パラアイスホッケー日本代表信田憲司監督「忍耐強い選手を育てたい」~11月16日ニュースワイドSAKIDORI

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北京パラリンピック出場を目指すパラアイスホッケー日本代表監督の信田憲司さんが、16日、文化放送「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」内『応援!ユニバーサルスポーツ』に電話出演。26日からドイツ・ベルリンで行われる世界最終予選に向けての意気込みや競技普及への思いを語った。

信田監督は、苫小牧市出身の60歳。高校卒業後、国土計画に入り、日本代表のゴールキーパーとして活躍した。35歳で引退後は18歳以下や20歳以下の日本代表を指導し、パラアイスホッケーの日本代表アシスタントコーチとして2018年のピョンチャンパラリンピックを経験し、2019年から監督を務めている。

パラアイスホッケーの選手は切断や脊髄損傷といった障害があり、専用のそり「スレッジ」に乗り、短いスティックを2本持ってプレーする。それ以外のパラアイスホッケーのルールは一般のアイスホッケーとほぼ同じ。まずは競技の迫力について斉藤キャスターが訊くと、信田は「アイスホッケーと同様、相手とぶつかり合いが許されており、当然激しいスポーツだ。選手が乗るスレッジは金属で出来ていて、金属と金属がぶつかり合う音によりさらに競技が激しく感じる」と説明した。

続けて、下半身に障害のあるパラアイスホッケーの選手たちの目線や恐怖心について、斉藤が尋ねた。すると信田は「健常の(アイスホッケーの)選手たちよりも目線が低く、顔の位置にパック(これをスティックで弾き、ゴールを目指す)が来るので、恐怖心はかなりあると思う」と端的に答えた。とはいえ、信田の口調は穏やかで、徐々に引き込まれていく。

先週末、パラアイスホッケー日本代表は、長野県岡谷市で強化合宿を張った。26日から、ドイツでの世界最終予選で勝つためである。どんなテーマで行ったのかと斉藤が迫った。信田は「ディフェンスプレーを中心に行った。試合を重ねるごとに失点も減り、選手たちの意識も随分高まっていると思う」と振り返った。オフェンスよりもディフェンスに時間を割いたのは、そこが弱点だからなのか?信田は「(9月の)世界選手権Bプールに出場した時、(海外のチームは)どうしても日本チームよりもスピードのある選手が多いので、そうした選手に対応するため、守りをしっかりやろうと今回はディフェンスプレーを中心に行った」と冷静に答えた。

松井アナが「今の日本代表はどんなチームなのか」と訊くと、信田は「実際、ピョンチャンパラリンピックが終わった後、競技をやめた選手が半数以上いて、一時的にチーム力が低下した。でも、プレーを継続した選手たちが新たに競技を始めた選手たちを引き込んで、非常にいいチームを作り、チームで戦おうという意識がある」と紹介した。ちなみに、2018年のピョンチャンパラリンピックで日本代表は8位。その前の2014年のソチ大会は出場できなかったが、2010年のバンクーバー大会では銀メダルを獲得している。長くパラアイスホッケーを応援しているファンは、栄光と挫折の両方を知っているのだろう。

実は、今回、一時的に来年3月4日開幕の北京パラリンピックへの道が絶たれそうになった。9月に行われた世界選手権Bプールで、日本代表は4位となり3位までが出場できる世界最終予選の出場を逃したからだ。だが、優勝した中国が開催国枠で北京パラリンピックに出場することを決め、日本が繰り上がって26日からの世界最終予選に出場できることになったという経緯がある。これを踏まえ、信田は強豪ぞろいの世界最終予選をどう突破しようと考えているのか?「対戦国がそれぞれ特徴のあるホッケーをする。選手たち全員と対戦国の分析をして、当然ディフェンスが中心となるが、得点を獲りに行く時はどんなタイミングで獲りに行くのかをチームで共有して、何とかいい結果を持って帰ってきたい」と意気込んだ。最終予選で、日本はノルウェー、スロバキア、ドイツ、イタリア、スウェーデンとの総当たり戦を行い、6チーム中、2位以内に入れば北京パラリンピックに出場できる。

斉藤が、パラアイスホッケーの日本代表監督としてここだけは譲れない、選手にここを叩きこんでいるという部分について振ると、信田は「アイスホッケーはチームで戦うスポーツなので、自分のやりたいことを我慢し、我慢のシーンが多い。忍耐強いプレーができる選手を育てたいと思っている」と話し、「実際、ベテラン勢に気持ちの強い選手が多く、これから成長が楽しみな若手もそうしたアスリートに育ってもらえれば」と思いを込めた。信田監督は現役時代ゴールキーパーだった。その我慢強さについて斉藤が畳みかけると「キーパーは点数を獲りたくても獲りに行けない。ただ、ゴールから一番リンク全体を見渡せるポジション。(だから、監督としてこれから)いろいろな声掛け、サポートも行っていきたいし、お互いサポートし合える選手になってほしい。選手たちには人間としての成長もしてもらいたい」と願った。最終予選でいい結果が出ることももちろん大切だが、人間としての成長というキーワードに斉藤が反応した。信田は「日本代表には若い選手もいるので、彼らの成長を一緒に楽しんでもらえたら」と1つのパラスポーツの応援の仕方をさりげなく提案してくれた。

東京パラリンピック開催の影響は大きく、今、各都道府県や政令指定都市の障害者スポーツ協会には、「パラリンピックに出るにはどうしたらいいのか」という問い合わせやパラスポーツの体験会への参加者が以前よりも増えている。パラアイスホッケーも例外ではない。信田は「実際にそうした体験会を経て、私たちと一緒にプレーする選手もいる。是非一緒にパラアイスホッケーを楽しんでほしい」と競技の普及についても思いを穏やかに語った。26日からドイツ・ベルリンで始まるパラアイスホッケー世界最終予選で、日本代表には練習してきたことを大いに発揮してもらい、「私もパラアイスホッケーをやってみたい」と思う選手が増えるきっかけとなる試合を1つでも多く作ってもらいたい。

(構成 後藤)

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