23年に渡る師弟の物語「東尾修&松坂大輔対談~あなたに会えてよかった」

23年に渡る師弟の物語「東尾修&松坂大輔対談~あなたに会えてよかった」

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今シーズン限りで現役を引退した埼玉西武ライオンズの松坂大輔投手と、松坂投手のルーキー時代に監督を務めた東尾修氏の二人を迎え、松坂大輔投手のプロ野球人生を振り返る引退記念特番の第1弾は12月18日に放送され、松坂投手に託した東尾氏の200勝記念球についてのエピソードが明かされました。



第1弾の模様はこちらから
https://www.joqr.co.jp/qr/article/40936/

 

そして対談第2弾は2022年1月1日午後2時から放送されました。

聞き手は、第1弾の放送に続き、松坂投手のデビュー戦と引退登板を実況した文化放送斉藤一美アナウンサーが担当します。

松坂投手が、埼玉西武ライオンズでの全登板の中からピックアップした印象深い登板、そして引退後のセカンドキャリアなどを東尾氏と語り合いました。

2021年12月3日。東京・グランドプリンスホテル新高輪国際館パミール。

それは、ちょうど23年前、松坂大輔と東尾修の2人を引き合わせたあのドラフト会場で行われるという記念碑的な対談となった。
「自分の運を試したいですね」

思い出すのは1998年の秋。あのドラフト会議を前にした横浜高校の松坂大輔が報道陣にそんな言葉を残していたことだ。球史に残る奇跡的な試合を連発して甲子園春夏連覇を果たした、横浜高校の大エース松坂がいう良運とは、同じ年に38年ぶりの優勝を果たした地元の横浜ベイスターズと結ばれること。しかし、3球団が競合した運命を決めるくじ引きで、松坂の未来を手繰り寄せたのは西武ライオンズ監督の東尾修だった。

 

「大輔を獲るのと、日本一。どっちがよかったか?」

 

後年になって、東尾は盟友であり、前年の日本シリーズで敗れた横浜の権藤博監督にそんな言葉を投げかけたという。二人とも口ごもり、明確な答えを出せなかったということが、松坂の獲得がのちの野球界にとってどれだけ大きな出来事だったかを伺わせる。

 

師弟の関係は東尾の200勝のボールを松坂が受け取ったところからはじまったと言えるだろう。その日、東尾が松坂に教えた“おとなの焼肉の焼き方”は、師弟関係にとって最初の教えだ。以来、翻意してライオンズへの入団を決めた松坂に対し、東尾は監督と選手という枠組みを越え、投手としての先達であり、ライオンズのエース、球界のエースとして親鳥のように道筋を示し続けていくこととなる。

 

「僕はあの時の甲子園を見ているから、不安がありましたよ。それは。とんでもないピッチャーを預かるプレッシャー。育てなきゃ、なんとかしなきゃいけないとキャンプが終わるまでは不安の塊でした」

 

1年目のキャンプ。日本中から報道陣が押し寄せ、影武者が出るほど加熱した松坂フィーバーは、その一方で球界の宝を預かった東尾の重責を示していた。自身も経験がある。プロは最初が肝心だ。ポンと良いスタートが切れたら乗りやすい。反面、かつて甲子園の優勝投手など鳴り物入りでプロ入りしながらスタートで躓き、力を出し切れずに終わった選手は少なくない。

「ローテ入りは確約しない。実力で掴み取ってほしい」

そんな言葉で甘やかしはせずとも、スタートで躓かず、ケガをさせず、プロの軌道に乗せるために東尾がどれほど繊細な心遣いをしていたのか。チームに溶け込ませ、ケガのリスクを負わせず、プロの投手としての土台を植え付けていく。松坂はあの1年目のキャンプが最も東尾から受けた教えが多かったと回顧する。

それはブルペンに入った時の「ストレートはキャッチャーミットで終わらせず、その後ろ審判まで突き抜けるイメージで投げろ」という感覚的なものから、登板時の「マウンドにはキャッチャーを見ずに、後方から上ってから前を見ろ」なんてルーティンまで、東尾からの数々の教えは松坂の血肉となり、最後の引退試合の時まで投手としての軸になっていたという。

 

「うまく軌道に乗せてあげられてホッとした。あとはもう本人の努力だから」

 

対談の最中、東尾はその言葉を何度も口にしていた。

それだけ東尾にとって、軌道に乗るまでの1年目が特別な時間だったことかがわかる。

だからあの試合が最高峰だというのも頷けるのだ。1999年4月7日の東京ドーム。全国のファンが注目する松坂大輔のデビュー戦。営業的にも大勢のファンが集まる本拠地西武ドームの開幕カードに投げさせたいなか、東尾は松坂の大事なデビュー戦は少しでも有利な環境で投げさせたいがために、堤オーナーからの要請すらも拒否して相手投手が格落ちする開幕第4戦。しかもマウンドの傾斜が松坂にとって投げやすいであろう東京ドームでの試合に当てた。

その結果、松坂は8回2失点でプロ初勝利を挙げ、大きく自信をつけた。

初回の片岡篤史から三振を奪ったあの155キロのストレートを東尾は「大輔の野球人生であれが一番いいボールだった」と振り返る。それは、プロとして最高のスタートをきるために道筋を敷いてきた東尾の手を、松坂が離れた瞬間でもあったのだろう。

 

“自分の運を試したい”

そう言って臨んだあのドラフト会議から23年。現役生活を終えた今、松坂は感謝を込めてこう振り返る。

「東尾さんでよかった。入団するときの監督が東尾さんでなければ、ここまで長くプレーすることはできなかった。結局1年目に言われたことをず~っとやり続けていましたね。東尾さんとの出会いがあったから、僕はここまで、やってくることができたと思っています」

 

あなたに会えてよかった——。

最後の最後にそんな言葉を貰った東尾の目には涙が光っていた。

 

この対談の翌日。メットライフドームでのファン感謝デーにて松坂大輔引退セレモニーが行われている。ここに花束贈呈で登場した東尾は、松坂の居るマウンドに歩み寄ると満員のファンを前にこう声を掛けた。

「ひとつ、新たな約束をしてほしいんです。大輔、今度帰ってくるときはライオンズのユニフォームしか着ちゃだめだぞ」

平成という時代を彩り、世代の仲間と切磋琢磨し、世界と戦ってきた大エースがそのキャリアに幕を降ろす時、師は新たな物語の道筋をつけていった。

この師弟の物語はまだまだ続いていく。

 

この2人の対談「東尾修&松坂大輔対談~あなたに会えてよかった」はPodcastで聴けます

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