ロバート キャンベルが歌舞伎を観て考えた『義』——国内外で起きている民衆デモの意義

ロバート キャンベルが歌舞伎を観て考えた『義』——国内外で起きている民衆デモの意義

Share

フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。7月23日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの日本文学者・ロバート キャンベルが、先週末に見た歌舞伎と、この1週間に国内外で起きた出来事の関連性について語った。

ロバート キャンベル「先週18日の土曜日に、『七月大歌舞伎』、歌舞伎座に夏芝居を見に行ったわけですね。場内は立錐の余地もなく満員御礼。
ものすごくたくさんの人が駆けつけていた理由は、今年82歳になった片岡仁左衛門さんが、ほぼ50年ぶりに7月の芝居、歌舞伎座に出るということで、しかもこれ非常に重厚な時代劇なんです。
これは昭和初期に、真山青果が7年かけて書き上げた『元禄忠臣蔵』、その一部である『御浜御殿綱豊卿』という芝居に、主役の一人である徳川綱豊卿として出演したということです。
この芝居は『赤穂浪士事件』ですね。元禄14年、江戸城内で浅野内匠頭が吉良上野介に名誉を傷つけられたということで、刃傷に及び即日切腹。
そしてその翌年に赤穂浪士が、すべて家が断絶ということになって散り散りになっていくわけですね。
で、『四十七士』と言われる浪士たちが、自分たちの殿様の名誉を回復しようと吉良上野介の仇討ちを狙うわけですが、これ有名な事件ですよね」

武田砂鉄「はい」

キャンベル「で、この『御浜御殿綱豊卿』という芝居なんですが、後の六代将軍家宣になる徳川綱豊という政治家のお屋敷、この文化放送のすぐ近くにある浜離宮……当時は『御浜御殿』って言うんですけれども、そこに浪士の一人、富森助右衛門という人が忍び込んで、対面をするというお話なんですね。
で、その綱豊がこれから将軍になるかもしれないから、大手を振って『仇討ちをして、正義を回復せよ』ということは言えないわけですね。
だけれども、本心は、浅野内匠頭はやはり正しく、吉良上野介の非……不正があるから代償を払わせなければならないという思いがあって、アウトサイダー(浪士)と政治家が対面をして、結局綱豊、仁左衛門さんがですね、最後に切々と『義』、つまり正義とはどういうものなのかということを説いて返すわけですね。
これすごく感動的で、ギリギリのところで政治家が本当はその想いを公表はできないけれども、自分の本心の一部としてそれを伝える、つまり庶民の中では圧倒的に、浅野家の再建・再興を願う声が大きいわけですが、そこはできなかったので、仇討ちをすることを支援しているんですね」

武田「うん」

キャンベル「このお芝居を見た後にちょっと思ったのが、最近、日本国内外で、正義をめぐるデモンストレーションとか抗議っていうことがいろんなところで起きていまして。
もちろん国会の前でですね、あの平和を守る第9条ということもそうですし、皇室典範ですとか、国旗損壊罪など、既存のその法律に対するデモが続いてるわけですね。
4月に衆議院議員の門ひろこ氏が、ある番組で『国会の前でデモをやってもごっこ遊びにしか見えない』というようなことを言ったわけですが。
こういう小さな、広がっていくような民衆の中でのデモがとても力を持ち、物事を変えるということが特にこの1週間の中で次々と起きているわけですね。
一つは、ウクライナでこの1週間の中で国防省の重要人物が1週間で2回も更迭されていて、あのフェドロフ氏という35歳の、非常に効果的なドローン作戦をずっと引っ張っている人も更迭され、ソ連時代の中で教育された古い人が、その一番リーダーになったわけで。
で、それに対してウクライナの人たちが、段ボールに書いたプラカードを持ってですね……これプラカード抗議と呼ばれているんですが、そこに手書きのいろんなスローガンを書いて大統領府の前で何千人も毎日抗議をしてるわけです」

武田「はい」

キャンベル「その姿は日本の報道でも報道されていますが、やっぱり何というか、戦時中に抗議ができる、この言論の自由が守られているということは、世界中で結構評価されていて。
民衆に耳を傾けたゼレンスキー大統領が昨日、フェドロフではないけれど、彼の一派である別の軍人を国防省に任命したということです。
インドでも先週ぐらいからニュースになっていますが『ゴキブリ人民党』というものが結成されたわけですね。
極右と言われるモディ首相の政権がすごく言論統制をしており、インドの最高裁判事が、失業中の若者たちが不満を訴えているので『まるで寄生虫、ゴキブリのようだ』と言ったことを逆手にとって、新卒の若い人が『だったら政治システムに数えられていない人たちのための、つまりゴキブリみたいな、1匹いれば100匹いると言われている『ゴキブリ党』というものを作ろうっていうことで、これ今、インドでものすごく大きな勢力になっているわけですね。
ですから、それは選挙などで力が試されるっていうまでには至ってないのですが、人々の一人ひとりが声を上げていくというか、正義を問うということが、とっても注目されていると思うんです」

この後もロバート キャンベルさんは、この一週間に世界で起きた注目の話題をピックアップして紹介し、意見を語っています。
気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください。

「武田砂鉄 ラジオマガジン」は月曜~木曜 8:00~11:30、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

で開く

※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。

Share

関連記事

この記事の番組情報


武田砂鉄 ラジオマガジン

武田砂鉄 ラジオマガジン

月~木 8:00~11:30

その他の主な出演者

政治、経済、芸能、カルチャー… 大事なことから大事じゃなさそうなことまで・・・ライター武田砂鉄が”あなたの耳の渇きを潤す”3時間半の生…