武田砂鉄「反ネタニヤフの中にも様々な立場の人がいる」イスラエル総選挙どうなる?

武田砂鉄「反ネタニヤフの中にも様々な立場の人がいる」イスラエル総選挙どうなる?

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フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝のラジオ番組、『武田砂鉄 ラジオマガジン』。10月26日は、月曜レギュラーでドイツ出身の翻訳家・エッセイストのマライ・メントラインさんとトークを繰り広げた。

マライ「今日は、『イスラエル総選挙 ネタニヤフは生き残るのか』というテーマです。明日27日火曜日にイスラエル総選挙が行われます。2023年の10月7日のハマスなどによる攻撃テロ事件の後の最初の選挙です。ガザでの殺戮を経て、いろんなことがあったわけで、そこで初めてイスラエルの国民が政権を評価するということなんです。今回の選挙のポイントを先に言うと、いろんな派閥があるんですけれども簡単に過半数はゲットできない、なかなか複雑な選挙です。あと、反ネタニヤフの人いるかなって、みんな思ってるんじゃないかなと思うんですけど」

武田「うん」

マライ「反ネタニヤフのイスラエル人はたくさんいます。が、我々が思ってるのとは、ちょっと違う理由だったりするんです。簡単に言うと、ネタニヤフの反パレスチナ政策がむしろ緩すぎると思っている人たちがいるんですね。あと、ネタニヤフが連立を組んでいる超正統派、ウルトラオーソドックスのユダヤ人――宗教に関して厳しいユダヤ人ですね――と、極右の入植者への優遇政策が嫌になったっていう人たちがたくさんいるんですね」

武田「反ネタニヤフの中にも、様々な立場の人がいるという」

マライ「そういうことになります。なので、明日のイスラエルの総選挙はどうなるか、ポイントを詳しく見ていきたいなと思います」

武田「はい」

マライ「そもそも何の選挙なんだろう、ということなんですが、今回は国会議員を選ぶ選挙になります」

武田「うん」

マライ「イスラエルの国会は「クネセト」と呼ばれていて議席は120です。日本みたいに小選挙区があるわけではなくて全国が一つの選挙区です。それが比例代表制になっていて、つまり、有権者は基本的に政党に投票するんですね」

武田「はい」

マライ「その政党がどれだけ票を獲得したかによって議席が分配されていく仕組みですね。120議席あるので過半数は61議席なんですけれど、イスラエルでは一つの政党が61議席を獲得できないんです。実は、それほど大きな政党が存在してなくて、だから、必ず複数の政党が連立を組むということになるんです。例えば、前回の選挙の結果、ネタニヤフが2つの極右政党と複数の超正統派、ウルトラオーソドックス系の政党と連立を組んで「なんかこれって、あんまり長く持たないんじゃないのかな」とか「また、すぐ解散するんじゃないかな」というふうに言われてたんですけど、なんと、4年間も持ったんですよね。なので、今回の総選挙は、なんと、1988年以来、初めて予定通りの日程で行われる選挙になったんですよね」

武田「そんなに、長期間予定通り行われてこなかったわけですか?」

マライ「すぐ解散しちゃうんですってね」

武田「う~ん」

マライ「だったら、88年以来、初めて4年間持った連立政権は、もう圧勝するんじゃないかなって思ってたんですけど、どうもそうでもないらしいんですよね。直前の主要な3つの世論調査では、反ネタニヤフ系の変革ブロックが、おそらく52から56議席を取れるかなって言われてるんですね。現政権側が50議席前後。逆に、アラブ系政党が14から16程度を取れる。結局、どれも単独で61議席には届かない。でも、一緒に組みたいわけでもないっていう風になってるんですよね」

武田「でも、この反ネタニヤフ系の変革ブロックというところが、一番多くの議席を取るのではないかという予想ではあるわけですか?」

マライ「では、あるんですよね。蓋開けてみないと、っていうふうにはなってるんですけど、「果たして」ってことですね。そもそも、イスラエルという国はどうなってるのか、どういう特徴が選挙にあるのか、もうちょっと掘ってみたいと思うんですね。イスラエルは実はすごく若い国なんですね。なんとなく、中東の紛争とか、宗教対立のイメージがすごく強いんですけど、あまり知られてないのが、若い人がものすごく多いってことなんですよね。イスラエルの人口は約1000万人なんですけど――日本の10分の1ぐらいなんですけど――とにかく若い。なんと14歳以下の子どもが人口の約27%を占めている」

武田「若い!」

マライ「逆に、65歳以上はたった13%。調べたらほぼ日本と逆ですね」

武田「そうですね、ほぼ、ひっくり返したような感じですね」

マライ「なんで、そんなに子どもがいるのかまでは調べきれてないんですけど、なんでだろうなって思ってるんですよね。で、有権者全体は733万人ぐらいなんですけど、18歳から24歳の若い層が15%を占めてるんですよね、だから、前回4年前の選挙の後に18歳になった若者たちが結構いて、今回が初めての投票になる人が、めちゃくちゃ多いんですよね。計算すると、彼らの票で10議席も決まるんですよね。120の中の10議席も若い人たちの声で決まるんですよね」

武田「そう考えると、この数年のネタニヤフ政権の判断っていうのを、どういうふうに若者が捉えたかっていうのが、選挙にとってかなり重要になってくるということですね」

マライ「そうなんですよ。その若い人たちは、まだ生きてきた時間が短くて、何が一番記憶にあるかっていうと、2023年10月7日のハマスによる襲撃なわけですよね。あと、その後の期間。戦争が続いたりとか、徴兵の問題があったりとか。それを全部10代の時に、思春期の時に経験してるわけですよね。だから、彼らが何を求めてるかっていうと不安の解消らしいんですね。イメージでいうと、若い人たちはリベラルな政党を支持してるのかなと思いきや、そうとは限らないんですよね。宗教的にすごく保守的な若者たちも多い中で、ネタニヤフに入れる可能性も十分にあるそうなんです」

マライ「あと、パレスチナ人、ムスリムの票はどうなるのか。イスラエル人口の2割弱はムスリムなんですね。その人たちが投票すれば、かなりの力を持つんですけれども、過去の選挙では、その半分しか投票してないんですよね。なんで投票しないのかなって思ったら、やっぱり政治への不信感とか、アラブ系の政党が分裂していたっていうことがあるんです。イスラエルには親パレスチナ政党もあるんですけれども、ユダヤ系の主要政党はどちらかというと、パレスチナ人にはあまり優しくない政策を持っていて、そもそも連立をしたくないと言ってるんですね。だから、彼らが投票しても意味がないんじゃないかと思っちゃうんですよね。だから、もう投票しないってなってるんですよね」

武田「意味がないって言ってもね、投票行動ってのは意思を表明するという非常に重要なものなわけですけど。意味がないと思ってしまっている、思わされている」

マライ「そうそう。ワタシが見たドキュメンタリーの中では、そういう投票しない人たちに一生懸命呼びかけているムスリムの女性が登場していました。「意味ないと思わないでください」って言っていました。あと、我々が誤解してそうなのが、反ネタニヤフという人たちがいるんですけれども、それがイコール親パレスチナというわけではないということですね」

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