文化放送

水谷加奈のエンタの女王

映画、芝居、コンサート、歌舞伎、ミュージカルから、落語に文楽、能や狂言、そして、美術館、写真展、遊園地!?に至るまで。とにかくこの世は楽しいことがいっぱい!なのだ。エンタの女王、水谷発信の情報で、あなたも毎日エンジョイ!

Dec16

90ミニッツ

90ミニッツ中・高のクラスメイトで、ある宗教に入っている女の子
kちゃんがいた。
ある日、音楽の時間に校歌を練習するときになって、
突然彼女がすっくと立ち上がり、先生に言ったのだ。
「すみません。宗教上の理由で歌えません」
そのとき私たちが受けたカルチャーショックと言ったら!!
「あいつどんなやつなんだ?」
「宗教ってなんだ?」
と言っても、kちゃんは頭がよく容姿もかわいく、
なんといっても運動神経が抜群で、
クラスのアイドル的存在だったので、
その後特に宗教がどうとかで、周りから冷かされたりすることは
なかったけれど。
でもそのほか、「おめでとう」と言ってはいけなかったり、
いただきますのときに手を合わせてはいけなかったり、
日常生活においていろいろな制約があるということを知った。
それからしばらくして、こんな事件が起こった。
『宗教上の理由で輸血が禁止されているため、
 親が子供に輸血を許可せず、その子供が亡くなった』
恐ろしいニュースに震えたことを覚えている。
kちゃんに、
「まさかコレと同じ宗教じゃないよね?」
そう聞くと、kちゃんは、
「私が入っているのはコレだよ。家族で入っているんだよ」
と答えた。
「え。じゃあ、同じことがあったら輸血はしないの?」
そう聞くと、kちゃんは何の迷いもなくまっすぐした目で
答えた。
「うん、しないよ」

30年ほど経った今、Kちゃんに会うことはないけれど、
彼女は随分前に、同じ宗教の男性と結婚、
幸せに暮らしていると、友人からは聞いている。

作・演出・三谷幸喜。
出演・西村雅彦、近藤芳正。
『90ミニッツ』は、まさにこれがテーマだ。
宗教上の理由で子供に輸血させない、と言い張る父親。
子供を助けるために輸血を伴った手術をさせようとする医者。
明らかに医者の言っていることが正しいと思うのだが、
途中から、父親の主張も間違ってはいないと感じる。
輸血をしなければ子供は死んでしまう。
八方塞の舞台。
果たしてどちらが引くのか、どちらが勝つのか。

緊張の90分。2人芝居。

『90ミニッツ』
  パルコ劇場 12月30日まで
         その後、大阪梅田芸術劇場

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