『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    古典エッセイストの大塚ひかりさんが提案する「くそじじい」「くそばばあ」の魅力とは(おとなライフ・アカデミーWEB)

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 古典エッセイストの大塚ひかりさんが提案する「くそじじい」「くそばばあ」の魅力とは(おとなライフ・アカデミーWEB)

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今を楽しく生きるオトナ世代のための情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」。2021年7月3日は、ゲストに大塚ひかりさんをお招きしました。ラジオの内容を前・後編の記事にまとめてお送りします。

前編となるこの記事では、昨年10月にご出版された『くそじじいとくそばばあの日本史』について。実は残間さん、この本を読んで「救われた」んだとか。
古典で描かれるおじいさん・おばあさんのしたたかさや芯の強さ、そして今も昔も変わらない「生への悩み」について語りました。

〇大塚ひかりさんプロフィール
1961年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。出版社勤務を経て古典エッセイストに。
著書に『ブス論』『源氏の男はみんなサイテー』『昔話はなぜおじいさんとおばあさんが主役なのか』『源氏物語の教え』『エロスで読み解く万葉集 えろまん』など。源氏物語の現代語訳も手掛ける。

『くそじじいとくそばばあの日本史』、読んで救われました

鈴木 本日のゲストは、古典エッセイストの大塚ひかりさんです。

大塚 よろしくお願いします。

残間 昨年10月にご出版された『くそじじいとくそばばあの日本史』というご著書がありますよね。

私、実はこの本を読んで、少し救われたんですよね。

大塚 えっ、本当ですか。嬉しいです。

残間 やっぱり年齢を重ねるにつれて、若い頃と同じようにはいかない自分を実感することが増えてきているんです。
でもこの本を読んで、「歴史を生き抜いて、今も語り継がれているような”ジジババ”たちはみんな、年齢を重ねたからこそのパワーを持っていたんだな」と思って。

大塚 うんうん、そうですね。

若くもなく、美しくもなく。「誰かの理想像」ではないことにこそ、価値がある

大塚 古典文学って、普通は悪いものとしてしか捉えられない「醜さ」や「老い」に、ポジティブな価値を見出だしているんですよね。

たとえば日本の神話には、「石長比売(いわながひめ)」という、ブスな女の神様が登場します。彼女の妹は非常に美人なんですが。
あるとき、二人は同時にある男の神様と結婚することになるんですが、石長比売のほうはブスなので送り返されてしまう。

それで、石長比売(『古事記』では姉妹のお父さん)は「姉妹のうち、妹は繁栄を、姉である私は長寿を司っていたのに」と怒るんです。それ以来、この男の子孫、つまり私たち人間は、短命になることを決定づけられてしまったと。
若さだけ、美しさだけを選ぶと、手痛いしっぺ返しを食らうんだよ、という教訓がここにはあるのかな、と思うんですよね。

大垣 いわゆる「理想的な」状態ではない存在にも、大きな価値があると。それっていいですね。どんな人でも老いていき、その過程である種の美しさは失われていくわけですからね。

大塚 はい。老いや醜さにもポジティブな意味付けをする古典は、読んでいて癒されます。

シミ、ソバカス、体臭、発毛・・・1000年前から、人類の悩みは同じだった

残間 「昔からずっと、人間って同じようなことで落ち込んできたんだな」と分かったことも発見でした。

たとえば、平安時代のやんごとなき姫君たちは、シミやソバカス、ニキビ、白髪に悩んでいたんですよね。

大塚 そうなんです。当時の医学書には美容に関する項目が多々あるほどです。今でいう美容整形ですよね。
医学書にはシミ・ソバカス等の治し方の他に、養毛と発毛推進法とか、美白の方法なんかが書かれているんですよ。あとは「不老長寿と若返り法」「体臭をかぐわしくする方法」なんていうのもあったりして。

大垣 (笑)。今の日本人が悩んでいることと全く一緒ですね。

大塚さんにとって古典は、自分を励ましてくれる存在

大垣 大塚さんが古典研究をなさっていて、現代にも通ずる「生き方の教訓」はありますか。

大塚 教訓というよりは、読んでいると励まされますね。
古典の時代にもやっぱり「老いは厄介なもの」という感覚は強くあったんですね。そういう時代にあっても、たくましく生き抜いた人たちがいるんだな、と。

大垣 そういう人たちの様子を描いた文学が、長い間消えずに読み継がれてきていることにも、意義を感じますね。

今も昔も人間は「昔はよかった」と思ってしまう生き物

大塚 実は古典文学を読んでいると、結局、今が一番いいと感じてしまうことは多いです(笑)。

残間 そうなんですか。

大塚 たとえば老人福祉や子供への態度なんかは、本当にひどいんですよね。2016年に出版した『本当はひどかった昔の日本』という本は、そういうテーマで書いているんですが。

古典の時代に生きてきた人々の犠牲の上に、今の幸せがあるんだと思います。

そもそも、人間っていつでも「昔は良かった」と思いがちなんですよね。『源氏物語』にも、「あらゆることが昔よりだんだんダメに薄っぺらになっていく世の末」なんて書いてあったりするんです。

大垣 今も、そういうことを言う人は大勢いますよね。

大塚 現状をもっと良くしたいと思うからこそこういう発言が出てくるのだと思うので、こういう思考回路が悪いとは言えないのですが・・・。

後編でも、さらに古典の魅力を語ります。

記事の後編では、日本の昔話や『源氏物語』など、誰もが知っている作品に隠された、驚きのエピソードや真意を語ります。大塚さんの最新刊『うん古典: うんこで読み解く日本の歴史』(新潮社)にかける意気込みもお話しいただきました。

後編はこちら:老後の生きがい、「毒親」、高齢女性の恋愛・・・。それ、全て古典に書いてあります! 古典エッセイストの大塚ひかりさんが考える「古典の魅力」(おとなライフ・アカデミーWEB)

お知らせ

パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
また、皆さまの大切な我が家をケアするパートナーとして、入居者トラブルにも責任を持って対応しています。

JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

カウンセリングやご相談は無料。資格を持ったスタッフが、皆さまの家についてしっかりとお話をうかがいます。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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