山内マリコと柚木麻子のステートメントができるまで。被害者の救いになるのは第三者?

山内マリコと柚木麻子のステートメントができるまで。被害者の救いになるのは第三者?

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「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」(文化放送)、6月27日は重藤暁が欠席のため、柚木麻子が代理パーソナリティを担当した。特集コーナーでは、山内マリコとの小説家コンビで、今年4月12日に発表した映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めるステートメント(声明)についてじっくりと語った。同ステートメントは山内、柚木を含めた作家18人が名を連ね、各メディアでも報道されている。

西川あやの「お2人はステートメントの発表というものにどういう意義を感じていますか?」

山内マリコ「ニュースになること自体に意味があるというか。個々のいろんな思いって、いまはSNSで発信できるけれど、ひとりひとりだと小さくなってしまう。でもある程度人数を集めれば……」

柚木麻子「その瞬間、社会問題化される。今回、大手メディアに一気に取り上げられるようになった。それは作家の中でも有名な方がたくさんいらっしゃったというのもあるんですけど、私たちが作家という肩書と、本の表紙という『別の顔』を持っているということで、報道しやすくなった。いい意味で注目が集まって、意図だけがうまく伝わったというケースになったと思います」

西川「ストレート読みのニュースでも伝えられることがありましたね」

山内「4月12日に発表したとき、直後にNHKのニュースでも画面に映されて。それ以前って、このステートメントのきっかけとなった映画業界の性加害、性暴力の問題って、週刊誌がスクープしたものだった。だから他のメディアって記事にしづらい、後追いしづらいみたいな状況があって。私たちは個人プレーというか、18人が集まって出したことで、それがきっかけで『報道できる』となった」

柚木「みんな待っていたんだと思いますよ。取材してくれたのは女性の方が多かったんです。何かきっかけがあれば報道しようというので、出しやすかった。実際私たちは蚊帳の外で、被害者が振り絞った勇気に比べれば本当に『ただ言っているだけ』なんですけど、ゆえに報道がしやすかったんだと思います。関係ない第三者がまとまって声を上げることには意味があるんだな、と今回思いました」

このステートメントの始まりは柚木で、参加しやすい声明文、被害者の立場になった声明文をつくりあげることも一筋縄ではいかなかったという。

柚木「(声明文)をどんどん練り直していって。参加したのは18人ですけど、本当はもっとたくさんの作家さん、映像関係の人の意見が入っています。それを2人で取り入れていった感じです」

山内「それぞれ作家さんたちご意見があるので、中庸というか『ここはみんな納得してくれる』というラインの文章をまとめなければ。私たちを除いた16人に都度都度、どうですかと連絡しなければいけない」

柚木「私は最初に、性加害が起きるような現場では私たちの作品は使わせない、公開中止してくれ、って入れようと思ったんですけど。実際被害に遭った人が言い出しにくくなったらどうするんだ、という意見もあって。でもたとえば男女の配分を契約の段階で原作者が言うことでセクハラを防げるという考えの人もいるし。人によって違うんですね。ひとりひとりが契約の段階で適切な提言をしていく、という形にまとまりました」

西川「発表されたとき気になったんですけど、原作者の方ってどれだけの発言権、関わり方を持たれているのかなと」

柚木「わからないですけど、我々に関してはほぼゼロです」

山内「昔の作家さん、偉い作家さんの話で『キャスティング権がその人にあるのか?』というエピソードも伺うんですけど、私たちは事後報告(笑)。最後の最後に、というのが普通で、権限はなくて。正直どんな作品になってもあまり保証できないというか、よくわからない。預けた、渡してしまったものなので。ただそれは作品どうこうじゃなくて、つくる過程で性暴力に加担されると責任が発生するなって」

柚木「そうですね。どんな話(映画)であっても最初に名前が出るんだから、無関係では絶対にない。その気持ちは全員、18人とも一緒です。加害を呼んだことも、自分の物語の中なら責任がある。じゃあ何か言わないとダメだろう、と」

西川「原作者としてステートメントを発表された。映画会社でも出演者でもなく、というのも大きかった」

山内「『あなたたち、無関係じゃ?』というぐらいの立場の人が言うことで、物事を円滑に進められる」

ほかにも様々な過程について明かされた。いざ発表すると、予想以上にいい反応を受けたという。

山内「心配していたんですよ。バッシングというか『関係ないやつが何言ってんだ』みたいな声もあるのかなって。あと女性作家というくくりだから、ノンバイナリーの方も含みますけど、『男性作家はいないのか』とか、槍のように飛んでくるのかなと思っていたら、9割……もっとか、すごく好意的でした。『よくやってくれた』と」

「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」は毎週月曜~金曜の午後3時30分~5時45分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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