マックルモア「Free Palestine」発言でツアー降板 アーティストの政治的発言と“中立”を考える

マックルモア「Free Palestine」発言でツアー降板 アーティストの政治的発言と“中立”を考える

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フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄ラジオマガジン」(文化放送)。9月17日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、日本文学者・ロバート キャンベルが、「マックルモアのツアー降板をめぐる、アーティストによる政治的発言」について語った。

ロバート キャンベル「米国ニュージャージー州の大きなスタジアムで行われた大きなライブの最中に、歌手のエド・シーランの前座を務めた人気ラッパーのマックルモアさんという方が降板させられました。
これからのツアーは8公演の予定で、1つのスタジアムで6~9万人が収容される大きなイベントです。マックルモアは、ニュージャージー州のステージの上でパフォーマンスした内容が理由で参加ができなくなりました。これ、日本のニュースでも新聞等に載っていました」

武田砂鉄「ええ」

キャンベル「マックルモアは前座で『Free Palestine(パレスチナを開放せよ)』と発言しました。
2023年のハマスのテロ事件以降、イスラエルが行った攻撃・大量虐殺の映像を見せながら、2024年に発表した『Hind’s Hall』というプロテストソングを歌いました。
そして、自分の前説のなかで『Free Palestine』と何度も連呼したわけです。すぐにアメリカ・イスラエル協会が署名活動を始めて、“降ろせ”“これはいけない”ということがあった。それに間髪を入れず、自らユダヤ系でイスラエルを強力に支持しているスタジアムのオーナーのロバート・クラフトが、他の8つのスタジアムのオーナーたちと申し合わせをして、エド・シーランに電話をかけて“マックルモアを外さないとスタジアムを使わせないぞ”という脅しをしまして、シーラン側も“これはやむを得ない”ということで13年間ずっと一緒に組んでいるマックルモアさんを外しました。
こういうことは、色んなときに色んな国であり得ることだと思うのですが、今日は“マックルモアが実際にステージで何をしたのか?”ということ、その後に“どういう声明を出したのか?”。それに応じてエド・シーランが自分のインスタで弁明を書いているんです。それを中心に紹介したいと思います」

武田「はい」

キャンベル「アーティストが政治的な発言をするときに、中立性を求められることがあるわけですけど、『アート(創造的な表現)』と『政治』というものが本当に別々にすることができるのか? これはスポーツにおいても文学においても、国を超えて日本においても非常に大きな、折々に出てくる問題なので。ぜひ一つの素材として一緒に考えたいと思います。
観衆のなかにユダヤ系の人たちが多数いたということですけど、彼のスピーチに対してイスラエルでありユダヤ系の人たちは怯えていたということを、クラフトさんというスタジアムのオーナーが言っています。
他に、P!nkさんというユダヤ系の女性のアーティストも、“自分もそれを聞いたとき、とても怖くなった”と書いているわけです。
しかしマックルモアさんは、
“ユダヤ人の同胞の皆さんにもどうしても伝えたいことがある。イスラエルへの批判、アパルトヘイトへの批判、そしてジェノサイド(集団虐殺)への批判は、決して皆さん一人ひとりを批判することではありません。私が伝えたいのは平和を願うメッセージです。すべての人間が尊厳を持って、敬意を持って”
と言っています。ユダヤ系の人たちに向けて何か恐怖を煽る言葉を言っていないんです。
これはイスラエルの攻撃が始まってから言われていますけど、イスラエルの政府とユダヤ系を一つのものとして考えて、“イスラエルを批判する=反ユダヤ主義者”とする。これは特にイスラエル政府が、一つのレトリックとしてずっと言い続けているわけです」

武田「はい」

キャンベル「マックルモアさんがそのことを分かっていて、目の前にいるユダヤ系たちには“あなたたちを攻撃しているわけじゃない”と言っているにも関わらず、“彼を外そう”という人たちは“これはユダヤ人一人ひとりに対する脅迫である”と言ったわけです。
結果、エド・シーラン側は電話を受けて“外さないといけない”という判断をしたわけです。それに対してマックルモアさんが自分の弁解を伝えます。
“当たり前のことだと思われるかもしれませんが、私は被害者ではありません。エド・シーランもP!nkも被害者ではありません。私たちはそれぞれキャリアがあり、お金も仕事も安全に暮らせる環境もある。私たちは最終的には家族の待つ家に帰ることができます。
本当の被害者はパレスチナの人々です。殺され、飢えに苦しみ、住む場所を追われ、想像を絶する暴力に晒されながら、それでも生きることを強いられている。ガザ地区だけで2万人を超える子供たちが命を落としました。今日も人が殺され、明日も誰かが殺されていくのでしょう。
この話をするうえで、私はその事実を決して見失いたくありません。どんな議論をするときも、どんな言葉を交わすときも、その向こう側に実際に命を奪われている人たちがいることを忘れてはいけないと思っています”と。
この前置き、すごく力強く淡々と述べているわけですね」

武田「すごく冷静な姿勢ですね」

キャンベル「マックルモアの言葉、続きます。
“エド・シーランは、私の友人です。だからこそ、私たちは何度も難しい話し合いを重ねてきましたが、それでも根本的な意見の違いを埋めることができなかった。彼の人格を否定したいわけではない。ただ、私たちの間に友情があるからといって、真実を語る責任が変わるわけではありません。
元々、彼は政治には関わらないスタンスをとっていました。ところが彼は私に『Free Palestine』という言葉が、これまで対話をしてきた多くの人たちを傷つけていると話しました。その言葉が、イスラエルによって何万人の人が殺されている事実よりも不快だというのであるならば、彼らの立っている場所と私の立っている場所の間には根本的な断絶があります。”と語りました。
アーティストとしては“中立である”という姿勢が、ある局面になると、実は中立でなくなってしまうということです。どちらに立つか決めないといけない、ということですね」

武田「ええ」

キャンベル「エドさんは、今までたくさんの国の人たちと没入型のコラボレーションをしていました。ウクライナ侵攻が始まる直前にキーウに行って、『2Step (feat. Lil Baby)』という曲のMVを撮っているわけですけど、これは侵略を予言するようなもので。侵略が始まってから、それを資金集めの曲に変えて、ウクライナのアーティストたちと協力して、たくさんの運動をしてウクライナの支持をした。非常に政治的な発言をしたわけです。
昨年、イギリスとインドが大きな防衛協定をしたときに、ちょうど歩調を合わせるようにインドのアーティストと協力して、『Sapphire』という曲を出したり。言ってみればイギリスのソフトパワーを強調するような、極めて時局的なことをやっているわけです。
ところがパレスチナになると口をつぐんでしまうんですね」

ロバート キャンベルさんの「マックルモアのツアー降板をめぐる、アーティストによる政治的発言」の話、まだまだ続きます。気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください。

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