経済評論家の加谷珪一氏「年内にGDPをコロナ前水準まで回復することは、ほぼ100%無理」

経済評論家の加谷珪一氏「年内にGDPをコロナ前水準まで回復することは、ほぼ100%無理」

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内閣府が15日発表した今年7月から9月期のGDP(国内総生産)の速報値は物価変動の影響を除いた実質で前の期から比べて0.8%マイナス。この成長が1年続いた場合の年率換算では3.0%のマイナスとなった。マイナス成長は二期ぶりで、これにより、今年中にGDPをコロナ前の水準に戻すとする政府の目標の達成は厳しくなった。
景気の悪化は、私たちの生活にどのような影響をもたらしているのか?
経済評論家の加谷珪一氏が「ニュースワイドSAKIDORI!」で解説した。

加谷氏「今回の速報値は悪くなるだろうと予想していた。しかし、その予想以上に数字が悪い。しかも中味を見ると、内容が良くないため、非常に心配している。一番良くないのは、マイナスになっている要因が緊急事態宣言によるものだけではないと言うことだ。緊急事態宣言が続いたので消費が低迷しているという見解が多いが、これは間違い。今回の落ち込みの最大の要因は、耐久消費財のマイナスだ。パソコンやテレビと言ったコロナ禍における巣ごもり需要が、外食関連の落ち込みを何とか吸収してバランスを取ってきたのだが、それが、巣ごもり需要一巡したためなくなってしまった。テレビやパソコンは一度買ってしまえば、しばらく買い換える必要はない。つまり巣ごもり需要は一過性のものだった。企業は在庫を抱えてしまい、その影響で設備投資を絞ってしまった。この状況がマイナスを生んでしまった要因だ。これは企業が先行きを相当悲観的に見ている結果だ」

最近では石油を始め、パンやパスタ、食肉、食用油などの食料品、そして電気やガスの料金と、値上げが続いている。これについては?

加谷氏「短期的に見るとコロナからの回復期待で注文が殺到しているためと言われているが、理由はそれだけではない。構造的な要因があって、中長期的にも値上げは続くと見ている。具体的な要因としては、日本が慢性的な低成長であること、新興国の成長ぶりが非常に顕著であるためにモノの奪い合いになっている。さらに米中対立という政治的な影響がある。」

モノの奪い合いについて

加谷氏「高い経済成長率を誇るアメリカや中国は何とかなっている。それに次ぐのがヨーロッパ各国で、慢性的な低成長を続けている日本が一番割を食っているのが現状だ。成長率が高いと賃金が上がり所得も上がってくるのでより多くのモノを買えるのだが、今の日本のように賃金が上がらず物価だけが上がると、どうしても買い負けしてしまうため厳しい状況は続く」

日本は食料、石油や天然ガスなどのエネルギーを輸入に頼っているが、今後国民の日々の暮らしはどうなっていくのか?

加谷氏「ひと言で言うと厳しい状況だ。先ほど述べたように構造的な要因が絡んでいるので、すぐには解消しないと思われる。これまでは欲しいものは外国からいくらでも買ってこられるというのが当たり前だったが、その考えをそろそろ改める必要がある」

巣ごもり需要(=個人消費)はマイナス1.1%。一方、住宅投資がマイナス2.6%、設備投資マイナス3.8%。企業や事業体の方が悲観的な見方になっていると言うことか?

加谷氏「モノが売れなくなったので企業が先行投資をパタッと止めてしまったと言うことだと思う。これを回復するには、短期的には政府が行う経済対策にかかっているが、長期的にはコロナからの回復の道筋がどうなるのかということ。今後の道筋が明るくならないと、消費者は財布のひもを緩めない。やはり長期的なビジョンがカギとなる」

ヨーロッパはロックダウンを実施し、かなり厳しい経済活動制限を行ったにも関わらず、日本ほどのGDPの落ち込みはない。これはなぜか?

加谷氏「経済の基礎体力の違いだ。アメリカやヨーロッパは、途中でリーマンショックはあったものの、基本的にはこの20年間ずっと好景気だった。その間、国民は貯蓄し家計にもゆとりがあった。そういう背景があってのコロナ禍なので、ある程度の落ち込みがあっても回復基調に乗れる。しかし日本はこの20年間満身創痍の状態で、貧困層が増え家計がボロボロの状態の時にコロナに襲われたので、そう簡単に回復できないというのが実情だと思う」

2014年から消費税を8%に上げ、2016年には10%に上げた。

加谷氏「消費税の増税が消費を冷やしたのは間違いない事実。景気が持続的に拡大し税収が増えればそれが財源となり、どんな支出にも対応できるのだが、日本では成長できない状態が続いているので、取りやすい消費税の所にばかり政府の目が向いてしまう」

コロナ禍の間に、国内に貯め込まれたお金が30兆円あると言われているが。

加谷氏「あるにはあるのだが、そのほとんどは貯蓄に回り、最終的には国債という形で政府が吸収してコロナ対策に使われている。この貯蓄を取り崩して消費に回すかどうかは疑わしい。よって政府が予算をあまらせている、国民も貯蓄があると言っても、実際にそれを活用できるかは別問題だ」「財政というものは、調子の良いときには出来るだけ抑えめにして、非常時に出すというのが原理原則。しかし日本の場合、良いときに財政支出を拡大して、この1、2年の非常時の時に思い切った財政出動を行わないという逆向きのベクトルになっている。そういう意味では思い切りが足りないと思う」

最後に加谷氏は「政府が目標としている『年内にGDPをコロナ前水準まで回復』は、ほぼ100%無理」と結んだ。「ニュースワイドSAKIDORI!」は、今後、日本経済の先行きを注視してお伝えしていこうと思う。

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