授乳論争はドイツでも勃発!日本は「生々しい」ドイツは「エロい」武田砂鉄が聞く
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝のラジオ番組、『武田砂鉄 ラジオマガジン』。6月29日は、月曜レギュラーでドイツ出身の翻訳家・エッセイストのマライ・メントライン氏とトークを繰り広げた。
マライ「今日のテーマは、続・授乳ケープ論争と母乳の話です。先週、勅使川原さんがラジオマガジンで授乳ケープの問題について紹介しました。あるお母さんが、カフェで授乳ケープを使って赤ちゃんに授乳したら、店員に「たくさんの人がいますので…」って、ちょっと曖昧なこと言われて、まあ、注意されたんです。そのお母さんが反省の気持ちをSNSに投稿したら、さまざまな反響があったっていう話です。公共の場での授乳ケープの使用の是非について、批判的な意見も結構ありました。それは、「不快に感じる人もいるから…」っていうのが中心でしたよね。その不快さっていうのは何なのかっていうと、多数派っぽい人たちのお気持ちなので論理的に否定するのも難しいですよね。そうなると同調圧力の材料――マスクポリスみたいなものですよね――になるよねっていう話でした。その場で多数派っぽいやつを正義としてしまえば最終的に個性を潰す流れになる。だから、これ、やばくないですかっていう内容で、ものすごく良かったので、ポッドキャストとかYouTubeで聞くことができるので超オススメです」
武田「生理的嫌悪とか、そういうことを言う人がいたっていうので、そんな言葉が出てくるかって、ちょっと引いちゃいました」
マライ「結構驚きました。驚いたんですけど、驚いた理由の一つは、なんと全く同じようなタイミングでドイツでも同じことが起きてたからなんですよ」
武田「あらま」
マライ「これはドイツでも騒動になったんですよ。舞台は南ドイツ、ザールブリュッケンっていう街のショッピングモールで、女性がベンチで授乳したんですね。そこにセキュリティスタッフがやってきて、モールを出て行くように促したんですね。女性は驚いて、そのことを助産師に話したんです。その助産師がこのことをSNSに投稿して話題を呼んだっていう話です。なんで助産師に話をするかっていうと、ドイツの助産師は出産前から自分を担当してくれるんですね。話し相手にもなっていて、赤ちゃんが生まれてからもいろんな相談にのってくれるので、こういうような話があったんだって助産師に相談するのは結構あると思います。結局、モール側が謝罪したんですけど、もう遅いっていうか、SNSで、やっぱりいやなコメントがたくさんついたんです。授乳しなくていいじゃんみたいなね」
武田「授乳しなくていいじゃん?」
マライ「トイレでやったらいいじゃんとか、そんなの見たくないよとかね。そういうコメントに抵抗するために、ある写真家がそのモールの中で授乳する女性たちを写真に撮ってインスタグラムにアップしたんです。この写真シリーズもまた話題になったんですが、それにしてもいやな気持ちになるっていうのは、何なんだろう? 多分、理由が2つあるんじゃないかな。「生々しい、イコール、キモイ」と、あるいは「エロい」というのがある気がします。勅使川原さんの場合は、生々しいという表現があったと思うんですけど、すごく日本的な表現だなあと思ったんですよね」
武田「生々しいってのはなんなんだろう?」
マライ「そう、なんなんだろうって。ワタシは日本語を再定義する本を出してるんですけど、「生々しい」も扱いたいって思いました」
武田「生々しいって、我々、歩いたり座ったり立ったりしてるやつは、生が歩いたり立ったりしてるわけだからね。生きてる体っていうのは常に生々しいけど、どういうことなんだろうね」
マライ「で、調べました。「状態や記憶がまだ新しく現実感がある。あるいは露骨な金額」っていうのもそうなんですね。生々しい金額。そっちか、みたいな(笑)」
武田(笑)
マライ「生々しい感情とか、どっちかっていうと、もともとそういう使いかたをしてたと思うんですけど、最近は違うんですよね。生々しいっていうとネガティブなものですよね。なんか見たくない生理現象とか。あと、もっと感覚的なもので、こっちの感情領域に勝手に入ってくるなっていう、そういう感じかなってワタシは思ったんですよね。だから授乳ケープ論争で、生々しいから嫌だっていうのがすごく気になって」
武田「でも、公共空間で人が暮らしていれば、感情領域っていうのは、入り込んだり外に出たりってことの繰り返しなわけですからね」
マライ「そうなんですよね」
武田「別に、急に家に入ってきて何かするわけじゃないですからね。そこは不思議だなと思いますね」
マライ「しかも、この場合、授乳ケープじゃないですか。ドイツはちょっと分かんないですけど、日本だと授乳ケープだったので、そのケープの下で胸が露出されていた。でも、服の下に体があるのは当たり前じゃないですか。ドイツの場合だとまた話が違っていて、生々しいってワードではなく、問題になってるのは「エロい」なんですよね。それもまた困るっていうか、自分のおっぱいですよね。赤ちゃんが飲むためにあるものなので、それがエロいって言われたら、この場面でこの文脈で見るなよって思っちゃうんですけどね」
この続きはradikoのタイムフリー機能でお聴きください。
「武田砂鉄 ラジオマガジン」は月曜~木曜 8:00~11:30、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。
関連記事
この記事の番組情報