通常国会召集 岸田総理 覚悟がみえない施政方針演説~ ニュースパレード  山本香記者取材後記

通常国会召集 岸田総理 覚悟がみえない施政方針演説~ ニュースパレード 山本香記者取材後記

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 文化放送をキーステーションに全国33局で放送中「ニュースパレード」(毎週月曜日~金曜日午後5時00分~5時15分)

 その日に起こった最新の話題を中心に、幅広い分野にわたってニュースを紹介しています。昭和34年の放送開始以来、全国のラジオ局の強力なバックアップで、特派記者のレポート、取材現場からの中継など、今日最も重要なニュースを的確に把握し最新情報を伝え続けています。

 文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。

 



 

 

増税国会

 

 

第211回国会が1月23日に召集された。増税国会の幕開けだ。

 

今国会の注目は防衛力増強と異次元の少子化対策。どちらも巨額な財源が関わる課題だけに、増税の是非が焦点となる。岸田総理は施政方針演説で、待ったなしの課題と位置づけたが果たして国民にはその決意はどのように届いたのだろうか。

 

 

言葉足らず

 

野党からは手厳しい声が相次いだ。

 

 

立憲民主党の泉代表は「増税隠し演説、増税という言葉を使わずに演説した見事な言葉遊びだった」と批判した。

 

 

日本維新の会の藤田幹事長は、「キャッチフレーズだけで中身がない」。

 

一方、共産党の志位委員長は「自ら戦後の安全保障政策の大転換をやろうとしながら全く説明がない」と述べ、今後の国会論戦の場での対決姿勢を全面にした。

 

 

その岸田総理の施政方針演説だが、まず「防衛力の抜本的強化」については、5年間で43兆円の防衛予算を確保すること、将来にわたって維持強化するため、毎年4兆円の新たな安定財源が追加的に必要とした上で「将来世代に先送りすることなく、今を生きる我々が、将来世代への責任として対応してまいります」とこれまでの発言を繰り返しただけで、増税や国民負担という言葉を避けた。

 

また、最重要政策と位置付けた「こども・子育て政策」については、「6月の骨太方針までに、将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示する」と力を込めた。倍増させるというこども・子育て予算の財源についても、与野党超えて増税やむなしとの懸念の声はやまない。しかし岸田総理は演説で「安心して子供を産み、育てられる社会を創る。すべての世代、国民皆にかかわる個々の課題に、共に取り組んでいこう」と呼び掛けるだけで、具体的な政策メニューの案すら語らずじまいだった。

 

岸田総理がこのところ、繰り返し口にしていた「異次元の少子化対策」という表現について、自民党内からも「何をしたいのか伝わらない、意味がわからない」と不評を買っていたこともあってか、演説では「次元の異なる政策」と言葉を入れ替えた。しかし違和感は変わらない。ある与党関係者からは「異次元は総理のほうだ」という皮肉ももれていた。

 

肝の部分に触れないまま終わった演説について立憲民主党の泉代表は「後ろ暗さがあるんだろう」と分析する。

 

演説の最後で「未来に希望を持てる、そんな日本を創っていきたい」と語った岸田総理だが、全体的に舌足らず。国民に協力を呼びかけながら、増税という痛みにふれない演説からみえる未来は、国民からは何色にみえるのだろうか。

 

 

今国会から、衆議院本会議場の演壇と飛沫防止のための巨大なアクリル板が設置された。

これにより、登壇して発言する際にマスクは不要となった。さらに国会の速記者も久しぶりに本会議場に姿を現した。演壇の目の前にある席で仕事をする速記者は、感染防止対策のため、表に出ないで仕事をしていたのだが、表情がみえずに速記だけするのはやりづらいという声も上がっていたという。表情は、時に言葉より雄弁に語ることがある。それが偽りやまやかしでないことを祈るばかりだ。

 

感染防止対策が緩和される中、国会の花と呼ばれる「ヤジ」も戻ってきつつある。

国会冒頭、細田議長が衆議院本会議場に姿を現したとたん、野党席からは「まだ、いるのか」と大きな声が飛んだ。旧統一教会やセクハラ疑惑について、公開での説明を拒み続けている細田議長に対し、立憲民主党の安住国会対策委員長は召集日の午前のぶら下がり会見で、この日の天気に絡めて「説明しないとずっと細田議長の上に雨雲が垂れたままになる」と批判した。

日本国憲法第43条に「両議院は、国民全体を代表する選挙された議員でこれを組織する」とある。三権の長である細田議長のみならず、国会議員全員が国民の代表としての重い責務を負っている。にもかかわらず、国会幕開けから議員としての行動が問題視される事態となっている。

 

当選してから一度も国会に姿を現さず歳費をもらい続けているNHK党のガーシー氏に対し、23日の参議院議員運営委員会は、国会法にのっとり、改めて出席を求める文書をNHK党に通知した。

自民党の鶴保庸介参議院議員は、旧統一教会の会合に出席し、挨拶していたことが判明した。開会式前に記者の取材に応じ、週刊誌報道を内容を認めたが、昨年の自民党内の調査では教団との関係について「なし」と回答していたことへの矛盾は払拭されていない。

また週刊誌で報じられた日本維新の会の中条きよし参議院議員の年金未納問題について、藤田幹事長が訳750万円の未納があると記者会見で認めたが、中条氏本人は、記者の問いかけに応じようとはしなかった。いずれも説明責任は果たされていない。

 

国会の正面玄関を入ったところにある大広間には台座の上に3人の政治家の像が設置されている。

板垣退助、大隈重信、そして伊藤博文の像である。しかし、広間にはもう一つ、誰も乗っていない台座がある。なぜ一つだけ開けられたままなのか、その理由は諸説あるが、最も有名なのは「政治は未完の象徴」。つまり常に精進せよという意味を込めたという説だ。この空いている台座に、国会召集の日のみ乗せられるものがある。

 

それは松の盆栽である。

 

 

国会の衛視さんから「板垣、大隈、伊藤に続く4人目の偉大な政治家を待つ(松)」という期待を込めておかれているのではないかという話を聞いたことがある。

国民の代表が一堂に集い、国民のための議論を行う国会が始まった。国の行方を左右しかねない重要な課題を前に、どのような論戦を交わし、結論を導き出していくのだろう。

 

召集日の松は、苦難の時でも志を失わない、歳寒松柏(さいかんのしょうはく)の精神を忘れないようにという期待も込められているのかもしれない。

 

 

 

 

「ニュースパレード」は「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」内、平日午後5時~5時15分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

また「ニュースパレード」はPodcastでも配信しています。

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