村上信五くんと経済クン「宇宙飛行士 野口聡一さんに聞く！究極の仕事術」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【宇宙飛行士・野口聡一さん】
３回もの宇宙飛行を経験している野口さん。最初は2005年、アメリカのスペースシャトル「ディスカバリー」で。2009年にはロシアのソユーズ宇宙船、そして2020年にはイーロン・マスク率いる「スペースX」の民間宇宙船「クルードラゴン」で宇宙に向かった。日本人宇宙飛行士でこの３つの宇宙船に登場した人物は野口さんただ１人。今年５月いっぱいでJAXAを退職。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【宇宙飛行士を目指したきっかけは？】
宇宙を題材にしたアニメや映画を観るのが子どもの頃から好きだった。高校生の時にテレビでスペースシャトルの打ち上げを見て、「宇宙飛行士」という仕事を認識したのが直接のきっかけ。当時日本人の宇宙飛行士はいなかったが「いつか宇宙に行きたい」と思うようになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【宇宙飛行士に選ばれてから…】
1996年、宇宙飛行士の候補者募集に応募。572人の中から選ばれた。宇宙飛行士に選ばれるのは、耐久性や協調性が大切。そこから実際に宇宙に行くには９年かかった。まずはNASAでの基礎訓練を受ける。自動車学校のような感じで、各国から集まってきた宇宙飛行士候補生たちが一緒になって、教習と座学を受けた。基本的にはずっとアメリカで訓練していたが、ロシアでの訓練もあった。その時はロシア語で意思疎通ができないといけない。そのためにモスクワに１ヵ月半ホームステイに行っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【40歳の時に初めて宇宙へ！】（ちょうど今の村上さんと同い年！）
2005年、野口さんが40歳の時にスペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗。打ち上げから8分30秒経つとエンジンが止まって無重力になり、自分の周りにあるノートや鉛筆、床の埃、さらには自分の体が一斉に浮き始める。その瞬間「無重力の世界に来たな」と感じた。ちょうど窓がある席で、無重力になった瞬間、地球の姿が見えたのが印象的だった。写真で見るのと違い、海や山、雲があり、とても立体感のある球体だった。国際宇宙ステーションを増築するために、３回、全部で20時間ほど船外活動で作業を行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【２回目・３回目の宇宙飛行】
２回目はロシアの宇宙船ソユーズで宇宙に行き、国際宇宙ステーションに５ヵ月滞在。そして３回目はアメリカ「スペースX」の民間宇宙船「クルードラゴン」だった。これまでの宇宙産業は、いろいろな会社が複雑に絡み合ってとても高級な機械を作り上げていた。「スペースX」のイーロン・マスクは、それまでの業界の常識を一切信じず、自分の会社1社だけですべてを賄った。最初の頃は失敗が多かったが、変化をいとわず挑戦したことで、あっという間に宇宙産業を引っ張る存在となった。「クルードラゴン」は、白と黒のスタイリッシュな船内で、かっこいい宇宙船だった。「宇宙旅行のための乗り物」というイメージ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【国際宇宙ステーションでの１日は？】
６時に起床、１時間半ほど自由時間があり、７時半に集合して当日の予定確認など。８時から１２時まで仕事。お昼ご飯をはさんで１３時から１７時までまた仕事。仕事内容は日によって異なり、船外活動をすることも。ただ、船外活動は特別なもので、野口さんも４日ほどしか体験していない。船外活動をする前は２週間ほどそれに向けて準備をする。当日も普段より早起き。宇宙服を着るのに４時間ほどかかる。体を低い気圧に慣らさないといけないため。１回外に出ると６～７時間出っ放し。宇宙服の中に水筒が入っているため水は飲める。ただ食べ物は食べられない。お手洗いにも行けないため、基本的にはおむつをつけて船外活動を行う。地上ではありえないほどの緊張感。漆黒の宇宙に対する恐怖感もある。足元は400キロ下の地球まで何もないので、手を放すと落ちてしまう気分になる。だんだん慣れてくると、自分も地球の周りを回っているんがということが分かる。“自分が星になる”という感覚になる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【野口さんに答えて頂く！明るい悩み相談】
⓵仕事や職場の環境に慣れず、やめたくなっている。長く仕事を続けるコツは？
→対策は２つ。１つ目は、会社の他の世界を持っておく。昔ながらの友人と連絡をとったりして、会社だけが自分の世界のすべてじゃないと思えるようにする。２つ目は、職場に“勉強しにきている”と割り切ること。吸収することに集中する。

⓶今後、宇宙飛行士はどのような人が求められる？
→広く世界に接しているという能力が求められる。勉強よりは、部活で仲間と一緒に何かを成し遂げたりする経験をしておくと良い。外に出て仲間と何かやってみることが大切。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
壮大で聴きごたえのあるお話をたっぷり伺うことができました！宇宙から初めて地球を見たときのお話、緊張感あふれる船外活動のお話などは、聴きながら鳥肌がたつほどでした…！いつもと同じスタジオにいながら、少し宇宙を垣間見たような不思議な感覚に陥りました。貴重なお話、本当にありがとうございます！野口さんの本「野口聡一の全仕事術」も読ませて頂きましたが、地球上での私たちの生活にも生かせそうなことがたくさん書かれていました。ぜひみなさんもお手に取ってみてください！
坂口愛美