高市大臣の苦悩 ~ ニュースパレード  山本香記者取材後記

高市大臣の苦悩 ~ ニュースパレード 山本香記者取材後記

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 文化放送をキーステーションに全国33局で放送中「ニュースパレード」(毎週月曜日~金曜日午後5時00分~5時15分)

 その日に起こった最新の話題を中心に、幅広い分野にわたってニュースを紹介しています。昭和34年の放送開始以来、全国のラジオ局の強力なバックアップで、特派記者のレポート、取材現場からの中継など、今日最も重要なニュースを的確に把握し最新情報を伝え続けています。

 文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。

 

 

 

放送法をめぐる総務省の文書を「捏造」と主張し、連日、追及を受けている高市経済安全保障担当大臣。

WBC(ワールドベースボールクラシック)が連日盛り上がり、高市問題への関心が薄れてしまった感があるが、高市大臣を取り巻く状況は厳しさを増している。

 

 

苦い誕生日

 

 

高市大臣が「捏造」と指摘するのは、立憲民主党の小西洋之議員が3月2日に公表した78枚に及ぶ放送法をめぐる総務省の文書のうち、高市大臣が総務大臣時代に受けたとされる政治的公平性についての大臣レクの資料などだ。

3月3日、小西議員の「本物だったら議員辞職するか」という質問に対し「結構ですよ」と啖呵を切った高市大臣だったが、総務省は小西議員が公表した文書を、正式に行政文書と認めたのが3月7日。

この日はおりしも高市大臣の62回目の誕生日だった。

その後の総務省の調査で、高市大臣が「捏造」と強く主張する平成27年3月12日の「高市大臣レク結果(政治的公平について)」と題された大臣レクについても、あった可能性が高いとした上で捏造があったとは考えていないと結論付けた。

だが高市大臣はその後も「捏造」だという姿勢を崩していない。

 

孤軍奮闘

 

 

強気で国会答弁を続ける高市大臣だが、3月24日の参議院予算委員会では同じ自民党の末松義規予算委員長から異例ともいえる注意を受けた。

行政文書をめぐる委員会でのやり取りの中で、高市大臣が野党議員に対し「私が信用できないなら、もう答弁なさらないでください」と発言したことが波紋を呼び、与野党からこの発言を撤回するよう求められていた。

にも関わらず、3度にわたり撤回を拒否するかのような答弁を行い、立ち去ろうとしていたところ、末松委員長が「ちょっと待って」と、高市大臣を呼び止め「国会議員の質問を揶揄したり、或いは否定するっていうのは、本当に大きな間違いであると思う」「敬愛の精神を忘れている」と厳重注意を受け、高市大臣はしぶしぶ発言を撤回した。

「捏造」と主張したことで、総務官僚を敵に回した高市大臣。

所属する自民党議員から「身から出た錆」「孤軍奮闘だがかばう気になれない」という言葉も聞かれる始末。

罷免について問われた岸田総理は3月27日の参議院本会議で「罷免する理由はない。引き続き丁寧に説明してもらいたい」と述べ、更迭は否定したものの、総理官邸周辺からは「支持率は上がり始めている。高市問題は関係ないな」と他人事。

まさに四面楚歌の状況だ。

 

保守分裂

 

高市大臣のもう一つの悩みは、保守分裂となっている高市大臣の地元での奈良県知事選挙だ。

高市大臣が推す総務大臣時代の秘書官が出馬しているが、自身の「捏造」問題を抱え、応援にも入れずにいる。

立候補を届け出たのは、元生駒市長で日本維新の会新人の山下真氏、元総務官僚で無所属新人の平木省氏(自民党県連推薦)、元大和郡山市議で無所属新人の尾口五三氏、現職の荒井省吾氏、無所属新人の西口伸子氏、無所属新人の羽多野貴至氏の6人だ。

このうち保守分裂となっているのは、48歳の新人平木氏と77歳で5期目を狙う現職の荒井氏だ。

平木氏は高市大臣が総務大臣時代の秘書官。

一方の荒井氏は元運輸官僚で、二階元幹事長が運輸省の政務次官をやっていたころからの付き合いだ。

当初は平木氏出馬で決まりかと見られていたが、高齢多選批判もある荒井氏が二階元幹事長の後押しで出馬を決めた。

保守王国を誇る奈良県は、当時の橋下徹知事が呼び掛けた関西広域連合に唯一加わらなかった。

その奈良県でも、維新色にじわじわ染まり始めている。

高市大臣の選挙区である奈良2区では、新興住宅地が増え、そこに大阪から移住してくる若い世代の家族が増え続けていることも大きく影響している。

高市大臣としては、維新支持が増えると、自身の選挙(衆院選)にも関わっているため、是が非でも平木氏に勝ってもらいたい。

ちなみに本来は敵のはずの自民党系の候補である平木氏を応援しているのが立憲民主党の馬淵澄夫前国会対策委員長だ。

こちらも自身の選挙(衆院選)を考えると、維新が奈良で幅を利かせてきたら自民党より厄介だという思惑もあるようだ。

自民党の調査では、保守分裂による漁夫の利を得て、維新の山下候補が一歩リードしている。

伸び悩む荒井氏を降ろして一本化すれば有利になるはずだが、二階元幹事長にその気配はない。

そして奈良3区は、コロナ禍の中、銀座のクラブ通いが発覚した銀座3兄弟の1人である田野瀬太道衆議院議員。
二階元幹事長に近い森山派に所属している。

安倍元総理が昨年、参議院選挙の応援演説中に糾弾に倒れたのは奈良県。

その安倍元総理の強い後ろ盾を失い、自民党内からもそっぽを向かれている高市大臣の苦悩はいつまで続くのだろうか。

 

 

ニュースパレードPodcast

 

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