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2015年8月14日 風々吹くな~日航ジャンボ機墜落事故から30年

2015年8月12日。
御巣鷹の尾根に、日本航空123便が激突してから30年となりました。
今年も、ご遺族や日本航空の関係者らが慰霊のための登山を行いました。
急な斜面には「足場」として材木が並べられたほか、
工事作業車専用だった道路も解放されて途中までは車で行けるようにはなりました。
しかし高低差180メートルの急な山道は、決して楽ではありません。
恥ずかしながら私も何度か足を休め山頂を見上げました。
斜面には数えきれぬほどの墓標やお地蔵さんが佇んでいました。
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30年の間にはご遺族もお歳を重ねられ、お子様を亡くされたお父さんお母さんも80代のかたが目立ちます。登山口に用意された杖にすがるように、息も絶え絶えに登られます。愛おしそうに小さなお地蔵さんの頬を両手で包んだ80代の女性は「もうこれで最後かもしれないね」と語りかけました。

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「昇魂之碑」周辺にたどり着けば、小さな広場が整備されています。
午前10時半、ご遺族のみなさんはここで「安全の鐘」を鳴らし、子どもたちが空に向けてシャボン玉を飛ばしました。「風々吹くな、シャボン玉飛ばそ」とても穏やかな光景です。
でも、この歌詞は悲しすぎます。
娘さんを亡くされた81歳のお母さんが思い出すのは、ここが臨時のヘリポートであった時の光景です。ここは機体の機首部分が激突た跡地です。お母さんはここから南東の方向に目をやりました。遥か向かいの山の稜線が一部だけ凹んでいるのがわかります。
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真横になって突っ込んできたジャンボの、右の主翼が削り取ったあとです。乗務員は最後まで、垂直尾翼を失った機体を立て直そうとしていました。当時正確な墜落時間が判明するまでに16時間。お母さんは「娘には外傷がほとんど見られませんでした。ですから早く救出されていれば助かったかもしれないと思ってしまいます」と打ち明けました。
今、ここにいないのと同じだけの確かさで、娘さんはあの日「行ってきます」と出て行ったのです。
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尾根の登山道等を管理し続けている黒沢完一さん(72歳)は遺族の高齢化とともに追悼施設を訪れる人が減ってきたと教えてくださいました。あの時、捜索や救出に村を挙げて協力した上野村の人口も半分ほどになったといいます。ただ、その一方で祈りを捧げる人たちの中には、日航機事故だけでなく、鉄道やバスの事故、震災で命を失った人たちの遺族の姿も見られるようになりました。
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日航機事故の遺族会(8.12連絡会)の皆さんは、これまでの30年間、ただ打ちひしがれるだけではなく自ら調査研究活動も行い、公共輸送事業者に対して抜本的な安全対策を要求してきました。そうした姿勢に共鳴して、ほかの事件事故の遺族同士の交流も深まっているのです。この日も東日本大震災の津波で息子さんを亡くされた紫桃隆洋さんにお会いしました。「命の大切さを語り継ぎ、声を上げ続けることが、公共交通や学校の安全意識を変えると思います」と話しました。9歳だった健君を亡くした8.12連絡会の美谷島邦子さんは言います。「失われた命を生かしたいのです」
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この事故では事故の関係者20人が書類送検されるも全員が不起訴になり、責任の所在は曖昧なままとなりました。私がかつて群馬県警の担当記者だったころ、膨大な資料を広げ「後世に残る捜査をしようと思った」と話してくださった当時の担当警察官も亡くなりました。
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慰霊碑に献花した日本航空の植木社長の囲み取材で、日航の広報担当者が「もう質問はありませんね」と切り上げようとした時、最後に質問をぶつけてみました。
「社長はあの日のことをどのように覚えているのですか?」

一瞬、不意を突かれたような表情になった社長は遠い目をして答えました。
「事故の翌日、私は副機長としてフライトしなければなりませんでした。事故のショックで操縦席に座ってからも動揺を隠せず足が震えました。
しかし、隣に座る機長を見ると、いつもと変わらず凛とした表情で乗務していました。その時、どんな状況でも安全を守り抜く機長になろうと決意しました」
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日航内でも社員の9割以上が事故後の入社です。
新入社員に至っては生まれる前の事故になりました。
安全への誓いを若い世代にどう伝えるのか、その重要性が益々高まっています。

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文化放送報道制作部では「ニュースパレード」を中心に、日々のニュースをお伝えしています。

その一方で、私たちの周りには普段のニュースでは伝えきれないような話が溢れています。

それをお伝えする場所が、このリニューアルしたブログ。
部員それぞれがゆるやかに伝えていきます。
ニュースの「おまけ」として楽しんで頂ければ幸いです。
よろしくお付き合いください。

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