次も第何回放送というキリ番(キリのいい番号)や、何周年というような、そんな節目がまた迎えられたらいいなと思います。
この番組は、少人数のスタッフでお届けしていますが、皆さんからいただくお便りとリクエストに支えられている部分がとても大きいです。これからもぜひ番組の応援をお手伝いいただけたらありがたいです。

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