櫻井孝宏インタビュー「櫻井孝宏は振り返らない。」

櫻井孝宏インタビュー「櫻井孝宏は振り返らない。」

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 1月8日のオンエアで記念すべき放送1000回を達成した『A&Gメディアステーション こむちゃっとカウントダウン』
この番組の第1回からパーソナリティを務め、人気声優となった今でも出演を続ける櫻井孝宏さんにお話をうかがいました。

※こちらは文化放送の月刊フリーマガジン「フクミミ」2022年2月号に掲載されたインタビューです。

目次

  1. 1000回という数字も、軽やかに受け止める
  2. 生放送ならではの、うれしい瞬間
  3. ラジオというメディアの、文化的な可能性
  4. この記事の番組情報

1000回という数字も、軽やかに受け止める

── 放送1000回、おめでとうございます!

櫻井 ありがとうございます。

── 2002年10月の放送開始から数えて20年目に突入していますが、今の心境を教えてください。

櫻井 「1000」という数字に注目すると、とても長い旅だったようにも思えるのですが、個人的には20年も前に番組がスタートしたという感覚がないんです。当時の記憶が鮮明に残っていることも影響しているかもしれません。番組がスタートした20年前は、文化放送さんの社屋はまだ四谷にありました。私は28歳で、声優としてのキャリアも浅く、仕事も少なかった時代です。そんなときに毎週土曜日のこの生放送がルーティーンとして、自分の仕事の軸になっていきました。毎週とても楽しいですし、私としては「続けている」というよりは「続けさせてもらっている」という感覚が強いです。

── 放送が始まった頃の記憶として覚えていることは何でしょう?

櫻井 番組が始まるとき、カウントダウン系の番組はもう時代遅れなんじゃないかという声もありました。しかも自分のような新人を地上波の、ゲストをお迎えする形式のカウントダウン番組に起用するのは、無謀とも言える大抜擢なのではないかと当時は思っていました。そういう状況からスタートしたので、自分としてはあえて「無邪気に楽しもう」というスタンスで臨んできたつもりです。だから「1000回」という数字ほどの重量感はないというか、わりと軽やかに受け止めています。とはいえ、周りの方から祝福のお言葉をいただくとありがたいですし、うれしい気持ちも湧いてくるので、少しずつ噛み締めている最中ですね。

── 「軽やか」にというお言葉から、タモリさんを思い出しました。淡々と番組に出続けるという意味で。

櫻井 それはまた恐れ多いお名前ですね(笑)。ただ、たしかに私にもそういう性質があるような気はします。「自分に過度な期待はしない」というか。実は番組が始まった頃は、放送後に反省することも多かったんです。番組で最初の公開イベントを開催したときも、イベントが無事に終了したのに、帰りのタクシーの中で「あそこは、ああすればよかったかな」と、反省モードに入ってしまって。そのとき隣にいたプロデューサーから「今ぐらい喜びましょうよ」と声をかけられたんです。そこからですね、過度にくよくよと振り返るのもよくないなと思って、少し脱力して現場に臨むようになりました。

生放送ならではの、うれしい瞬間

── これまでの放送では様々なゲストの方もスタジオにいらっしゃいました。

櫻井 そうですね。ゲストは時代によって傾向が変わったりもします。今は声優さんのアーティストの方が多いのですが、昔は音楽系のアーティストの方がアニメソングを歌うことが今より多かったので、ゲストでお越しになる機会も多かったような気がします。米津玄師さんや、大槻ケンヂさん、access(アクセス)の浅倉大介さん・貴水博之さんが出演してくださったことも強く記憶に残っています。ただ、やっぱり緊張しますし、お話ししているときもフワフワして、目の前にいたという“残像”ははっきり覚えているけれど何を喋ったかはさっぱり覚えてないということもありますね(笑)
あと、林原(めぐみ)さんは四谷時代からゲストとして何度も出演していただいているんですが、出演したときのことを覚えていてくださるんです。そういうとき、この『こむちゃ』という場所で同じ時間を少しは共有することができたのかなと勝手に思っていたりもしますし、この番組をやっていてよかったなとも思います。

── 生放送ならではの出来事もあったのでしょうか?

櫻井 CDプレーヤーが動かない、といったマシントラブルが時々あったりはしますね。そういうときにディレクターから「トークでつないでください」という指示が出て、ドキドキしながら喋ったこともあります。たしか井口裕香さんがアシスタントのときだったと思うんですが、彼女は全く動じないタイプなので、トラブルの間も平然とトークを続けてくれました。やっぱりハプニングに臨機応変に対処できたり、ゲストの方と喋っているときにいい連携が取れたりしたときには、『こむちゃ』というチームとしての積み重ねを感じます。そういうところにも生放送ならではの、うれしい瞬間があるような気がしています。

ラジオというメディアの、文化的な可能性

── 放送1000回を突破し、今後に向けた抱負やリスナーの皆さんへのメッセージをお願いします。

櫻井 個人的な抱負としては「続けられるまで続けよう」ということでしょうか。始まったものは、いつか終わります。あまりこういうことを口に出すのは野暮かもしれないですけど、「もう最終回です」と、いつ言われてもいいような気持ちで毎回臨んでいるというか。その気持ちは変わらず、続けられるところまで続けたいと思っています。
リスナーの皆さんに向けては、最近はYouTubeをはじめとしていろいろなメディアが選び放題ですが、その中で「ラジオを聴く」というのは、私はある意味、一つの文化的な行為だと思っています。この先ラジオがなくなることは絶対ないと思っているんですが、ただ、今は「放送時間に周波数を合わせる」とか、「次回を楽しみに1週間待つ」という感覚が薄れてきているような気はします。でも、だからこそ「その瞬間に聴く」という行為に価値が出てくるような気がしています。ストリーミングやダウンロード全盛の時代になったからこそレコードやCDといったフィジカルメディアに文化的な価値が出てきたように、音声だけのメディアの楽しさや面白さが再発見されて、世の中に広がっていくムーブメントが起こることを期待しています。
そのうえで、もちろんYouTubeもテレビも楽しんでいただければいいのですが、そのラインナップの一つにラジオがあるといいなと思います。そして、この番組も皆さんのラインナップの一つとして、末永くお付き合いしていただけたらと思っています。

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