『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 賃貸派にこそおすすめの新型住宅ローン・残価設定型住宅ローンとは?

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 賃貸派にこそおすすめの新型住宅ローン・残価設定型住宅ローンとは?

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2022」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

新型ローン、ついに利用が始まりました

2022年7月16日の放送では、2022年にサービスが開始され、6月に初めての利用者が出た新しい住宅ローン・残価設定型住宅ローンについて。

このローンの開発者として、熱く語りました(笑)。

残価設定型住宅ローンとは?

残価設定型住宅ローンとは、普通の住宅ローンに、あらかじめ設定した残価設定月以降に使える、

・買取オプション
・返済額軽減オプション

という、二つのオプションを付けた住宅ローンのことです。

買取オプションは、事前に設定した時期(残価設定月)以降、いつでもローンの残高で不動産をJTIに買い取ってもらえるもの。

これまでのローンでは、家を売却したあともローンが残る問題がありました。残価なら、安心して手放すことが可能です。

(※)残価設定月:地域や建物の状況、ローンの借入額などによって変わりますが、9割融資を前提にすると、およそ借入から20年〜25年目。

二つ目の返済額軽減オプションは、残価設定月以降、ローン返済額を4割以下程度(モデルケースでは、月10万円程度の返済であれば、3〜4万円程度)に減らせるローンに借り換えられるものです。

家を買ってから20〜25年目というと、多くの人が60歳前後。役職定年や退職などによる減収に備えられます。

返済は死ぬまで続きますが、50年目以降は、月返済額は利息のみ(月1万円程度のことが多い)。

もちろん、二つのオプションは使わなくても構いません。
人生100年時代を賢く生きるための「お守り」がついた、新しい住宅ローンなのです。

2022年7月の時点では、大手住宅メーカー系のモーゲージバンクが、住宅金融支援機構のフラット35にオプションを付けた残価設定型住宅ローンを取り扱っています。このあと、銀行が2行導入を予定しています。

家族が減っても、その家で幸せですか

これまでの住宅ローンには家族構成の変化に対応できないという問題点がありました。

日本人が家を購入するきっかけのほとんどは「子供が生まれたから」。

かわいい盛りの子供のために、自分たちが今一番必要だと思う要素を盛り込んで作った、広くて部屋数の多い「理想の城」。

ところが、購入後20年、30年すると、この理想の城は持て余されることになります。

子供が巣立った後の広い家は、管理も大変ですし、何よりもガランとして寂しい。

住み替えを検討して家を売ろうとしても、20年以上住んだ家の売却価値はほぼゼロ。売却をしてもなお、ローンが残ってしまうことすらあります。

金銭的に大きな損をするリスクを取ってまで住み替えたいわけでは・・・と思うと、移住しようにもできなくなる状況がありました。

人生100年時代は、老後の住み替えがデフォルト?

多くの人は、家族の人数が最大になる時期に過ごしやすいようなサイズの家を購入します。

でも、今は人生100年時代。むしろ、家族の人数が減ってからの生活のほうが長いのです。

家族数の減少に対応できない従来のローンは、セカンドライフの生活の質を低める可能性すらある――。私はそんなふうに思っています。

子育ての記憶は、いつでも家と結びつく

ただ、だからといって、育児期にぴったりな家を購入するべきではないとは、私は全く思いません。

私は今年63歳。育児も一段落ついたところですが、思い返してみても、育児期間って人生で一番幸せな時代でした。

夫婦でこだわり抜いて決めたソファに子供が乗り、笑いながら跳ね回ったこと。
応接室の障子がものの一晩でビリビリに破かれたこと。
広い玄関に、子供の脱いだ靴がいっぱいに散らばっていたこと。
新品の畳の匂いのする和室で、夜更かししてUNOをしたこと。

考えてみるにつけ、育児期の幸福な記憶は、いつでも家と結びついているのです。

残価ローンが、家の消費を「モノ」から「コト」へ

振り返ってみて、私が家を買うことで本当に得たかったものは何なのだろう、と考えてみると――。

それは、「家族で新しい家に住む」という経験だったのではないかと思うのです。

近年、消費の傾向が「モノ」から「コト」へと変化してきたと言われます。

残価設定型住宅ローンなら、必要な時期にだけ住んだあとは、売却するなり、賃貸に出すなりで、家を出ていけます。理想の家で過ごす幸せな育児時代という「コト」を買うわけです。

ただ、きらびやかな家という「モノ」を購入できればいいわけではない。
そんな時代の感性に、残価設定型住宅ローンはフィットするように思います。

残価設定型住宅ローンは、賃貸派にむしろおすすめ!

実は、残価設定型住宅ローンの考え方はかなり「賃貸派」に馴染むものだと個人的には思っています。

賃貸を選択される方は、持ち家のデメリットとして、金銭面での負担が長く続くことや、住み替えのしづらさを挙げられます。

確かに、いざとなったときに出ていけないのは非常に怖いですよね。

賃貸は、手狭なのが当たり前?!

ただ、賃貸には賃貸でデメリットがあります。
一番大きな問題は、子育てに向かないということでしょうか。

というのも、賃貸の多くはワンルームか2DKのアパート。
貸しに出せる土地があるなら、一部屋一部屋の狭いアパートが最も効率よく稼げるからです。入居者が増えますからね。

そうすると、3人以上で暮らせるような広い家は市場にほとんど出回らない。
特に一軒家は「利回り」の対局にあるような存在ですから、かなり希少価値が高いのです。

持ち家を購入できるほどの金銭的余裕はない。でも、賃貸で3人以上の人間が住もうとすると、手狭な2DKしか見つからない・・・。

現状、子育て世帯が賃貸で、快適に育児をするには、希少価値の高い戸建てに偶然入居できるといったような、ある種の「幸運」が必要なのです。

賃貸に求める気軽さを、残価設定型住宅ローンで

これがもしも残価設定型住宅ローンであれば、住み替えたくなった場合は「残価保証オプション」を使うことで、いつでも家を売却し、住み替えることが可能です。

この気軽さって、賃貸住宅に求めていることと似ていると思うんです。

先ほど言ったように、育児期に自分たちだけの「城」を持つことは、何よりも幸福なこと。

自分のために作った家に住み、広い家が不要になったら気軽に出ていく。そして、新たな幸せを探しにいく・・・。

この軽さと重さのバランスが、残価ローンの「ミソ」であり、人生100年時代に求められている家の所有方法ではないでしょうか。

まとめ

そんなわけで今回は、残価設定型住宅ローンについて考えてみました。

これから家を建てられる若い方は、ぜひ残価設定型住宅ローンを借りることを検討されてください。

もし、残価設定型住宅ローンが気になる! という方がいらっしゃいましたら、ぜひ移住・住みかえ支援機構までお問い合わせください。

大垣尚司 プロフィール

青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

★これまで番組で残価設定型住宅ローンを取り上げた際の記事はこちら!
●35年の住宅ローンより総支払額が安くなるケースも。残価設定型住宅ローンとは

● 大和ハウスで売り出しが始まった「残価設定型住宅ローン」を解説

●いい家ほど、安くなる? 残価設定型住宅ローンを解説

●定年後は10万円のローンが3万円に? 残価設定型住宅ローンの仕組み

●家の「残価ローン」が始まる! でもそれって一体何?

●リ・バース60と残価設定型住宅ローン。新しい住宅ローン二つの特徴を解説

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番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.net まで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ

パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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