鈴木BINのニュースな映画「白パンと独裁者」(ドイツ映画)

鈴木BINのニュースな映画「白パンと独裁者」(ドイツ映画)

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8月6日は「広島原爆の日」でした。
「8月ジャーナリズム」と揶揄されても、8月に先の戦争の悲惨さに思いをはせ、ネジを巻きなおすことの大事さを痛感する毎夏です。
9日は「長崎原爆の日」そして15日には「終戦の日」です。

特番取材などを通じて、いかに第二次大戦への自分の理解が乏しかったのかと実感することがたびたびあります。
今から11年前の「終戦70年」の年に、アーサー・ビナードさんをパーソナリティに私が制作者として一年間、終戦の年の日本の様子を追いかけた「探しています」という番組を放送しました。
(ありがたいことにその年の民間放送連盟賞の最優秀賞を頂きました)。

広島や長崎の原爆体験者、北方列島や満州など外地で終戦を迎えた人、陸軍の幹部候補だった元総理大臣、真珠湾攻撃のパイロット、アメリカの強制収容所に収容されていた日系人など様々な立場で終戦を迎えた47人にお話を伺いました。
番組を作りながら本当に驚いたのは、我々の鋳型にはまったイメージ「玉音放送を、打ちひしがれて泣きながら聴いた人」は、なんと47人中3人しかいなかったこと。

理由は様々です。
「訓練中で聴けなかった」
「子供だったので聴いても意味が分からなかった」
「原爆で街が壊滅状態だったのでラジオが無かった」
「終戦がとにかく嬉しかった」
ひめゆり女子学徒隊の生き残りの島袋さんは、米兵に撃たれ、米軍が接収した沖縄の病院で終戦を迎えた際、米兵から「勝った負けたはどうでも良いです。私もあなたも自分の家に帰れることを喜びましょう」と言われたことが忘れられないと語ってくれました。
よく「敗戦を終戦という言葉に置き換えた『誤魔化し』によって日本の戦後は始まった」という言葉が使われます。
しかし、島袋さんの話を聞いてから私の考えは少し変わりました。

人の体験はとても多様で、「こうだったに違いない」という思い込みがいかに視野が狭いことであるかが、骨身に染み込んだ一年でした。

前置きが長くなりましたが、この「白パンと独裁者」というドイツ映画もまた自分に戦争に対する新たな視点を与えてくれました。


© 2025 Bombero International Gmbh & Co. Kg

映画の舞台は、ベルリンから遠く離れたドイツ北部(デンマークの鼻先)に浮かぶアムルム島。メガホンをとったファティ・アキン監督の恩師であるドイツの著名な映画監督・作家のハーク・ボーム氏の幼い頃の実体験がベースとなっています。

この映画の「目からうろこ」な点は、敗戦色濃厚になっても田舎の島は連合国の爆撃を特に受けることもない。そう、戦争そのものという意味では大して何も起きないのです。爆撃機は上空を飛んでいきますが、島の子供たちはそれを牧歌的に眺めているだけ。
余談ですが、私の奈良の実家も近所の寺の屋根に焼夷弾が2、3個落下しただけだったと亡き父が話していました。それもまた事実。
とは言え、では本当に平和かというと全くそうではありません。都会から逃げてきた主人公への地元の冷ややかな目やナチスの組織末端の不条理と傲岸さに満ちた監督者。ナチスに対する家庭内や近所間での意見の相違から来る人間関係の難しさ、生きるために可愛いウサギやアシカたちの命を奪うという苦しさ悲しさに満ちた映画でもあります。
爆弾は落ちてこなくてもやはり戦争は悲しいのです。


© 2025 Bombero International Gmbh & Co. Kg

映画の舞台、アムルム島に疎開してきた12歳の少年で主人公のナニングは、戦地から戻らない父に代わって、近所の農家を手伝うなどして家計を助けていました。
1945年4月末、極端なナチス支持者でヒトラー信奉者だった主人公の母はヒトラーが自殺したというニュースを受けて、ショックのあまり心のバランスを崩します。
スパルタ教育型の母でしたが、ナニングにとってはかけがえの無い存在す。
憔悴した彼女が食べたいとつぶやいた「バターとハチミツがたっぷり塗られた白パン」を食べさせるために、まさに死ぬような思いで、奔走します。
これだけ話すとややコミカルな設定ではと勘違いされそうですが、そうした要素はなく、先述したように動物好きの私には少し辛いシーンも出てきました。
生きることは大変なことなのだ、目をそらさずに全部受け止めてみろというアキン監督の矢のような厳しい投げかけがスクリーンから飛んでくるようでした。残酷なシーンの裏返しはやはり平和の大切さです。戦争は日常を非日常に突き落とすことです。

我々にはなじみが薄いドイツ映画ですが、実に秀作が多いというのが私が昔から感じていた印象です。この映画では、ナチスに批判的なたくましい女農場主(脇役!)を、ハリウッドでも大活躍するダイアン・クルーガーが熱演していたり、ドイツ映画の奥深さを感じました。

東京では「新宿武蔵野館」や「ヒューマントラスト有楽町」など11のスクリーンで公開中です。
北海道から沖縄まで大きな劇場から単館系まで公開中しています。この作品を機会にドイツ映画のぜひ魅力も知って頂きたいです。

映画のホームページはこちらです

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