文化放送

鎌田實×村上信夫 日曜は頑張らない

鎌田 實
鎌田 實
(かまた みのる)

医師・作家。1948 年東京生まれ。
東京医科歯科大学医学部卒業。
37年間、医師として地域医療に携わり、チェルノブイリ、イラク、 東日本の被災地支援に取り組む。2009 年ベスト・ファーザー イエローリボン賞(学術・文化部門)受賞。2011年日本放送協会 放送文化賞受賞。
ベストセラー「がんばらない」をはじめ、「なさけないけどあきらめ ない」「ウェットな資本主義」「アハメドくんのいのちのリレー」 「希望」(東京書籍) など著書多数。
現在、諏訪中央病院名誉院長。

村上 信夫
村上 信夫
(むらかみ のぶお)

1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や
『鎌田實いのちの対話』など、
NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を講演で回り「嬉しい言葉の種まき」を
しながら、文化放送『日曜はがんばらない』
月刊『清流』連載対談などで、新たな境地を開いている。
各地で『ことば磨き塾』主宰。
http://murakaminobuo.com

過去の記事

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2016年8月29日

8月28日 第223回放送

人は外界の情報の8割以上を「視覚」から得ているといわれています。全盲で生まれた
子の最大の情報源は最も身近な母親です。今回は15歳の全盲シンガーソングライター
佐藤ひらりさんと母親の佐藤絵美さんを迎えて「長所を伸ばす子育て論」の座談です。

ひらりさんは「視神経低形成」により生まれた時から見えません。絵美さんはラジカセ
で童謡を聴かせたり、楽器を側に置いて愛娘が物心つく前から音楽に親しむ生活環境を
創りました。ひらりさんは音を正しく知覚・再生する絶対音感の能力を発揮し、相手が
話す言葉の音階を玩具のピアノで再現してみせました。5歳の時、保育園の電子ピアノ
に内蔵されていた美空ひばりの曲に興味を示し、1本指で弾きながらひばりそっくりに
歌って周囲を驚かせたといいます。それを機にひらりさんはピアノを習い始めました。
9歳の時に初めてのオリジナル『みらい』を作詞・作曲。東日本大震災の被災地を慰問
コンサートで訪れているうちに、私も何かできないかと思い立ち作り上げた作品です。
競輪とオートレースの補助事業「RING!RING!プロジェクト」が支援している
『ゴールド・コンサート』という障害をもつ音楽家のコンテストにひらりさんは出場。
2010年に史上最年少で「歌唱・演奏賞」と「観客賞」をダブル受賞し、翌年グラン
プリを獲得。以降、シンガーソングライターとして注目され、テレビ・ラジオを通じて
全国にその歌声は知られるようになりました。2013年にはニューヨークの「アポロ
シアター」に出演。音楽イベント「アマチュア・ナイト」に挑戦して「ウィークリー・
チャンピオン」を獲得。ひらりさんは母親と二人三脚で得意な音楽活動に勤しみながら
チャリティや福祉活動に参加して、人々に希望と感動を与える歌声を披露しています。

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放送日:2016年8月28日

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2016年8月22日

8月21日 第222回放送

鎌田さんと村上さん2人が揃って敬愛する永六輔さんが「七夕の日」に旅立ちました。
「想い出を語って欲しい」という聴取者からのリクエストがあり、鎌田さんも発起人に
名を連ねる『六輔永(なが)のお別れ会』が8月30日に東京・青山葬儀所で開かれる
ことも決まったので、その案内を含めて今回は『ボクたちの永六輔さん』を語ります。

「虫の知らせ」なのか?永さんが亡くなった直後に鎌田さんは永さんの自宅に電話して
家族が「なんでわかったんですか?」と驚いたエピソードを紹介。検査入院でデータが
取れたのは身長と体重だけという徹底して病院と治療が嫌いな永さんですが、鎌田さん
には胸襟を開き助言を聞き入れたので、在宅での療養に切り替えることができました。
当番組には2013年5月にゲスト出演され「人間の死には2つある」と説きました。
生き物として死んだ時と、覚えている人がいなくなった時。故にその人を忘れない限り
その人は存在している。故人の思い出を語るのも供養の1つで、遺志を受け継ぐことに
なるので、ラジオを通して大切な事を伝えていかなければならないと力説されました。
鎌田さんと村上さんはそれぞれに教えを乞うたことを思い出します。憲法99条の意味
と大切さを教えて貰った鎌田さん。「普段着で話すことの大切さと難しさ」を教わった
村上さんはうまく話そうと形に捉われていたことを省みて、判断を聞き手に委ねるラジ
オの特性を知り尽くした人から教わったことは多々。極め付きは「トキが亡くなった」
発言で、NHK局内で四面楚歌になった時にその窮地を救ってくれたのが永六輔さん。
永さんの優しさは「パーキンソン病のキーパーソン」と駄洒落まじりに持病を吐露して
全国の同病者を励まし続けた逸話などを紹介しながら、偉大な永六輔さんを偲びます。

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放送日:2016年8月21日

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2016年8月15日

8月14日 第221回放送

子供の頃に読んだ絵本。大人になった今だからこそ読んで気付く絵本の魅力があります
そして、絵本は言葉を超えたメッセージを伝えることができます。あすの終戦記念日を
前にして、鎌田さん村上さん推薦の「いのちの絵本」と「平和の絵本」を紹介します。

