中島岳志「死者について考えるようになったきっかけ」
熊本の地震では災害関連死も含めて38人の方が亡くなりました。
8月4日の「武田砂鉄 ラジオマガジン(文化放送)」では、東京科学大学教授の中島岳志さんが、死者について考えるきっかけとなった話をしました。
中島「私自身、死者という問題を考える大きなきっかけは阪神淡路大震災と東日本大震災です。この大きな2つの地震に直面して死者という問題を考えるようになりました。阪神淡路の時、僕は20歳の学生でした。大阪に住んでいて、僕自身も被災したんですけど、浪人もして留年もして一歩も前に進めない19歳、20歳だったのでボランティアに行く勇気もなくて、ただ茫然としていました。
ただ三宮とか神戸の街は親しみのあるところだったので、1か月くらいしてから、どうなったのか見ておこうと思って行ったんですよ。そしたら何度も通ったアーケードが崩れてたり、ビルが崩れてたり、茫然自失という感じでクタクタになるまで歩いたんです。3時間くらい歩き回って疲れたので広場で腰を下ろすと、15~20メートル先で凧を上げている70代くらいのオジサンがいたんです。でも、その方は凧上げを楽しんでいる感じではなく、一心不乱に一点を見つめて凧を上げているんです。
10分くらいして立ち上がった時にオジサンに『昔から、ここで凧上げしてはるんですか?』って聞いたら、ぶっきらぼうな感じで『最近や』って言われたんです。
マズいことを聞いたかもしれないと思って立ち去ろうとすると、オジサンが『こないだの地震で妻を亡くしてな、ワシは難しいことはよくわからんけど、こうやってると亡くなった妻と手を繋いでる感じがするねん』って言ったんです。
僕はそれ以上、何も答えられなくて帰路についたんですけど、電車の中でずっと考えたんですね。高校は理数科だったので合理的な思考が重要だと思っていたんですけど、合理的な思考のほうが人類の歴史からすると非常識だなと感じたんです。
むしろ人間というのは、ずっと亡くなった人と一緒に生きていたり、あるいは科学的に証明できないものを、とても大切にしながら生きている。そういうことについて深く考えてこなかったなと思ったんです。死者についてしっかり考える大きなきっかけが阪神淡路大震災だったんです」
番組では、この他にも中島岳志さんが死者について考えるようになったきっかけについて語っています。もっと聴きたいという方はradikoのタイムフリー機能でお楽しみ下さい。
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