
「あんこのない饅頭はおいしいのか?年金改革法案ようやく提出」
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文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。
国会への提出が遅れに遅れていた年金制度改革法案が16日、ようやく閣議決定、国会に提出された。
本来なら3月14日に提出することになっていたが、夏の参議院選挙を控え、自民党内の調整が進まず、
法案をだし渋るという状態が2カ月にわたって続く異例の事態となっていた。
法案は、パートなどで働く人が厚生年金に加入するための106万円の壁を撤廃するほか、
一定の所得がある高齢者の年金受給額を抑える在職老齢年金制度の見直しなどが盛り込まれた。
ただ当初、目玉として入っていた厚生年金の積立金を使い、目減りする基礎年金を底上げする案は削除された。
年金改革法案について自民党内からは、基礎年金底上げのために「厚生年金を流用するのは筋が悪い」という声のほか、
「参院選まえに年金にさわるなということだ」「選挙の前に国民にとって耳の痛い話はすべきじゃない」
さらには、「2007年の「消えた年金問題」で自民党大敗の記憶が蘇ってくる。出すべきじゃない」など、
法案提出に否定的な意見が噴出していた。
自民党の都合で削除されたと言わざるを得ない年金改革法案について、野党からは厳しい批判が相次いでいる。
立憲民主党の野田代表は「基礎年金の底上げ部分が抜けていて、『あんこ』の入っていないアンパンだ。
年金制度の話が先送りされることは、将来に禍根を残すことになる」と批判。
一方、日本維新の会の前原代表も、基礎年金を引き上げる対応がない。
就職氷河期世代の不安はますます高まるとした上で「法案には到底賛成できない」と断じた。
国民民主党の玉木代表は、年金改革法案が自民党で了承された13日の会見で
「饅頭の餡のほとんどを抜いて皮だけ出しても多くの将来不安を解消する改革になっていない」と述べ、
参議院選挙の争点になると指摘した。
野党が批判する「あんこ」の部分をどうするのかが今後の議論の焦点となる。
自民党の石井参議院国会対策委員長は「取り除いた餡を戻すのか、新たな餡を詰め込むのか、
それとも小豆から作り直すのか、修正案も含めて見守っていきたい」と述べ、修正協議への期待を示した。
しかし修正協議の行方は見通せない。6月22日の会期末まで1カ月余り。参議院での審議時間を考慮すると、
遅くても6月初めの衆議院通過は不可欠で、与野党ともに審議入り前から成立を危ぶむ声が出始めている。
そんな中、ある野党幹部は「今国会で成立しないほうがいい」と主張した。その理由について聞くと、
「小豆を煮詰める時間もない。そんな饅頭は食べられたものじゃないし、国民も食べたいと思わないだろう」と説明した。
年金改革法案は20日に衆議院本会議で審議入りする。
時間も、知恵も限られる中、与野党が力を合わせて
おいしい「あんこ」を作りだすことができるのか、政治の力が試される。