「税金を使わず芸術を渡す」 ニューヨーク市や仙台市の実例

「税金を使わず芸術を渡す」 ニューヨーク市や仙台市の実例

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フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。10月1日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの日本文学者・ロバート キャンベルが、ニューヨーク市や仙台市などで芸術をテーマに行われているユニークな試みを紹介した。

ロバート キャンベル「最近、ニューヨークのマムダニ市長がですね、次々と面白い政策を打ち出し、本当に発信上手というか、自分が実際に何をやっているかということを、動画を使ったりいろんな方法で紹介しているわけですけれども、先週僕が見てちょっとハッと驚いたのが、メトロポリタンオペラ。これ、リンカーンセンターにある、本当にニューヨークのオペラの殿堂ですけれども、僕が育った街なので、高校生ぐらいの時に時々母に連れて行ってもらっていたんですけれども、本当に高いですね、オペラって。
やっぱりすごく高貴というか高級な芸術で、僕が育ったブロンクスに住んでる人で、メトロポリタンのオペラに行く人って、ほとんどいないんじゃないかなというぐらいに、お金持ちの芸術という感じがあるんですけれども。
マムダニさんが『それはいけない』と、オペラという素晴らしい芸術を全ての人、銀行にどれぐらい自分の残高があるかということも関係なく見てほしいということで、メトロポリタンオペラと協業をして、1年間に7万席のチケットをニューヨーク市民にあげるんです」

武田砂鉄「無償で?」

キャンベル「無償で。これは条件がありまして、ニューヨークに住んでいるということと、もう一つ、2019年以来オペラを見ていない、つまり自力で行ってない。リピーターたちではなく、初めてオペラを見に行くっていう人たちなんですね。
で、そのために動画を作って自分が実際にメトロポリタンのオペラに行って、役者っていうか、その歌手たちの間に入って趣旨を説明をするという、素晴らしいショート動画を作っているわけですけれども、この目標が何かというと、とにかく全ての人たちにこの芸術を味わって、そしてこの社会の中に自分の立場があるということを伝えるということですね。
これすごく興味深いことが、これは誰でもどの自治体でもお金を払えばできるわけですけれども、実はこれは税金を1セントも使ってないわけで、メトロポリタンオペラはシーズンチケットを買う人が多いわけですけれども、空席があるわけですね。
この空席の中からそれを全くオペラ座としては全然損せず、予想されるその席数の計算をして、7万席っていうことです。
毎月1万席っていうふうに決めていて、拠出したんですね。ですからオペラとしては安いところは本当に6000円ぐらい。一番3階席ぐらいから見れるんですけれども、高いところだと5万円ぐらいですね。
1人にもう、バラバラにどこにその席があるかということが知らされずにいきなり当たっているプレミアム付きのかぶりつきの席かもしれないし、3階席かもしれないんですけれども、それが配られていくということです」

武田「へえ~」

キャンベル「それのお返しとして何かをしないといけないということはないわけですが、期待していることが、市としては自分たちの教養であるとか、共通の話し合えるようなトピックっていうか、つまり社会を結び合わせるための効果っていうことを狙いたいっていうことと、オペラ座としては一度来ればもう一回自分で自腹で来るかもしれないと、ファン数の拡大を狙うということも、まさにウィンウィンという形になっているわけですね。
これは交換ではなくてですね、一種の公金を使わない、一種のオペラ座とニューヨーク市が条件を揃えてまあシートロスというか空席がないように渡しているわけですけれども、日本ではですね、最近もすごく注目したいなと思っているのが、こう貨幣とか紙幣が介在しないアートっていうものが、結構いろんなところであるわけですね。
私は仙台市で『せんだいメディアテーク』っていう、文化施設の館長をしています。それは定禅寺通という目抜き通りにありまして、欅の木がたくさんあって杜の都のイメージにぴったりですけれども、先週から『定禅寺アートストリート』というイベントが行われているんですね。
それはいろんなアーティストたちのインスタレーションを、街の中で参加できるような、味わえるようなことをやっているわけです。
その中に笹原晃平さんというアーティストがいまして、『ポストポン』という作品を作っているんですね。『ポストポン(postpone)』というのは、英語で『先延ばしにする』とかいう意味なんですが」

武田「好きな言葉ですね、先延ばし」

キャンベル「先延ばし、いいですよね。『精算を先延ばしにする』ということですね。つまりアートに触れたいし、いろんな社会経験をしたいし、交換をすること自体が作品になるんじゃないかというふうに思っていて。今、定禅寺通に行きますと、すごくおしゃれな小屋が2つあって、1つがチケットセンター。そこに行って子どもたちがチケットをもらいます。それは子どもでないといけないんですけど、子どもがチケットをもらって市内に14ヵ所の飲食店に行くと、無料で食事ができるということです。
安定的に子どもたちに食事を与える子ども食堂ってありますけれども、それとはちょっと趣が違っていて、1回きり、子どもが、例えばうなぎ屋さんだったり寿司屋さんだったり家庭料理屋さんだったり喫茶店だったりとか、おそらく小学生や中学生が1人で行かないお店ですね。そこに行って注文をして食べて、そのチケットを渡すんですね。
そのチケットを半分にちぎって、子どもが自分の半券をチケットセンターに戻します。そしてそのお店がですね、その手元に残った半券を、後日チケットセンターに戻してお金をそこでもらうんですね、笹原晃平さんたちから。
そこで一応食事はできてるわけですね。子どもたちの社会参画とか、そういうことにもなるし、子どもたちがそこに買いに行くという風景があって、大人たちがそれをちょっと遠まきに結構見てるわけですね」

「定禅寺アートストリート」については、この後もロバート キャンベルさんが詳しく紹介しています。気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください。

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