まずは『希望の牧場』(岩崎書店)作:森絵都、絵:吉田尚令。福島第一原子力発電所
から14キロ地点にあり、警戒区域内に取り残された牧場には放射能を浴びた300頭
を超える売れない牛がいます。牛飼いの吉澤さんは売れなくてもエサを与え続けます。
彼が土地を離れない理由は?生き物が生きるって何か?考える切っ掛けになる絵本です
続いて『せんそうしない』(講談社)作:谷川俊太郎、絵:江頭路子。「ちょうちょと
ちょうちょは戦争しない」以下、きんぎょ・くじら・すずめ等々同じ種同士でも例え種
が違っても、人間以外の地球上の生き物は誰も戦争しないのに、なぜ人間の大人だけが
戦争をやめられないのか?人間の知恵はどこにあるのかを、静かに問いかける絵本です
3冊目は『ぜっこう』(ポプラ社)作:柴田愛子、絵:伊藤秀男。ガクはシュンタロウ
と絶交した。ガクは自分勝手なシュンタロウを許せない。元気がなくなっても遊ばない
と決めたガク。子共同士のぎりぎりの関係を描きながら、実は人が人を許すとは何かを
問います。仲裁する先生に「泥棒は許せるのか?人殺しは許せるのか?」と問います。
最後に『かないくん』(ほぼにちの絵本)作:谷川俊太郎、絵:松本大洋。物語は少年が
同級生の死を知らされるところから始まります。人は亡くなるとどうなるの?どこへ行
くの?「死」ってなんだろう?級友の死をテーマに谷川さんが一晩で書き上げた作品。
子供に命や戦争を伝えるのは難しいが、最小限の言葉で本質を表現するのが絵本です。




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放送日:2016年8月14日

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2016年8月 8日

8月7日 第220回放送

リオデジャネイロ五輪が開幕。「スポーツを通して平和的思想を尊重する」という近代
五輪は「平和の祭典」とも呼ばれます。きのう8月6日はヒロシマそして8月9日には
ナガサキに原子爆弾が投下され、多くの犠牲者が出ました。きょうは平和を考えます。

ゲストは女優の高田敏江さん。ドラマ「チャコちゃん」シリーズのお母さん役や『劇団
民芸』の舞台で活躍され現在81歳。「昭和10年生まれの戦中派」という高田さんは
31年前から毎夏、朗読劇『夏の雲は忘れない1945・ヒロシマナガサキ』をライフ
ワークとしてひたむきに公演を続けてきました。『夏の雲は忘れない』は昭和20年に
ヒロシマとナガサキに落とされた原爆によって父母を亡くした子供、子を亡くした両親
の書き残した手記、アメリカ人従軍カメラマンのジョー・オダネルの手記『トランクの
中の日本』を女優達が朗読するイベントで背景に映像と音楽と照明のシンプルな構成。
被災した父母や子供達の手記・記録は、被爆者たちの悲惨な体験だけではなく、人と人
の絆、愛情の深さを伝え明日への希望に溢れています。地方公演や中学生を対象にした
公演を続け、朗読の前後には観客との交流会を設けて、感想や意見交換をしています。
中学生は「普段の何気ない生活がいかに大切かを学んだ」と異口同音に口にするといい
朗読劇から多くの若者たちが自分のこととして考えてくれるきっかけを作っています。
また、きのう広島市長が読み上げた「平和宣言」で5月のオバマ大統領の演説の一節を
引用し「核を保有する国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器のない世界を追求する勇気
を持たなければならない」と訴えました。被爆者の方々は大統領の広島訪問を歓迎する
一方、鎌田さんは「オバマ大統領の再訪を求む」という声があることも紹介しました。

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放送日:2016年8月7日

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2016年8月 1日

7月31日 第219回放送

「不幸というものは状態で、一度居座ったら動かすのは困難だが、幸福は状態ではなく
瞬間の中にしか存在しない。一瞬一瞬煌めいて消え去るもののような気がする。別れた
のに子どもが産めたのは、付き合っている時間は短かったにもかかわらず、幸福だと思
える時間がたくさんあったからだ。」柳美里さんの私小説『命』(新潮社)一部です。

不倫の果てに妊娠し、男と別れた彼女はかつての恋人『東京キッドブラザーズ』主宰の
東由多佳さんのもとに身を寄せて子育てを考えるが東さんは末期がんに侵されていた。
生まれてきた子の「生」と東さんに迫る「死」。柳さんの作品は、家族や死にこだわり
続けていますが、それは彼女の「生い立ち」や周囲の「環境」に深く関係しています。
幼少期のいじめ、家庭内暴力、両親の離婚による家族の崩壊、自殺未遂。激烈な思春期
を送った柳さんは、人生そのものが小説のようで「いのち」を問いかける生き方です。
福島県南相馬市に震災直後から通い続け、昨年4月長男の高校入学に合わせて移住した
柳美里さん。なぜ被災地に移住を?母親が少女時代を過ごした会津の集落がダム建設で
消えた故郷喪失の記憶と、原発事故で故郷を離れざるをえなかった被災地の人の思いを
近くで感じながら、在日三世の自分にとっての故郷とは何かを考える町として選んだ。
柳さんは、南相馬市のラジオ局「ひばりFM」で番組を担当したり、高校で国語の特別
授業の教壇に立ったり、地域の公的イベントにも参加してすっかり溶け込んでいます。
柳さんの新刊『ねこのおうち』(河出書房新社)は、生後1日で捨てられたニーコと仔
猫たち。そして彼らと関わった人間たちの物語で、皆何かに捨てられた人たち。どこか
捨てられた猫たちの境遇と重なり、彼らと猫たちの生が交錯した時に合点できる物語。

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放送日:2016年7月31日

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