「架！　朝だよ！　ほら、起きて起きて！」
現実というのは厄介極まりない。
俺を夢の世界から引き戻した厄介な声の主に向かって、
眠い目をこすりながら、愚痴をこぼす。
「……なあ、宙荷。いい加減、俺の眠りを妨げるのは、よしてくれないか？」
「えー？　だって僕が起こしに来ないと、架、起きないじゃん」
そう言いながら、俺を乱暴にベッドから引き剥がすのは幼馴染の宙荷（そらか）。
こいつとは、子供の頃からの腐れ縁ってやつだ。
真下にある、秘蔵のお宝本《ホーリーバイブル》が丸見えな体制で、
見事にベッドから投げ出された俺は、
平和ボケした乱暴小娘に、この世界の真実を打ち明けてやることにした。

「違うよ、宙荷。俺は毎日、悪夢を司る魔族結社、【ナイトメア】と戦っているんだ。
さっきも、後少しで【ナイトメア】の四天王、ルミ・ルミを倒すところだったんだ。
そう……。パパとママから貰った、このアクセサリーの力で――」
「……へー。スゴイねー。さすがだねー」
「へ、ヘヘ！ そ、そんなに褒めるなよ」
若干棒読みだった気もするが、それでも褒められると萎縮してしまう謙虚な俺。
「はいはーい準備できたね！　それじゃあ、僕と一緒に、学校へレッツゴー！」
「ふ、仕方ない。その提案、乗ってやろう」