ざっくり50時間!193か国が集う国連総会の演説を全部聞いて分かったこととは?
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝のラジオ番組、『武田砂鉄 ラジオマガジン』。10月5日は、砂鉄さんが秋休みのため、ピンチヒッターとして弁護士の三輪記子さんが出演。月曜レギュラーでドイツ出身の翻訳家・エッセイストのマライ・メントラインさんとトークを繰り広げた。
マライ「今日のテーマなんですけど『国連って意味ないじゃん説を考える』です。なんか国連っていらないんじゃないかみたいな話よく聞くんですよね。この間ちょうど国連総会が行われていて――9月22日から28日、ニューヨークで開催されたわけなんですけど――確かに国連は全然完璧ではないんだけれども、でもなくなると困る理由もいろいろあるんじゃないかと思っていろいろ調べました。まず、国連ってなんだっけっていう話です。国連というのは193の加盟国があるんですね。この時期になると世界各国の首脳とか外務大臣とかがニューヨークに1週間集まるんですよ。何をするかというと、1か国ずつ演説を行うんです。各国、一応15分の時間があるんですけれども、平気で時間オーバーする人もいて止めないらしいんですよね。喋りたければ喋るのねみたいな感じで。喋る順番はどうなのかなと思って調べたら、いつもブラジルが最初なんですって。開催国のアメリカがその次。その後に話す人はランク順なんだそうです。例えば国のトップが来るんだったら早めに話せるんですよね」
三輪「なるほどね」
マライ「だから、日本だったら例えば首相が出るんだったら早めに話せて外務大臣だったらちょっと後になるよという感じになるんですよね。みんな15分話すんですけど、短いと感じるかもしれないんですけど全部合わせると、ざっくり50時間になっちゃうんですよね」
三輪「長い」
マライ「(笑)長いですよね。だから普通は全部聞こうと思わないっていうか、全部聞くのはプロじゃないとやんないですよね。ドイツのニュースをいろいろ見てたら、全部聞いた人がいたんですよね」
三輪「50時間」
マライ「これは、南ドイツ新聞ニューヨーク特派員のボリス・ヘルマン氏です。彼は50時間以上の演説を全部聞いて何を感じたのかをポッドキャストで公開したんですね。何を言ってたかというと、中規模国とか小国とか、とにかくすごく小さい国の方が大国よりも国連や多国間主義の将来について本当に真剣に考えていたそうなんです。それはなぜなのか。その記者の見解ですけど、やっぱり小さい国ほど国際秩序が壊れないことが大事なんです。世界の安定に依存してるからなんです」
三輪「そうですよね」
マライ「自分の国があんまり世界を動かせない。ある意味、受動的に被害を受ける――例えば気候変動とかもそうなんですけど――なので、小さな国ほど多国間主義が必要なわけなんです。要するに国際法だったり、共通のルールが必須なんです。だから、それがある意味国連の仕事でもあって、小さい国にとっては国連というのが「理想論だよね」では済まされない話なんです。そうじゃなくてここでしか話せないからなんですよね」
三輪「聞いてもらえないですもんね。国連という場がなければ、小さな国は自分の話を聞いてもらう場所さえないってことですよね」
マライ「そこなんですよね。だから唯一のチャンスなわけです。例えばG7、G20とかそういうところはあるんですけど、そんなところには参加できなかったりしますからね。でもね、じゃあそういう小さい国のスピーチを、我々が日本のニュース、ドイツのニュースなどでちゃんと見てますか? っていうと見てないんですよね」
三輪「なかなか、そうですよね」
マライ「で、南ドイツ新聞の記者が面白かったと言ってたのが、東ティモールのジョゼ・ラモス=ホルタ大統領のスピーチです。この人はノーベル平和賞の受賞者でもあるんです。彼は、トランプ大統領に、こんなことを呼びかけました。「トランプ大統領、あなたは大きなことをやりたがる人ですよね。だったら世界の核保有国を一つのテーブルに集めて10年以内に核兵器廃絶を実現させたらどうですか」というようなスピーチだったんです。ある意味、トランプ大統領のエゴをうまく刺激して、あなたは偉大な人だから、できるのはあなただけっていうね。しかもホルタ大統領はノーベル平和賞受賞者でもありますからね」
三輪「欲しいわけですもんね」
マライ「トランプ大統領はノーベル平和賞をちょっと欲しい感はありますもんね。だから結構巧妙な呼びかけかなと思ったんですね。でも、私たちはこのスピーチ聞いてないですよね。ワタシは知らなかった」
三輪「そうなんですよ。ワタシも知らなかったです」
マライ「トランプ大統領は聞いてるかって言うと絶対聞いてないですよね。誰かが彼に伝えてるかもしれないんですけれども、伝えてない可能性もあります。だから結局全部聞いてないでしょうね。ここに結局、国連の問題があるわけなんです。平等に話せるチャンスは与えられてるんですけれども、結局強い国の声だけが聞こえますし、ニュースもそこだけ紹介するんです。ワタシだって、また国連の総会だよね、ゼレンスキー何言うかな、トランプ何言うかな、日本の首相だったりドイツの首相だったりとかがもし参加するんだったら何言うかなとか、気にするのはそういうことなんですよね。だから、ほとんどの演説は聞かれない。要するに注目ラインより下にあるわけなんですよね。それはもちろん国連だけの話ではない気がするんですけどね。なんとなく、ニュース情報とかもそうですし、あとインフルエンサー的な存在――刺激的な発言――の方がバズっちゃうから、権力ある人とか強いこと言う人とかそっちなんですよね。ちっちゃい東ティモールとかはなかなか紹介されないんですよね。ところで三輪さんの、国連のイメージってどんなもんですか」
三輪「やっぱり、国連って意味ないよねっていう意見がずっとあり続けるっていうことと、その国連のシステム自体が、戦争に勝った国による仕組みだっていうところに問題点はあると。ただ国連がなかった場合を考えると、さっきマライさんが指摘してくれた通り、小さな国をどうするかっていうこと。国際法をどうやって動かしていくかっていう合意を形成する場所がない。建前だとしても、小さな国の意見も聞いて世界を動かしていこうっていう場っていうのがすごく大事なんじゃないかなと思うんですよね。大きな国と力だけに任せると、当然常に大きな国が勝っちゃうから。でも小さな国にも小さな国で生きてる人たちがいるわけだから、そこをどう調整するかっていうことは「意味がない」って言って切り捨ててはいけないんじゃないかなって思いますね」
マライ「そうですよね。強い国は強いからそれでいいじゃないか、マジョリティが動かすの当然じゃんっていう意見もあるかもしれないですけど、もう動かしてますからね。ある意味ね。それはもうあるから、逆にそうじゃない場所も作った方がいいんじゃないかっていう話なわけですよね」
三輪「そうですよね」
マライ「そうなんですよ。国連ダメじゃんってよく聞くんですけれど、具体的に何がダメと言われているのか紹介したいなと思います。一番大きなポイントは…」
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