オミクロン株はエイズ感染から発生したのか ~吉田たかよし医師が、3つの仮説を検証~

オミクロン株はエイズ感染から発生したのか ~吉田たかよし医師が、3つの仮説を検証~

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新型コロナのオミクロン株で、今、世界の専門家を悩ませる謎がある。
それはオミクロン株がどこでどうやって発生したのかということだ。
変異株はヒトから感染してウイルスがコピーを作り、まれにコピーのミスが起こり、その積み重ねで少し異なる変異株が生まれてくる。
これまでのアルファ株、デルタ株は、その前にある程度感染を広げていた既存の株から少し変異したものなので、いつ変異株が誕生しても不思議ではなかった。ところが、オミクロン株は、その過程が既存のいずれの株とも大きく異なっている。進化の流れを逆にたどると、1年以上に渡って中間段階の変異株が世界中の検査網にかかっていないのだ。これを家系図に例えれば、曾祖父母と自分は存在するのに、その間のが祖父母や両親が存在していないような不可思議なものなのだ。一方で、一度に様々な変異が起こることは、生物学上は考えにくい。

では、どのようにオミクロン株が誕生したのかについて、吉田たかよし医師は、可能性が指摘されている3つの仮説を解説した。どの仮説が正しいのかによって、今後の見通しや収束の仕方は変わってくる。

仮説その1

1つ目は「他の地域との交流が少なく、閉鎖的な集団の中で進化を積み重ねてきたので、ゲノム解析が行われる機会は無かった」とする説。
オミクロン株はおそらくアフリカ大陸のどこかで誕生し、結果的に最も医療水準の高い南アフリカ共和国で最初に発見された可能性が高い。実際、アフリカ大陸は他の地域と比べて、民族同士の交流が少ないケースが比較的多い。さらにはゲノム解析を行う体制も圧倒的に不十分だ。ただし、オミクロン株ほどの大きな変異に至るプロセスがどの検査にも引っかからなかったということは、通常考えにくいのも事実だ。

仮説その2

2つ目は「いったん人間から動物に感染し、動物の体内で進化を繰り返して再び人間に感染した」という説。実際、デンマークの牧場で飼育されていたミンクに人間から新型コロナウイルスが感染し、さらに人間に再感染したという事例が報告されている。この仮説が正しければ、コロナ感染は今後かなり心配と言える。地球上の70億の人類に感染する可能性がある新型コロナウイルスは、ただでさえコントロールが難しいのに、感染対象が動物にまで広がってくるとなると、その対応はさらに難しくなる。仮に完全に抑え込めたとしても、何年か動物の中で進化を繰り返し、突然新たな変異株が出現する可能性もある。
ただし、現段階で、動物で変異したという可能性は低いと思われる。なぜならば、新型コロナウイルスは人間や動物に感染すると、その宿主への感染率を上げる方向で進化しやすい。実際、変異株は人間にどんどん感染しやすくなっている。一方、病原性についてはその宿主と共存するため弱くなる方向に進化しやすいのだ。つまり宿主が元気なら走り回ってウイルスが広がるが、宿主が死ぬと、ウイルスも死滅してしまう。だから動物の体内で進化したら、その動物の感染率は上がり、その動物にとっての病原性は低くなる。
ところが、仮に生物の種が違う「ヒト」に感染したとしたら、通常は感染しづらいが病原性は高いというものができるというのがウイルスに一般的に見られる傾向だ。ところがオミクロン株はこの正反対の現象が起きている。したがって動物の体内で生まれたという仮説も可能性は低いと吉田たかよし医師は指摘する。

仮説その3

比較的有力視されているのが「HIVに感染した人の体内で進化を重ねた」のではという説。アフリカでは、現在もHIVに感染する人の数は非常に多い。
そこにコロナ感染が加わることで、免疫力の著しい低下が起き、長期間体内からウイルスが排除されない。実際、HIVの患者の体内で半年も感染し続けたという例も確認されている。これは、大勢の感染者を経由しなくても、HIVの感染者の体内では、たった1人でも多段階の進化が起こり得ることを意味する。
宿主であるHIVの感染者が死に至らないように病原性を弱める方向で進化し、そして重症化しにくいというオミクロン株の特徴に見事に合致する。
さらに風邪のウイルスとの遺伝子組み換えも指摘されているが、これもHIV感染で起こりやすい現象だ。この仮説が正しければ、人間とコロナの共存にかなり近づいたと言える。

とは言え、感染対策は怠らずにして欲しい。そして、何よりも、HIV感染者への偏見は決して持たないで欲しいと吉田たかよし医師は力説する。
ちなみに、国内のHIV感染者は優先接種の対象で、ほぼ全て新型コロナワクチンを接種し、かつ感染対策もしっかりしていることも付け加えておきたい。

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